1〜25日目!

来世があるとしたら、とは言わないし願わないが、もしまたお前と出逢えるなら、今度こそは。

「ロミオとジュリエットはさ、しあわせだったと思う?」
「いきなりなんだ」
うつ伏せで寝転がっている近藤が、こちらを向いて聞いてくる。若干、目がトロンとして眠そうだ。
「とっつあんからさ、そのぶたいのチケットくれたからさ、うん、みに、いって」
「それで?」
「うん……それで、なんかいい……なぁって、う……まし……て」
だんだんと近藤の言葉が辿々しく消えていきそうになる。ほとんど目は閉じかけていた。
それがなんだか愛おしく感じて、俺は近藤の額から頭にかけてゆっくり撫でていた。それにふふっと近藤は笑い、少しだけ目を開けようとしていた。
「で、高杉はどう思う?」
「さあな、お前は?」
「聞いてるのこっちなんだけど」
近藤は眉を寄せて口を尖らせる。今度は俺がふっと笑ってしまった。
「作者のことも物語の人物のことも俺には分からねェが、死を合わせられたなら、幸せなんじゃねェか」
「えーなんだよ、それ」
「どっちも取り残されねェだろ」
さっきまで眠そうだった近藤が目を見開く。そして、泣きそうに笑った。
「ああ、そうかもしれねェ」
「……夜明けまで時間がある。寝てろ」
近藤の瞼にそっと手をかざす。限界だったのか、そのまま奴は眠りに落ちた。

俺たちは死を合わせることも、幸せになることも、今世ではあり得ない。出来はしない。
しかし、もし、もしも、
来世があったとしたら、
願ってもいいのなら、
またお前と出逢えるなら、
「幸せにしてェな」
なんて。
ふっ、俺らしくないな。
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