1〜25日目!
初恋はいつ?だれ?
恋に夢みる若者がよく聞く言葉だ。
沖田は今まさに、その質問をクラスメイトの男子からされていた。なぜかワクワクしている男子を尻目に、つと考える。
「はつこい、初恋、5歳のとき、か」
「え?まじ?誰?幼稚園の先生とか?」
「可愛い幼馴染の女の子とかだろ!このおませさんめ!」
「いや、ちげェ」
「じゃあ、誰だよ」
「サンタさん」
「は?」
「だから、5歳の時にプレゼント届けてくれたサンタクロース」
教室の空気が凍りついた気がしたが、沖田は気にせず、パックジュースを飲み干した。
*
サンタクロースっていつまで信じてた?
現実をそこそこ知り出した若者がよく聞く言葉だ。
沖田は今まさに、その質問をクラスメイトの女子からされていた。なぜかきゃっきゃっとしている女子を尻目に、はっきりと答える。
「今でも信じてやすぜ」
「え?」
「な、なにを?」
「サンタクロース」
「え、いや、サンタって、親じゃん」
「違いやすぜ」
女子たち一同、黙して沖田の返答を待った。
ニヤリとした沖田は言う。
「サンタクロースはいるんでさァ」
教室の温度が二度ほど下がった気がしたが、沖田は気にせず、スマホの画面を操作をした。
*
「総悟って、本当にサンタ信じてるんだな」
「そりゃそうでしょ、今目の前にいるんだから」
「そりゃそうだけどさァ」
赤い服と帽子を着た男と、沖田は話をしていた。いわゆるサンタの格好した男はベッドの上で、沖田は勉強椅子に座って対面していた。
その男は近藤と、沖田に名乗っていた。そして、サンタとも。
サンタクロースは存在する。
しかし、大人になるとサンタの存在を信用しなくなり、そのためサンタは存在しなくなる。その人の中で。
サンタは、親が準備したプレゼントや準備し損ねたプレゼントを用意して、子供のもとに届けるのが仕事である。
サンタを信じている間は、サンタが見える。サンタが存在する。しかし、サンタを信じられなくなった瞬間、その子供の中からサンタは存在しなくなり、見えなくなる。親がサンタクロースという記憶に書き変えられるのだ。
「大体中学上がる頃には、みんなもう俺らのことを信用しなくなるはずなのに。サンタ界隈じゃ、総悟のこと異端すぎてびっくりしてるからね」
「俺は純粋なんですぜ」
「そういう問題かなァ」と近藤は腕を組んで、唸る。
近藤は沖田が住んでいるエリアのサンタである。昔、沖田家にプレゼントを持って侵入した時、偶然起きていた沖田と出会ってしまった。大体、その時点でサンタを信用しなくなるのが常なのだが、彼は違った。そのままサンタが存在することを、近藤が存在することを肯定したのだ。
それから、毎年、沖田は近藤と会うようになり、プレゼントはその日に伝えることになったのである。
「今年は、俺の初恋を叶えてくだせェ」
「初恋?え、今?てか、総悟好きな人いたの…….ふーん」
近藤は俯き、面白くなさそうに返事をした。沖田が「近藤さん?」と声をかけると、近藤は首を振り「なんでもない」と呟いて、顔をあげてニッと笑う。
「サンタはプレゼントを間違えることはあれど、約束は果たすからな!ドンと任せろ、総悟!じゃ、初恋の人の名前を教えてくれ」
「近藤さん」
「うん。だから、名前教えてって」
「知らねェですよ。俺、名前教えてもらってねェですから」
「え!うーん、地道に探していかなきゃじゃん。えと、このサウンタページからその人を探すとして、苗字は分かるんだろ?」
「だから、近藤さん」
「え?」
「近藤さんですよ、俺の初恋」
沖田は先ほどからずっとまっすぐに近藤を見つめていた。逸らさずにずっと。
「え、えと」
「近藤さんの名前、教えてくだせェ」
変わらずに見つめてくる沖田に居た堪れず、近藤は目線を逸らして、足をそわそわさせてしまう。どういうことか。そういうことでいいのか。
「あー、うん。近藤勲で、す」
「いさおですかィ。じゃあ、サンタさん。近藤いさおさんとの恋、叶えてくださいやすか?」
「〜〜〜!!」
そういうことだった。
近藤はその答えにドキッとして、沖田の方を見る。沖田は優しい笑顔で彼を見ていた。それに、近藤は顔を真っ赤にし、両手で顔を覆う。
「ちょっとズルくない?」
「何もズルくねぇですよ」
「だって……」
「ねェ、サンタさん。今年のプレゼントは叶えれそうですかィ?」
沖田はさきほどの笑顔と違い、ニヤニヤと意地が悪い顔をして聞く。近藤は指の隙間から、彼を見てムッとした顔をした。しかし、顔が真っ赤なため、何も不機嫌そうに見えない。沖田は笑みを深くした。
「俺、サンタなのに」
「サンタだからでしょ。だから会えたんですし」
「そうだけどさァ!!」
近藤は叫ぶ。叫んだ後は、バシッと自分の両頬を叩き、沖田を見る。
「明日、駅前のツリーの下に行って、告白したら叶うかもな」
プレゼントはいつだってツリーの下にあるものだから。
おわり
恋に夢みる若者がよく聞く言葉だ。
沖田は今まさに、その質問をクラスメイトの男子からされていた。なぜかワクワクしている男子を尻目に、つと考える。
「はつこい、初恋、5歳のとき、か」
「え?まじ?誰?幼稚園の先生とか?」
「可愛い幼馴染の女の子とかだろ!このおませさんめ!」
「いや、ちげェ」
「じゃあ、誰だよ」
「サンタさん」
「は?」
「だから、5歳の時にプレゼント届けてくれたサンタクロース」
教室の空気が凍りついた気がしたが、沖田は気にせず、パックジュースを飲み干した。
*
サンタクロースっていつまで信じてた?
現実をそこそこ知り出した若者がよく聞く言葉だ。
沖田は今まさに、その質問をクラスメイトの女子からされていた。なぜかきゃっきゃっとしている女子を尻目に、はっきりと答える。
「今でも信じてやすぜ」
「え?」
「な、なにを?」
「サンタクロース」
「え、いや、サンタって、親じゃん」
「違いやすぜ」
女子たち一同、黙して沖田の返答を待った。
ニヤリとした沖田は言う。
「サンタクロースはいるんでさァ」
教室の温度が二度ほど下がった気がしたが、沖田は気にせず、スマホの画面を操作をした。
*
「総悟って、本当にサンタ信じてるんだな」
「そりゃそうでしょ、今目の前にいるんだから」
「そりゃそうだけどさァ」
赤い服と帽子を着た男と、沖田は話をしていた。いわゆるサンタの格好した男はベッドの上で、沖田は勉強椅子に座って対面していた。
その男は近藤と、沖田に名乗っていた。そして、サンタとも。
サンタクロースは存在する。
しかし、大人になるとサンタの存在を信用しなくなり、そのためサンタは存在しなくなる。その人の中で。
サンタは、親が準備したプレゼントや準備し損ねたプレゼントを用意して、子供のもとに届けるのが仕事である。
サンタを信じている間は、サンタが見える。サンタが存在する。しかし、サンタを信じられなくなった瞬間、その子供の中からサンタは存在しなくなり、見えなくなる。親がサンタクロースという記憶に書き変えられるのだ。
「大体中学上がる頃には、みんなもう俺らのことを信用しなくなるはずなのに。サンタ界隈じゃ、総悟のこと異端すぎてびっくりしてるからね」
「俺は純粋なんですぜ」
「そういう問題かなァ」と近藤は腕を組んで、唸る。
近藤は沖田が住んでいるエリアのサンタである。昔、沖田家にプレゼントを持って侵入した時、偶然起きていた沖田と出会ってしまった。大体、その時点でサンタを信用しなくなるのが常なのだが、彼は違った。そのままサンタが存在することを、近藤が存在することを肯定したのだ。
それから、毎年、沖田は近藤と会うようになり、プレゼントはその日に伝えることになったのである。
「今年は、俺の初恋を叶えてくだせェ」
「初恋?え、今?てか、総悟好きな人いたの…….ふーん」
近藤は俯き、面白くなさそうに返事をした。沖田が「近藤さん?」と声をかけると、近藤は首を振り「なんでもない」と呟いて、顔をあげてニッと笑う。
「サンタはプレゼントを間違えることはあれど、約束は果たすからな!ドンと任せろ、総悟!じゃ、初恋の人の名前を教えてくれ」
「近藤さん」
「うん。だから、名前教えてって」
「知らねェですよ。俺、名前教えてもらってねェですから」
「え!うーん、地道に探していかなきゃじゃん。えと、このサウンタページからその人を探すとして、苗字は分かるんだろ?」
「だから、近藤さん」
「え?」
「近藤さんですよ、俺の初恋」
沖田は先ほどからずっとまっすぐに近藤を見つめていた。逸らさずにずっと。
「え、えと」
「近藤さんの名前、教えてくだせェ」
変わらずに見つめてくる沖田に居た堪れず、近藤は目線を逸らして、足をそわそわさせてしまう。どういうことか。そういうことでいいのか。
「あー、うん。近藤勲で、す」
「いさおですかィ。じゃあ、サンタさん。近藤いさおさんとの恋、叶えてくださいやすか?」
「〜〜〜!!」
そういうことだった。
近藤はその答えにドキッとして、沖田の方を見る。沖田は優しい笑顔で彼を見ていた。それに、近藤は顔を真っ赤にし、両手で顔を覆う。
「ちょっとズルくない?」
「何もズルくねぇですよ」
「だって……」
「ねェ、サンタさん。今年のプレゼントは叶えれそうですかィ?」
沖田はさきほどの笑顔と違い、ニヤニヤと意地が悪い顔をして聞く。近藤は指の隙間から、彼を見てムッとした顔をした。しかし、顔が真っ赤なため、何も不機嫌そうに見えない。沖田は笑みを深くした。
「俺、サンタなのに」
「サンタだからでしょ。だから会えたんですし」
「そうだけどさァ!!」
近藤は叫ぶ。叫んだ後は、バシッと自分の両頬を叩き、沖田を見る。
「明日、駅前のツリーの下に行って、告白したら叶うかもな」
プレゼントはいつだってツリーの下にあるものだから。
おわり