松と桜
ーーーーーーーー
ーー
ー
「小太郎、あんたは臆病な侍になるんだよ」
「…。」
涙が沸々と湧き、止まらない中で頭を縦に振った。
「…僕は仲間達を守れるぐらい、強く…臆病になる」
「…強く、臆病かい。お前らしいねぇ」
「…お婆様…」
「でも、無理はせんだよ」
「…うん。約束です」
「あぁ、約束だ」
そして数ヶ月後にこの約束の為に…
約束を築く為の様に…
「おや、貴方も入塾希望者ですか?さっきの道場破りに来た子はもう私の生徒になりましたよ。」
雨が降っては止んでの繰り返しだった毎日から、救ってくれた人の為の様に…
「おい、ヅラ…最近巷で銀髪の子供を連れた人が金がねぇ奴に村塾を開いてるって聞いた事あるか?」
こんな薄情のように見えて何かを守ろうと必死だった奴に会う為の様に…
お婆様は亡くなった。
ー
ーー
ーーーーーーーー
「っ!!…はぁはぁ、ゴホッ……。」
久しぶりに夢でお婆様を見た。
頰に手を当てると雫がポタリ、ポタリと
どんどん溢れて止まらない。
数ヶ月前までは苦しい夢を見ても母や父、お婆様が大きな手で背中を撫でてくれた。
けれどもう、そんな手を感じる事は出来ない。
とても、寂しかった。誰一人と居ないこの大きな屋敷で木霊する自分の小さな足音。
そんな音が自分は一人と強調されるようだった。
「しかし、一人は何かと良いものだな…」
そう思えるようになったのは最近。
一人だと、大声で歌っていられる。
好きな事だけしていられる。
読書を集中していられる。
なにもかも自分の思い通りに行っていた。
だが…やはり孤独と向き合わなければならなかった。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
寺子屋の先生に授業を抜け出した晋助を連れて来いと言われ、いつも彼奴が暇潰しに寄っている寺へ行った。
「やはりここにいたか。また塾で大暴れたらしいな。」
案の上、此処に来ていた。
「フっ…あそこにいんのは親のカネだのコネだのを引き出す才覚しかねえボンどもだ。俺はまじめに稽古しろっつうから本気を出しただけだよ」
「それでもお前は幸せなのだぞ。世には貧しさゆえに文字も読めぬ者もなりたくても侍になれない者もいるのだ」
「さすがは才覚だけで特別入門が許された神童は言うことが違う」
「お前ならあそこで立派な侍になれるさ。お家だのお国だののために働き死んでいく。そんな立派な侍にな」
「ならばお前はいったいどんな武士になりたいというのだ?」
「さぁな…そんなもんわかったら苦労しねえさ」
寺の入り口をみると、木刀を持った門下生達がいた。
「待て。稽古での遺恨を私闘ではらそうとは…それでも武士を目指す者か!それも多勢に無勢で」
「桂か。ちょうどいい。特待生だか知らないがろくに金も納めん貧乏人と机を並べるのも我慢の限界がきていたところだ」
「…聞いたろ桂。ここには侍なんていねえよ」
この言葉と同時に木刀を構えた。
うぉぉぉおおおおおおぉおぉぉ…
寺の前に轟かす門下生達の声が響いた。
ドジャッッ…
晋助と門下生達の間に木から発せられた銀に光る真剣が刺さっていた。
「っ…!!!何だ!」
「ギャーギャーニャーニャーやかましいんだよ。発情期ですか、コノヤロー」
ストッと、木から降りて来たのは銀色の髪をした、余りにも真剣を持つのには早すぎる年頃の少年だった。
そして、門下生うち一人の頭の上に着地した。
そう、この銀色と会ったのは…この時だった。
「授業の正しいサボり方を知らねぇのかゆとり供?寝ろ」
そう言って、地面に刺した真剣を抜いき腰の鞘に納めた。
「ヒィッ…!」
門下生達は歯をカタカタならして怯えていた。
高杉はその少年を警戒して見ていた。
「侍がハンパやってんな。俺がつきあってやるよみんなで一緒に寝ようぜ」
少年は辺りを見回してこの場を楽しむように呑気そうに言った。
「てめぇ、何処の誰だ。」
高杉が聞くと…
「ん?松下村じゅっ
バコォォンン…
轟音のした方を見ると、門下生達が知らない大人拳を受けて倒れていた。
「銀時、よく言いました」
「…そう。侍たるものハンパはいけない。多勢で少数をいじめるなどもってのほか…」
「ですが銀時。キミたちハンパ者がサボリを覚えるなんて100年早い」
バァコォォオオオオオンンン…
「…っぁ…」
拳の威力は半端ない。
ズルズル…
「貴方達も早く帰りなさいね。ではまた今度会いましょう。」
「は、はぁ..」
間の抜けた声でこたえた。
「桂、あの大人の人知ってるか?」
「さぁ...しかし、銀色のかみをした子供をつれた人が身分も無い貧しい子供たちに学を教えている、と風の噂で聞いた。」
ひゅうぅぅ....
風が俺たちの間を駆けていった。
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「小太郎、あんたは臆病な侍になるんだよ」
「…。」
涙が沸々と湧き、止まらない中で頭を縦に振った。
「…僕は仲間達を守れるぐらい、強く…臆病になる」
「…強く、臆病かい。お前らしいねぇ」
「…お婆様…」
「でも、無理はせんだよ」
「…うん。約束です」
「あぁ、約束だ」
そして数ヶ月後にこの約束の為に…
約束を築く為の様に…
「おや、貴方も入塾希望者ですか?さっきの道場破りに来た子はもう私の生徒になりましたよ。」
雨が降っては止んでの繰り返しだった毎日から、救ってくれた人の為の様に…
「おい、ヅラ…最近巷で銀髪の子供を連れた人が金がねぇ奴に村塾を開いてるって聞いた事あるか?」
こんな薄情のように見えて何かを守ろうと必死だった奴に会う為の様に…
お婆様は亡くなった。
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「っ!!…はぁはぁ、ゴホッ……。」
久しぶりに夢でお婆様を見た。
頰に手を当てると雫がポタリ、ポタリと
どんどん溢れて止まらない。
数ヶ月前までは苦しい夢を見ても母や父、お婆様が大きな手で背中を撫でてくれた。
けれどもう、そんな手を感じる事は出来ない。
とても、寂しかった。誰一人と居ないこの大きな屋敷で木霊する自分の小さな足音。
そんな音が自分は一人と強調されるようだった。
「しかし、一人は何かと良いものだな…」
そう思えるようになったのは最近。
一人だと、大声で歌っていられる。
好きな事だけしていられる。
読書を集中していられる。
なにもかも自分の思い通りに行っていた。
だが…やはり孤独と向き合わなければならなかった。
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寺子屋の先生に授業を抜け出した晋助を連れて来いと言われ、いつも彼奴が暇潰しに寄っている寺へ行った。
「やはりここにいたか。また塾で大暴れたらしいな。」
案の上、此処に来ていた。
「フっ…あそこにいんのは親のカネだのコネだのを引き出す才覚しかねえボンどもだ。俺はまじめに稽古しろっつうから本気を出しただけだよ」
「それでもお前は幸せなのだぞ。世には貧しさゆえに文字も読めぬ者もなりたくても侍になれない者もいるのだ」
「さすがは才覚だけで特別入門が許された神童は言うことが違う」
「お前ならあそこで立派な侍になれるさ。お家だのお国だののために働き死んでいく。そんな立派な侍にな」
「ならばお前はいったいどんな武士になりたいというのだ?」
「さぁな…そんなもんわかったら苦労しねえさ」
寺の入り口をみると、木刀を持った門下生達がいた。
「待て。稽古での遺恨を私闘ではらそうとは…それでも武士を目指す者か!それも多勢に無勢で」
「桂か。ちょうどいい。特待生だか知らないがろくに金も納めん貧乏人と机を並べるのも我慢の限界がきていたところだ」
「…聞いたろ桂。ここには侍なんていねえよ」
この言葉と同時に木刀を構えた。
うぉぉぉおおおおおおぉおぉぉ…
寺の前に轟かす門下生達の声が響いた。
ドジャッッ…
晋助と門下生達の間に木から発せられた銀に光る真剣が刺さっていた。
「っ…!!!何だ!」
「ギャーギャーニャーニャーやかましいんだよ。発情期ですか、コノヤロー」
ストッと、木から降りて来たのは銀色の髪をした、余りにも真剣を持つのには早すぎる年頃の少年だった。
そして、門下生うち一人の頭の上に着地した。
そう、この銀色と会ったのは…この時だった。
「授業の正しいサボり方を知らねぇのかゆとり供?寝ろ」
そう言って、地面に刺した真剣を抜いき腰の鞘に納めた。
「ヒィッ…!」
門下生達は歯をカタカタならして怯えていた。
高杉はその少年を警戒して見ていた。
「侍がハンパやってんな。俺がつきあってやるよみんなで一緒に寝ようぜ」
少年は辺りを見回してこの場を楽しむように呑気そうに言った。
「てめぇ、何処の誰だ。」
高杉が聞くと…
「ん?松下村じゅっ
バコォォンン…
轟音のした方を見ると、門下生達が知らない大人拳を受けて倒れていた。
「銀時、よく言いました」
「…そう。侍たるものハンパはいけない。多勢で少数をいじめるなどもってのほか…」
「ですが銀時。キミたちハンパ者がサボリを覚えるなんて100年早い」
バァコォォオオオオオンンン…
「…っぁ…」
拳の威力は半端ない。
ズルズル…
「貴方達も早く帰りなさいね。ではまた今度会いましょう。」
「は、はぁ..」
間の抜けた声でこたえた。
「桂、あの大人の人知ってるか?」
「さぁ...しかし、銀色のかみをした子供をつれた人が身分も無い貧しい子供たちに学を教えている、と風の噂で聞いた。」
ひゅうぅぅ....
風が俺たちの間を駆けていった。
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