1〜25日目!

日の出はとうに終わったが、まだ朝の冷たい空気が街には漂っている。その中を歩く高杉は、欠伸をかみ殺しながら歩く。
今日も今日とて、とにかく騒ぎたい者やうっかりハメを外す者などをビシバシと取り締まっていた。大晦日から正月にかけては、普段の倍以上に浮かれ共が多く、疲れ具合も倍である。その鬱憤を晴らしているわけでは断じてないが、捻る手首が強くなってしまうのは致しかない。帰ったら即寝するなと思いつつも、家で待っている彼のことを思い出す。
いつもいつもイベント毎では寂しい思いをさせている自覚はある。昨日の出勤前のこともあり、高杉は彼がご所望だった初詣には行ってやるか、と白い息を吐き出しながら、家路を急いだ。
ようやくご帰宅した高杉を出迎えたのは、目を擦って眠そうな近藤だった。寝てるかもしれないと思い、静かに帰ってきたつもりだったのに。
「寝てないのか?」
「んー、いやさっきちょっと寝てた」
「寝てたらいいだろ」
「いやー、なんかいろいろ見てたら寝れなくなっちゃって、さっきうとってなっただけ」
ふわぁと、近藤が盛大に欠伸をするものだから、高杉もさっきまで耐えていたのに、うつってしまった。
「高杉も眠そうじゃん」
「うるせェ」
「雑煮食べれる?餅なしでもいいよ」
「じゃあ、それで」
「分かった。そして、そのあとはゆっくり寝ようぜ」
「は?初詣は?」
高杉は思わず、疑問の言葉が出た。キッチンの方へ向かっていた近藤は振り向き、きょとんとした顔をする。近藤も思ってもない言葉だったのだろう。
「え、高杉、疲れてないの?」
「いや、そうじゃねーが、てめェのことだから行きたがるかと」
「そりゃあ、行きたいけど……高杉も疲れてるし、俺も眠いしさ。それに言ったじゃん。神様だって待ってくれるって。初詣は明日行こっ!」
近藤はにかっと笑った後、キッチンの方へ向かって行った。なんだか上機嫌のようで、軽やかな足取りだった。
高杉は身体の力が抜けたかのように、くすっと笑ってしまい、ゆっくりとその後を追う。
キッチンの中に入ると、暖かい空気と味噌の良い匂いが部屋を漂う。それに自然と口角が上がり、上着を脱いでいく。重い疲れが程よい疲れになったかのような心地よさだった。
そして、高杉は雑煮を煮込み直す近藤の後ろ姿を見つつ、考える。
明日、欠員が出たから出勤に変更になったと言ったら、近藤は寝正月を返上するだろうか、と。

おわり
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