暴走狂騒曲(ベネディクト代)
野郎共がやいのやいのとやっている、ちょうどその頃。
帰途に就いた筈のアイリスは、寄り道していた。
昔の職場に顔を出すという言い訳のもと、顔馴染みをちょっとおちょくって行こうと、傍迷惑な悪戯心が顔を出したからである。
淀みなく所長室に向かい、ノックをひとつ。
出て来たのは部屋の主ではなく、知らない娘だった。
「すみません、生憎所長は留守にしておりまして」
「あら本当。久々にこっちに来たから、ちょっとからか…いえ、お話でもしようと思って寄ったのだけど、留守ならしょうがないわね。一応、アイリスが寄りました、とだけ伝えておいてくれる?」
「はい。アイリスさん、ですね」
にこにこと対応する娘を、アイリスは一目で気に入った。
素直そうだし、何より可愛い。
「あなた、新入りさん?可愛いわねえ」
「はい、少し前から所長秘書をさせていただいている、ナタリーといいます」
「ナタリーちゃん。名前も可愛いわ。歳はおいくつ?」
「うふふ、ありがとうございます。これでも一応、この間二十歳になりました」
「あらそうなの。なら、ナタリーちゃん、はちょっと失礼だったかしら」
「いえ、いいんです。どうぞお好きなように呼んでください」
ちょっと歳の差が大きいかしら。
いやでもうちの息子老けないし、これくらい身長差があった方がカップルとしては可愛いかも。
何はともあれこういう可愛い女の子の孫が欲しいわね。
ちょっとした会話の隙に、アイリスはこれだけの事を考えた。
過ぎた母親感情とはまったくもって油断ならないものである。
───因みにこの二人は数年後、吃驚する程中の良い嫁姑の関係になるのだが、この時はお互いに、そんな事にはこれっぽっちも気付いていなかった。
終わっとけ。
帰途に就いた筈のアイリスは、寄り道していた。
昔の職場に顔を出すという言い訳のもと、顔馴染みをちょっとおちょくって行こうと、傍迷惑な悪戯心が顔を出したからである。
淀みなく所長室に向かい、ノックをひとつ。
出て来たのは部屋の主ではなく、知らない娘だった。
「すみません、生憎所長は留守にしておりまして」
「あら本当。久々にこっちに来たから、ちょっとからか…いえ、お話でもしようと思って寄ったのだけど、留守ならしょうがないわね。一応、アイリスが寄りました、とだけ伝えておいてくれる?」
「はい。アイリスさん、ですね」
にこにこと対応する娘を、アイリスは一目で気に入った。
素直そうだし、何より可愛い。
「あなた、新入りさん?可愛いわねえ」
「はい、少し前から所長秘書をさせていただいている、ナタリーといいます」
「ナタリーちゃん。名前も可愛いわ。歳はおいくつ?」
「うふふ、ありがとうございます。これでも一応、この間二十歳になりました」
「あらそうなの。なら、ナタリーちゃん、はちょっと失礼だったかしら」
「いえ、いいんです。どうぞお好きなように呼んでください」
ちょっと歳の差が大きいかしら。
いやでもうちの息子老けないし、これくらい身長差があった方がカップルとしては可愛いかも。
何はともあれこういう可愛い女の子の孫が欲しいわね。
ちょっとした会話の隙に、アイリスはこれだけの事を考えた。
過ぎた母親感情とはまったくもって油断ならないものである。
───因みにこの二人は数年後、吃驚する程中の良い嫁姑の関係になるのだが、この時はお互いに、そんな事にはこれっぽっちも気付いていなかった。
終わっとけ。