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春の唄に耳を澄ませば


バタバタバタッ



春の陽気な風が流れている時、神楽が慌ただしく帰って来た。



「銀ちゃーーん!!今、定春と一緒にお散歩してたら桜がすっごく綺麗だったアル!!ねぇ、お花見しようヨ!」



ほんと餓鬼って奴はと、思いながら…



「しゃーねぇな。色々準備しなきゃなんねぇからちょっと待ってろ」



と、自分も花見へ行きたかったので丁度いいと思い重い腰を上げた。



「やっほぉーーーい!!」



そう、神楽が大きな声でよろこんだ。



「あれ?神楽ちゃんもう、帰って来てたんだ」



「ワンッ!!」



厠から出て来た新八が早くも定春から豪勢な戯れ合いを求められた。



「新八!今からお花見行くアルヨ!お前も準備するアル!」





「ほ、本当!僕が此処まで歩いて来た時凄く桜が綺麗だったんだ!本当は僕、今日お花見に誘うつもりだったんだけど、よかった!こうとなれば早く準備して、いい場所を探そうね!」



「そうアル!私達も銀ちゃんのお手伝いするアル!」



そうだね、と新八が言うと台所へ走っていく。



「銀ちゃん!お弁当、手伝うアルヨ!何すればいいアルか?」



「ん?手伝ってくれんのか?けど、もう、出来ちまうぞ!なんと銀さん朝から仕込みをしてたんだ!」



「本当ですか!じゃあ、銀さんも今日お花見行く事、考えていたんですか?」



「まぁ、そんなとこだな。…よし、出来たと。おい、もう行くぞ!」



「ちょ、ちょっと待つアル!」



「僕ももうちょっと待って下さい!」



「ワンッ!!」



「おい、お前ら人の心配より自分の事を先にしろよな!」



など、言っているうちに支度が出来た。



「じゃあ、行くとするか!」



「「イェーイ!!」」



ガラララララッ…



「うわ、眩しい…おい、鍵閉めろよ」



「はい!」



「アハハハ!銀ちゃん見て見て!桜の花びらが落ちてるアルヨ!」



「お、本当だ…」



家の前の手摺には幾つかの桜の花びらが落ちていた。



「桜を見るならやっぱり川沿いに行かなきゃですね!」




「けど、川沿いは人がいっぱい居て落ち着かないアル…」




「そっか、そうなると…銀さん、何処か良い所は知っていませんか?」




「…しゃーねぇな、俺がちっさい時に良く行ってた穴場教えてやるさ。まぁ、ちょっと遠いけどな」



あまり教えたくは無い場所ではあったが、神楽と新八の必死そうな目を見ると渋々伝えてしまった。



「流石銀ちゃんネ!」



「その穴場って何処なんですか?」



「旅行に行く気分アル!」



と、嬉しそうに笑う2人を見て言った。



「俺の故郷だ。江戸を出る事になるぞ」



「銀ちゃんの故郷?早く行って見たいヨ!」



「江戸を出るって、相当遠いですね」



「まぁな、だがそんな退屈する程じゃねぇさ」



銀時が歩き出した。

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そして万事屋達は残り少ないお金で電車に乗り、暫く歩いた。足が少し疲れて来た時…



「銀ちゃん、此処アルカ?」



3人の前には特別大きな桜の木がドンと立ち、その周りにその木に負けない程立派な桜が植わっていた。そこは、



「まるで、まるで…お伽話の中みたいですね」



「まぁ、昔より桜の木は減っちまったが他にこんな綺麗な所はねぇさ。」



そう言った銀時の顔は哀しそうに笑った。



「そうですね…なんか、心が洗われます。」



「だろ、俺もちっさい時は此処ではしゃいだもんだな…」



「銀ちゃん!他の人が来てるアルヨ」



神楽が指差した先にブルーシートがあった。



「なんで、こんな田舎に…地元の人かな?」



「…そうか…彼奴も…」


銀時は小さな声で笑った。


そんな銀時を見て神楽と新八は首を傾げた。



「ちょっくら散歩すっか」



「そうですね!」



荷物を置き、数少ない貴重品を持った。



「銀ちゃん、綺麗な鳥がいるヨ!」



「ああ…綺麗だな…」



「最近は家の近くじゃ、烏と雀ぐらいしか見かけないですもんね」



アハハハっと笑うと2人も笑った。



「なんか、新鮮ですね。こういう所って」



「空気が凄く美味しいアル!この歌舞伎町のグルメ女王が言うから間違い無いアル!」



神楽が定春とはしゃぎ始めた。少し経つと特別大きな桜の木の下に人影があるのが見えた。



「あれ?人が居ますね…」



「私もあのでっかーーい桜の所に行きたいアル!」



「そうだな…あんまり慌てんなよ!桜は逃げねぇからな!」



子供2人は一目散に翔けて行った。



「何だ、其処に居たのかよ」


と、ぽつりと独り言を言って2人の後を追った。



「あれ?銀ちゃん、人が居なくなったアル」



その大きな桜の下に着いた途端に人影が無くなってしまった。






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