Ballata "LUNISOLARE"
【月のながめかた】
「…ねえ、ウィル?」
「何」
「流石にちょっと、コレはやりすぎだと思うんだけど…」
「何処が。本当ならここにストーブでも足してやりたい所だぞ」
「たかだかこれだけの事に屋外でストーブ使うのはどうかと思うよ」
「お前が寒さにやられたら困る人間が何人居ると思ってる。いいからきっちり前を合わせておけ」
端から見てりゃ、コートを着た上から毛布でぐるぐる巻きにされてる時点で充分やりすぎです。
…頭に浮かんだ文言は、口に出したら一発でウィルのおかんむりを招きそうだったので、そっと仕舞っておく事にしておいた。
こいつらのやりとりを横から眺めて、ウィルの世話焼きっぷりに笑ったり呆れたりするのはよくある話。
…が、ウィルが付いてるならいっか、の一言でお偉いさんがあっさり許容しちゃうくらい、最近の保護者っぷりが加速してるんですがどうしたら。
や、仲がいいのはわかってんだ。ほぼツーカーってやつだ。
でも、その仲のよさを笠に着て、過保護っぷりが暴走しているよーな…。
「………簀巻き」
「………は?」
「お前の現状」
「………これ?」
「それ」
ちょこんと出た手(当然のようにもこもこした手袋を装備させられてるので見た目はまるっきり等身大のぬいぐるみだ)で器用に自分を指差すライ。
「あー…若しくは、みの虫?」
濃い枯れ葉色の毛布が、枝の先でブラついているあれを想像させた。
こう、首根っこ辺りから糸みたいなもんで吊されてて、ぷらーんぷらーんと風に吹かれてそうな。
『みの虫…』と鼻の上まで巻き付けられたマフラーに邪魔されるもごもご声で反芻しながら、これまた器用に小首を傾げるその見た目、どこぞのマスコットキャラの如し。
そんな感想を抱いていたらば。
「そうだ、いい事を思い付いたぞ。ロビン、ちょっとお前のコート貸せ」
言うが早いか、脱がしにかかられた。
やめて下さいウィリアムさん寒いです。
「お前のコート、フードが付いてるだろう。そもそもお前の方がサイズもでかいから、上からすっぽり被せるのにちょうどいい」
…誰に、とは聞くまい。
「さあ、脱げ。そして寄越せ」
「断る。俺が寒いだろ」
「お前が寒くても問題無い。寒風に晒されたライがうっかり風邪を引かないようにする方が重要だ」
「もう充分あったかくしてるだろ」
「念には念を、だ。それにお前は風邪引かないから少しくらい寒くても平気だろう」
「なんだそりゃ。俺だって風邪引く時にゃ引くっつの」
「いいや、大丈夫だ」
「その心は」
「お前は馬鹿だからな」
…ウィリアムさんひどいです。
兎にも角にもコートは死守する。思いっきり舌打ちされたが気にしない。
「どーしても被せたきゃご自分のをどーぞ」
「断る。体調管理はしっかりしてるつもりだが、俺がうっかり風邪引いても困るからな。俺が倒れたら誰がライの面倒見るんだ」
「や、僕ひとりでも全然大丈夫…」
「じゃない。毎度毎度、熱出してるのに気付かないまま出歩いて、とんでもない所でダウンするのはどこのどいつだ」
「………ゴメンナサイ」
これじゃまるっきり………。
まるっきり、何だ。アレだ。
「お母さん」
「誰がお母さんだ」
殴られた。
いやいやいや、そんだけの速度で反応するって事は自覚あるだろお前。
…まあ、こんだけしっかりしたオトモが居れば、確かに『まあいっか』にもなろうさね。
これで、『折角いい天気だから、ちょっと星でも見に行こうか』なんて誘ったのが俺だったら最初から全力で拒否されたんだろうけど、他でもないライ当人が言い出したんだから仕方が無い。
なるべくしてなった、簀巻き…や、布団虫?の完成である。どっとはらい。
…で、ウィリアムさん。いつになったら上空を見上げる段になるんですか。
【1254年、良く晴れた夜の屋上で】
「…ねえ、ウィル?」
「何」
「流石にちょっと、コレはやりすぎだと思うんだけど…」
「何処が。本当ならここにストーブでも足してやりたい所だぞ」
「たかだかこれだけの事に屋外でストーブ使うのはどうかと思うよ」
「お前が寒さにやられたら困る人間が何人居ると思ってる。いいからきっちり前を合わせておけ」
端から見てりゃ、コートを着た上から毛布でぐるぐる巻きにされてる時点で充分やりすぎです。
…頭に浮かんだ文言は、口に出したら一発でウィルのおかんむりを招きそうだったので、そっと仕舞っておく事にしておいた。
こいつらのやりとりを横から眺めて、ウィルの世話焼きっぷりに笑ったり呆れたりするのはよくある話。
…が、ウィルが付いてるならいっか、の一言でお偉いさんがあっさり許容しちゃうくらい、最近の保護者っぷりが加速してるんですがどうしたら。
や、仲がいいのはわかってんだ。ほぼツーカーってやつだ。
でも、その仲のよさを笠に着て、過保護っぷりが暴走しているよーな…。
「………簀巻き」
「………は?」
「お前の現状」
「………これ?」
「それ」
ちょこんと出た手(当然のようにもこもこした手袋を装備させられてるので見た目はまるっきり等身大のぬいぐるみだ)で器用に自分を指差すライ。
「あー…若しくは、みの虫?」
濃い枯れ葉色の毛布が、枝の先でブラついているあれを想像させた。
こう、首根っこ辺りから糸みたいなもんで吊されてて、ぷらーんぷらーんと風に吹かれてそうな。
『みの虫…』と鼻の上まで巻き付けられたマフラーに邪魔されるもごもご声で反芻しながら、これまた器用に小首を傾げるその見た目、どこぞのマスコットキャラの如し。
そんな感想を抱いていたらば。
「そうだ、いい事を思い付いたぞ。ロビン、ちょっとお前のコート貸せ」
言うが早いか、脱がしにかかられた。
やめて下さいウィリアムさん寒いです。
「お前のコート、フードが付いてるだろう。そもそもお前の方がサイズもでかいから、上からすっぽり被せるのにちょうどいい」
…誰に、とは聞くまい。
「さあ、脱げ。そして寄越せ」
「断る。俺が寒いだろ」
「お前が寒くても問題無い。寒風に晒されたライがうっかり風邪を引かないようにする方が重要だ」
「もう充分あったかくしてるだろ」
「念には念を、だ。それにお前は風邪引かないから少しくらい寒くても平気だろう」
「なんだそりゃ。俺だって風邪引く時にゃ引くっつの」
「いいや、大丈夫だ」
「その心は」
「お前は馬鹿だからな」
…ウィリアムさんひどいです。
兎にも角にもコートは死守する。思いっきり舌打ちされたが気にしない。
「どーしても被せたきゃご自分のをどーぞ」
「断る。体調管理はしっかりしてるつもりだが、俺がうっかり風邪引いても困るからな。俺が倒れたら誰がライの面倒見るんだ」
「や、僕ひとりでも全然大丈夫…」
「じゃない。毎度毎度、熱出してるのに気付かないまま出歩いて、とんでもない所でダウンするのはどこのどいつだ」
「………ゴメンナサイ」
これじゃまるっきり………。
まるっきり、何だ。アレだ。
「お母さん」
「誰がお母さんだ」
殴られた。
いやいやいや、そんだけの速度で反応するって事は自覚あるだろお前。
…まあ、こんだけしっかりしたオトモが居れば、確かに『まあいっか』にもなろうさね。
これで、『折角いい天気だから、ちょっと星でも見に行こうか』なんて誘ったのが俺だったら最初から全力で拒否されたんだろうけど、他でもないライ当人が言い出したんだから仕方が無い。
なるべくしてなった、簀巻き…や、布団虫?の完成である。どっとはらい。
…で、ウィリアムさん。いつになったら上空を見上げる段になるんですか。
【1254年、良く晴れた夜の屋上で】