マグダレーナさんの妄想書架

【パターン4. アキリーズ×スターリング】






「ねえルディ。あのふたりってどこまで進んでるのかな」
「どこまでって、何が」
「何って、ねえ?」
「あー…うん」

ねえ?で察してくれる辺り、この義姉もよくわかっているというものだ。
あたしより付き合いが長いだけの事はある。

「っていうか、そもそも付き合ってんの?今更だけど」
「そこんとこ、私も知らないのよねえ。少なくとも、両方女の気配がしないのは確かね」
「それってやっぱりおかしいよね、普通に考えたら」
「まったくよ。アキリーズは今でも充分モテるだろうに…リンだって、コミュニケーション能力欠如気味なのはちょっとアレだけど、需要はあるのよ?主にショタ趣味路線なおねーさま方に、ってトコがまたちょっとアレだけど」

お茶をすすりながらルディが流し見た先には、件の2名、何やら話し込んでいる模様。

…まあ、こうして眺める分には、お似合いだと思うんだよね。
言ったら絶対怒るけど。アキリーズが。

大体、スターリングがあれだけ話してるトコなんて、他に見た事ない。
あたしだって決して仲悪くはないし、寧ろ仲良い方だと思うんだけど、いまだに1分以上連続で喋った事ないし。
雑談したって「いい天気だね」「そうだね」終了、みたいな。
そもそも言葉としての返事が返ってこない事だってザラだし。

…あ、笑った。

「うわ、レアモン見た」
「ニクシーニクサー見つけたみたいな言い方しないでよ」
「その『モン』じゃな…や、そのくらい珍しいじゃん」
「それは認めるわ…私だってこれがせいぜい2回目の目撃」
「うわあ」

何話してんだろ?
近寄ってくと確実に止まるからダメ、かといってあたしの地獄耳をもってしても内容までは聞き取れない。
特別仲が良いのは間違いないんだけどなあ。

ルディが言うには、少なくとも、

「絶対無自覚だろうけど、アキリーズはリンに甘いわよ。過保護とも言うけど」

…だ、そうだ。

「私が怪我したら『ツバでも付けとけ』とか言う癖に、リンが怪我したらああだこうだ言いながら速攻で手当てしてやるってどうなのよこれ。普通、どうせ甘くするなら女に対してじゃないわけ?」
「…それ、ルディが女として見られてないだけなんじゃ?」
「うっ…」
「………あ、なんか、ゴメン」
「…っともかく、よ。確かに私は治癒術使えるから、ちょっとくらいほっとかれたって全然平気だけど。仮にも女のこの私をスルーする癖に、そんでもってガルタンにも同じ事言う癖に、リンにだけそんな甘いっておかしくない?」
「(自分で『仮にも』とか言っちゃったよこのひと!)…えっと、ライノさんて言ったっけ?あのひとにはどうなの」
「分隊長?…あー、心配はするわよ。でもよっぽどじゃない限りあいつが手当てなんてしない。一応私の役割だったしね」

あたし達が好き放題言い散らしてるなんて知りもしないであろう渦中のひとは、面白い事でもあったのか、何やらニカッと笑った。
悪戯を仕掛けすぎて顰めっ面ばかりを見慣れたあたしが敢えて言おう、『眉間に皺さえ寄ってなければかなりのイケメンだ』と。

「…ていうかさ、ベスマあんた、まだ独り身でしょ?今のあいつにとって一番身近な独り身女ってあんただと思うんだけど、なんかないの?」
「はあ?」
「………ある訳ないか。あったらとっくに私が気付いてるわ」
「ある訳ないじゃん。あたしこの性格だよ?その上、これでも一応色々しょってるよ?」
「色々っていうならリンだって色々しょってそうじゃない?」
「色々の方向性が違う気がするんだけど」
「私に言わせりゃ、被ってる皮が違うだけで中身はどのみち一緒よ」
「えー、どの辺が」
「自分を大事にしないとこ」
「…あたし、そんなに危なっかしい?」
「あんたはオーラであれこれはね除けるから平気、リンははね除けらんないから超危なっかしい。それが違い」

…ルディが言ってる事はよくわからない(主に自分についての評価が)けど、合点はいった。
要するに『ほっとけない』ってヤツね。

「うん、よくわかった。で、めっちゃ納得した」
「それは結構な事で」
「要するにさ、『守ってあげたいタ・イ・プ!』って事だよね」
「ぶっ」

なに、あたしそんな変な事言った?
ルディがお茶吹き出した。なんかごめん。

「…結局、付き合ってるのかなあ」

ホモップルっていうの?そういうのは何回か見た事あるけど、なんか違うんだよなあ。

「それ多分リンが可愛らしいか………いやなんでもない」

あ、それだ。
口滑らせたルディの一言でまた納得した。

「結局のところ、アキリーズも『ショタ趣味路線のおねーさま方』と大差無いって事か」
「…それ多分、本人に言ったらガチギレされるわよ」
「だってそうでもなきゃ、とっくにルディかあたしに靡いてたっておかしくないじゃん」
「いや私既婚者…」
「ちょっと前まで違ったでしょ。とにかくちょっと確認してみよっか」
「どうやって」
「今度アキリーズ誘惑してみる」
「…それ面白そうね、乗った。手伝うわ」

人間の三大欲求なんてあってないようなモノ状態のスターリングはさておき、『女の気配がしない』今のアキリーズに何も無いんだったら、たとえあたしでも色仕掛けすれば多少は反応する筈。
反応しなかったら…まあ、高確率でそういう事だ。
その場合はいっそ潔く認めてしまえ。祝福しちゃるから。

―――その誘惑作戦の結果、全力で否定されて寧ろクロに近づくのは、また別の話。

「アキリーズのそういうわかりやすいとこ、嫌いじゃない」
「…いっそ嫌ってくれ、その方が助かる。あと、あんまりイジるとあいつ泣くぞ、そろそろ」
「泣かせちゃダメだよ、鳴かせなきゃ」
「Σ何言ってんだてめえ!?」



※※※



マ「王道カプは供給多いから助かりますねぇ、パターンもたくさんあって。わたしはこういう、グレーから脱却出来てない感じのが好きですよ。絵面的には最強だから、行き着くとこまで行っちゃってるのも大好物ですけど」

ク「(言えない…『状況的にはあながち間違ってなかった』とか…そんなマグが大喜びしそうな事、彼等の名誉の為にも死んでも言えない…!)」

マ「ねえねえ、ガルタン様から見てどうだったんですかあ?」

ク「Σ呼ばないでよ嬉々として出てきちゃうでしょ!?ガルタン様も応えようとしないで!!」
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