Ballata "LUNISOLARE"

【太陽と蒼い月~2 Lovers~】






のんびりと。
行為に対する形容が間違っている感は否めないけれども、兎に角そんな感じで、1日が終わった。
こんな感想になったのは、彼女の表情が終始穏やかだったからに違い無い。

「あまり大仰にすると、あの方はきっと疲れるでしょうから」

彼女がそう計らったお陰で、国賓が参加しているとは思えないくらい、簡素になった“墓参り”。
儀式や式典と呼ぶにはあまりにもこじんまりしたそれの後、僕等だけが此処に残った。

「皆と一緒に帰って良かったのに。付き合わせてしまってごめんなさい」

馴れた手付きで最後に添えた花。
作らせたり、買ったりしたとは思えない、何処かで摘んできたらしい小さな花束は、きっとそのうち風に吹かれて飛んでいってしまうだろう。
彼女は、その方が良いと思っているらしい。

「と言うか、あまりほったらかしにしておくとモニカが拗ねるわよ」

大丈夫だよ、と返しておく。根拠は無いけれど。

かの人が、此処に眠っている訳じゃない。
それでも、生ある者が偲ぶ為の標としての墓碑、その存在感は充分で。
本人である訳もないそれに、僕は語りかける。

嗚呼、陛下。
貴方が悪いのだと、思っても良いですか。
貴方が、彼女をこんなにする、決定打を与えてしまった。

言葉にすれば、逆恨みも甚だしい。
けれど実際恨んでいる訳ではないし、何より、元から彼女はそういう人間だった。
他でもない僕自身が、それを一番良く知っている。
諦めた、とは思わない。
言うなれば、根負け…かも知れない。

ともあれ、彼女も僕も、そして皆も、一様に心穏やかで、幸せです。
ひとつ確実に恨む事があるとすれば、皆の“姉”を置いて逝った事。
それだけは、いずれ彼女が天寿を全うしたその時に、よく謝って下さいね。



【1290年代、良く晴れた空の下で】
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