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前途洋洋

「はぁ…銀時これで終わりにしよう。お父さんが帰って来るぞ」


「はい!」



カランッ…




「銀時、今日学んだ事はしっかり覚えとけよ。」



「うん…ねぇ、何で剣の使い方なんて知る必要があるの?」



「…そりゃぁ、自分で探してみな銀時。剣をお前さんが知るにはまだ幼いさね」



「お、俺はもう6歳だぞ!お、幼くなんかねぇし!」



「充分幼いぞ。銀時…」



「ば、バカにするなぁ!」




「バカにしてなどいない。本当の事を言っただけさ」



「…全く懲りないね」




「あ、父上!お帰りなさい!」




「お帰り…随分と遅かったじゃないかい」




「あぁ、少し国司の人と話を…」




「そうかい…で、どうだったんだ?」




「…駄目だった、今夜で最後だと…」




「ふぅ…そうか…」




「?ねぇ母上、父上、何言っているの?」




「銀時にはまだ早い」




「っ…母上は…そればっかりだ!いつも教えてくれない!何でよ!この前だって何で国司さんが来たの?って聞いても教えてくれなかった。この前もあの時も…俺は…何も!」




「銀時っ…いい加減に」




「父上もだ!何でいつも家に居ないの?何で国司さんと話をしたの?何でよ!」



「っ…まだ早いのだよ、銀…」





「もう知らない!」




「銀時!」




バタバタバタバタ…




子供は靴も履かずに外へ出た。
外は雪が降る寒い日だった。
足が冷たくなり痛くなるのも忘れてただ単にこの場から逃げ出した。



銀時は家の門に手を掛けたが何かの気配を感じ走るのを辞めた。



「おや?こんばんは」




「…何の…用だ」



国司と従者がざっと15人が幼い子供を囲うように威厳ではない圧力を感じさせた。




「君のお父さんにちょっとお話しが」




「…そうかよ」




「銀時!良かった…っこ、国司殿!」





「あら、親子喧嘩ですか?仲良くしないと…いけませんよ?お父さん」




「そ、その通りですね。ほら、銀時こっちへおいで」


こんな父上の目は初めて見た。
何かを恐れるような、哀れむような真っ黒な目を。


「っ…ヤダ」




「銀時…お願いだ」





「っ絶対ヤダ!」




「銀時…」




「あら?お父さん、子供に懐かれてないようですねぇ…可愛そうに」




「は、はぁ…」




「なぁ、おじさん何の用?」




「それは…「言わないでおくれ国司殿」



「?貴方は本当に…子供のことを分かっていませんね…流石に五年は…長すぎだ


裏切り者めがぁっ!!」



急に国司の顔が悪人のようにニタリと笑い

ザンっ…



ブシャァァ…ドスっ





「ち、父…上?」


父さんの胸から赤い体液が滝のように流れた。
雪は命の源で瞬く間に彩られる。


「銀時…逃げろ」




「な、…」




「クックック…いい気味だ友よ。テメェの家内はよう出来た奴だったよなぁ…ちょっくら遊んで行くかぁ?」





アハハハハッ、と従者が笑えば満足そうに男はにやつく。






「母上に手を出すな…」






「ほぉ、勇気のある子供だな…」


感心するように俺を見下せば、ニタリと悪人顔で戦くように子供を見据える。


「帰れ!!!!」





「クックック…帰らねぇよ、クソガキが!!」



また、悪人のように笑った。


ザンッ…



カランっ…





「剣をしまいな、あんたら」





「は、母上!」


国司の後ろには木刀を手に立っている母さんがいた。


「フッ…やっぱりいい女だぁなぁ、姫那」




「その名前は捨てたと言ったはずさ。銀時、逃げな」




「何言ってんだよ...」





「いつそんな言葉使いを知ったか知らないけど、いつか知れるように、母さん戦うからさっ!!

ドスッ



.ぐっ...」



不快な音の正体は国司が母上が俺を見た隙に剣が俺の大好きな母上の腹に突き刺さったものだった。



カランっ



「おっと、手が滑っちまった。すまんなぁ、姫那よ」




「は、はは...うえ」





「あぁあ、もったいねえ事しっちまったなぁ...まだ随分と使い道がありそうだったが...」



うるせぇ...


「まあこんな薄汚ねぇ詐欺師の嫁なんか」



うるせえ!




「生きてても無駄だからなぁ」




「うるせえエエぇ!!!!!」




「こ、国司様!!!」





「あ”あ”あ”あ”ぁぁアア”あああ”あアああア”アあ」



俺は母上が手放した剣を片手に構えを作り国司の野郎を目掛けて駆けた。



「っ!!」




「てめぇ...人を殺して唯で済むと思うなよ」


母上と父上が地べたに倒れているのをじっと見つめ、国司をこれでもかとにらんだ。



「全員てめえらを地獄に叩き潰してやる!!!!」



俺は…



「ハハハハっ、笑わせてくれるね....ガキの分際でぇえ!!!!!!」




ガキンっ!




「っ!うぉお"お"お"お"お"お!!」




何してるんだ。





「舐められたもんだ。ガキが私に勝つとでも」





母上と父上が





「死ねえええぇエエエえぇぇええ!!!クソガキイ」




俺を...守ってくれたのに





ザシュッ





俺は何を…






胸が焼き付くように熱く、燃え

地面に積もった雪に紅が広がった。





「かっ…!!!!!」





「無謀な事ばかり願っても…ただ足掻くだけの話さ…ガキ」




「…ふ、ふざけんな…父う、えが何したって言うんだ!!」





「おや?知りたいですか?」




「これを見ろ、全てが分かるぞ…お前の父の悪行をな」





バサっ




目の前に青い帯で締められた書物があった。

それは、俺が父上に頼んで買ってもらった異国についての本だった。



「…物分かりの悪りぃ奴でも分かろうに、お前の父は異国に興味を持つこの国の裏切り者なのだ」



「……う」



「何だ?自分の父親が密輸をしたことに悲しんだか?」


国司は嘲笑うように見下し、書物を踏みつける。


「…違うっ!!!!!!」



「俺の父上はこんな事、違う…」


感情が入り交じり頭がついて行かない。
怒り、憎み、悲しみ、悔しさ...
頭を内側から抉られるように痛みが走る。



「何が違うのだ小僧…お前の目の前にあるもんは真の事よ」



「真の事ぁねぇ…」



「これは…」



「俺がやったんだ」






「っ!」



「馬鹿を言え!お前の様な小僧がこんな書物を手に入れられる訳がないだろう!」






「黙れっ!!!!!」




「俺がっ、俺がぁ…父上を、」


ポツリポツリと、塩辛い涙がこぼれる。
それはとても両親を失くした儚いものではなく...

「ならば、それが真実だとお前が裏切り者。つまりお前の父と母と同じ運命を辿ろう」



「しらねぇよ…」




「そんな事、知っちゃいねぇ…、俺は、俺は、俺のせいで父上は死んだ!!!!!俺は父上と母上を殺した!!お前は父上を殺した!だから、敵を討つ!!父上と母上の!!!!!!」


両親を殺した罪悪感、途方も暮れる程の哀しみからのものだった。



「小僧!何をっ!!!!!!!!!!」




ザンっ!!!!

銀時が振るった木刀は国司の腹を抉った



「ガッ...こいつぅ、殺れぇ。てめぇら、この小僧を殺っちまえぇぇええ!!!」



ウォォオオオ!!!


銀時に向けて十数人の大人が駆けてくる。
まるでそれは母上と剣術を学んだ時には感じた事のない、体が動かなくなるほどの威圧が小さな自身の体にのしかかって掛ってきた。



「死ね...小僧...」




ザンっ!!!!!!

「っ...」


ブシャァァ.........ドス




淡い藍の混じった雪に濃い紅の花が咲くそれは、広がるように咲き誇った…
この音は山奥の村に響き渡り誰の耳にも残る残酷な鈍いものだった。























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