1〜25日目!
「す、好きだよ、総悟……っ!
いやいや、無理だわこんなの!」
屯所の一室で大の男が、30cm大の薄茶色のテディベアを抱いて、床をゴロゴロ転がっていた。部屋の主である近藤は、突如ピタッと仰向けで止まり、口をへの字にする。
「告白ってこんなに難しかったけな……」
ぎゅっと胸の中のテディベアを近藤は抱きしめ直した。
そのテディベアは近藤が一目惚れで買ったものだった。だって、それは亜麻色の髪の毛をもつ彼を思い出させたから。いつの間にか手に取って会計を済ませており、気付いた時にはもう、綺麗なラッピングが施されていた。
誰に渡すでもないため、そのまま自室に持ち帰って、ラッピングを丁寧に外す。可愛らしい瞳がこちらを見つめてきて、目がくりっとした案外可愛らしい彼を近藤はまた思い出したのだ。
それに笑ってしまったが、よくよく考えるとゾッとした。「うわぁ、重症だァ……」と独り言が部屋に落ちたのはいつだったか。
最初は弟みたいな、気の置ける親友みたいな、そんな感じだったと思う。仰向けの近藤はテディベアを持ち上げて自分の顔の前に持って来るようにした。ちょうど向かい合わせになるように。
「いつからだろうな。こんなに好きになったの」
ずっと好きだった。友達として。それは変わらない。
しかし、いつからときめくようになった?
いつから目が離せなくなった?
いつから周りに嫉妬するようになった?
いつから、いつから、いつから。
テディベアに聞いても、自問自答しても、分からない。分からないことだらけだけど、好きなことだけは、愛してしまってることだけは、分かる。
「総悟のこと、あいしてる」
テディベアは何も答えず、ただ見つめてくるだけだった。それが分かってるからこそ、出来ることなんだけど。
近藤はテディベアのお腹に自身の顔を埋めて、大きなため息を吐いた。
こんな不毛なことやめなきゃな……なんて。
「それ、本人に言ったほうがいいよ」
え?
近藤は飛び起きて、周りを見た。しかし、誰もいない。
今度はテディベアを見た。しかし、何も変わらない可愛らしいクマだった。
「どういうこと?」
「近藤さんはもう何回も練習したんだから、大丈夫。あとは総悟くんに言うだけだよ」
独り言に少し甲高い声で返答がきた。声がした方を向くと、廊下につながる襖からだった。うっすらとシルエットが見えた気がする。
顔が一瞬で赤くなる。え、今の聞かれてました?それにこの声は
「そ、そうごだよな?」
「そりゃそうですぜ。近藤さんが名付けたんでしょ。僕の名を」
あくまでテディベアを装うつもりらしい。近藤はテディベアを机の上に置いてから、襖の戸を開けに行った。
開けた先には、テディベアの色の髪を持って、クリッとした可愛らしい瞳を持つ少年が廊下に座っていた。縁側の方に向いていた少年、沖田は戸が開いた音を聞いて、ゆっくりと彼を見上げる。
「近藤さん、告白練習終わりやしたか?」
「なんでいるんだよォ……」
「待ってるのも飽きやしたので。俺から告ってもいいですけど、あれだけ練習したんですし、成果試したくないですか?」
少し意地の悪い笑みを浮かべる沖田に、テディベアの総悟はそんな顔をしないし、総悟は全部聞いてたってことだし、いろんなことが頭を回って、近藤は苦笑いと脱力感が隠せなかった。
それでもここまでお膳立てしてもらって、告白しないのは男が廃る!
近藤は、ひとつ深呼吸をしてから、決心したように先ほどの告白を紡ぐ。
「えっとな、総悟」
部屋の中にいるテディベアが笑っている気がした。
おわり
いやいや、無理だわこんなの!」
屯所の一室で大の男が、30cm大の薄茶色のテディベアを抱いて、床をゴロゴロ転がっていた。部屋の主である近藤は、突如ピタッと仰向けで止まり、口をへの字にする。
「告白ってこんなに難しかったけな……」
ぎゅっと胸の中のテディベアを近藤は抱きしめ直した。
そのテディベアは近藤が一目惚れで買ったものだった。だって、それは亜麻色の髪の毛をもつ彼を思い出させたから。いつの間にか手に取って会計を済ませており、気付いた時にはもう、綺麗なラッピングが施されていた。
誰に渡すでもないため、そのまま自室に持ち帰って、ラッピングを丁寧に外す。可愛らしい瞳がこちらを見つめてきて、目がくりっとした案外可愛らしい彼を近藤はまた思い出したのだ。
それに笑ってしまったが、よくよく考えるとゾッとした。「うわぁ、重症だァ……」と独り言が部屋に落ちたのはいつだったか。
最初は弟みたいな、気の置ける親友みたいな、そんな感じだったと思う。仰向けの近藤はテディベアを持ち上げて自分の顔の前に持って来るようにした。ちょうど向かい合わせになるように。
「いつからだろうな。こんなに好きになったの」
ずっと好きだった。友達として。それは変わらない。
しかし、いつからときめくようになった?
いつから目が離せなくなった?
いつから周りに嫉妬するようになった?
いつから、いつから、いつから。
テディベアに聞いても、自問自答しても、分からない。分からないことだらけだけど、好きなことだけは、愛してしまってることだけは、分かる。
「総悟のこと、あいしてる」
テディベアは何も答えず、ただ見つめてくるだけだった。それが分かってるからこそ、出来ることなんだけど。
近藤はテディベアのお腹に自身の顔を埋めて、大きなため息を吐いた。
こんな不毛なことやめなきゃな……なんて。
「それ、本人に言ったほうがいいよ」
え?
近藤は飛び起きて、周りを見た。しかし、誰もいない。
今度はテディベアを見た。しかし、何も変わらない可愛らしいクマだった。
「どういうこと?」
「近藤さんはもう何回も練習したんだから、大丈夫。あとは総悟くんに言うだけだよ」
独り言に少し甲高い声で返答がきた。声がした方を向くと、廊下につながる襖からだった。うっすらとシルエットが見えた気がする。
顔が一瞬で赤くなる。え、今の聞かれてました?それにこの声は
「そ、そうごだよな?」
「そりゃそうですぜ。近藤さんが名付けたんでしょ。僕の名を」
あくまでテディベアを装うつもりらしい。近藤はテディベアを机の上に置いてから、襖の戸を開けに行った。
開けた先には、テディベアの色の髪を持って、クリッとした可愛らしい瞳を持つ少年が廊下に座っていた。縁側の方に向いていた少年、沖田は戸が開いた音を聞いて、ゆっくりと彼を見上げる。
「近藤さん、告白練習終わりやしたか?」
「なんでいるんだよォ……」
「待ってるのも飽きやしたので。俺から告ってもいいですけど、あれだけ練習したんですし、成果試したくないですか?」
少し意地の悪い笑みを浮かべる沖田に、テディベアの総悟はそんな顔をしないし、総悟は全部聞いてたってことだし、いろんなことが頭を回って、近藤は苦笑いと脱力感が隠せなかった。
それでもここまでお膳立てしてもらって、告白しないのは男が廃る!
近藤は、ひとつ深呼吸をしてから、決心したように先ほどの告白を紡ぐ。
「えっとな、総悟」
部屋の中にいるテディベアが笑っている気がした。
おわり