優しい味
一方、時を同じくしてとある場所では、ただならぬ雰囲気に包まれていた。
「信じられないな、こんな低俗な者達が審神者の任に就いているなんて」
不機嫌を通り越して、殺気まで放っている。
絶対零度の声色でそう吐き捨てるのは、政府の監査官を務める山姥切長義その人だった。
目の前には正座をして戦々恐々と縮こまっている男性が2人。
通りかかった政府の関係者達が足を止めて、遠巻きに様子を見守る。
「なにこれ、どういう騒ぎ?」
近くにいた知り合いの者に尋ねると、
「なんでも、あの審神者らが他の審神者にひどい暴言を吐いていたらしく、それを彼が見つけたそうだ」
こそこそと耳打ちする。ならばもう彼らは終わったな。と互いに頷く。
その暴言を吐いたらしい2人はひどく動揺しながら、オロオロと言い訳がましい言葉を並べる。
「いや、あれは…ちょっとした冗談で、その……」
「そ、そう!悪気はなかったんだよ!それにあの審神者には聞こえてなかったかもしれないし!」
都合の良い解釈で保身に走る彼らが不快でたまらず、山姥切長義は先ほどよりも一層冷徹な表情になる。
彼女は彼らの聞こえるように吐いた暴言を耳にし、震えながら耐えていたのを確かに目にした。
高潔な彼にはそれは見過ごせない光景だった。
何より監査官として彼女の本丸の男士らと戦場を共にし、その功績を政府に報告したのは彼自身だった。
また、問題を起こした2人の本丸を担当していた者に功績を確認したが、妬んでいた割には何の功績もあげていなかったのだ。というより怠惰で傲慢な態度が何度も注意されており、評価は最悪だった。
そんなことまで調べられているとは知る由もない2人は、まだ見苦しい弁明を続け、それを彼は遮る。
「監査官の権限を行使し、君達はこれより政府の審議にかけられる。審神者の任も解かれると考えた方が良いだろう。」
そう言い放つと彼は踵を返し、待ってくれ!と悲痛な声を上げる者達を残して、その場を颯爽と立ち去った。
そんなことが起こっていたのを、主が知るのはあと少し先のお話
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