Ballata "LUNISOLARE"

【ASIAN MOON】






こいつらは妙なところばかり似ているな、と、言葉を交わす度に思った。

当たり前に人種は違うし、顔付きも声も、体格だって違う。
強いて云うなら、切れ長の目が多少似ている。
勿論、瞳の色は違う。
ただ、戦う時には強い癖に、与太話をする時などには少し困ったように安定しないその視線が、似ている。

そして、それ以上に。

「私は、無力です。数多の怪物を斬り捨てても、何の解決にもならない。此処から先へ進む為の策や、力が、私には無い。ただ同じ事の繰り返し。それは無力と同義です」

物言い、が。
思考、と言ってもいい。

「ヤウダ筆頭殿が、大層なご謙遜だな」
「謙遜などではありません。事実です」

嗚呼、また空が赤く染まる───。
初めてその呟きを聞いた時、目の前に居るのとは別の、見慣れた誰かの横顔を見た気がした。

滲み出る雰囲気が、良く似ている。

「私は…」
おれは。
「弱い人間だから」
駄目な人間だから。

「守るべきものがあるのに、私という人間が小さすぎて、足りない。歯痒くて足掻く度、己が身の丈を思い知らされて絶望する。…結局、最後にはいつも子供のように、ひとり震えているのですから」

こういう奴は、厄介だ。

「あんた、馬鹿だな」
「ええ、莫迦です」
「…違う」
「は?」
「…いや、いい。忘れろ」
「…はあ」

“馬鹿”と“莫迦”は、違う…と、思う。
“莫迦”は嫌いだが、この手の“馬鹿”は───なんとなく、愛しい。



【1592年、内紛調停後のヤウダにて】
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