Amatorio sfondo

【ヘクターとキャット】






…こいつの興を引くような格好をしていた俺が悪いのか。

「つんつん」
「………っ」
「あ、ここ弱いのか。ほれほれ」
「~~~っ」

軽装で居たら、肌着から覗く俺の腹が気になったらしい。
『ちょっと腹筋触らして』なんて言うのを軽い気持ちで許可したら、これだ。

「いい加減やめんか、コラ」
「あーん、隠さないでよ」

触る、というくらいだから、もっとこう、ペタペタ触れるのかと思っていた。

…世間一般ではこれをくすぐりと言う。
ついでに其処は腹筋じゃなくて脇腹だ。

「俺で遊ぶな莫迦猫」
「遊んでないよう、ケチ」
「ケチで結構」
「かわいくないの」
「俺が可愛くてたまるか」

名残惜しげに纏わり付いてくるのを、身をよじって何とか避ける。
体格差のお陰で助かった。
リーチに利がある分、頭を押さえてしまえば俺の勝ちだ。
その短い腕ではもう届くまい。

じたばたするのを止めたので、諦めたんだと判断した。
再び変な気を起こされる前に、何か羽織ろうと背を向けた。
…間に合わなかった。

───油断しているところに背後からいきなりタックルは、反則だろう。

「ちょ、」
「お腹がイヤなら肩で我慢したげる」

今度は何をされるのかと軽く戦慄したら、短い手足がしがみ付いてきて、肩…と言うか背中側の首筋近くに、軽い衝撃。
ああ………歯形付いたな、これは。

「……………。」
「にひひ」

振り向けば悪戯な子猫の顔。
躾がなってないにも程がある。

…まったく、質の悪い。

「この莫迦猫が…躾直してやる」
「うわわっ」

こいつが猫なら飼い主は俺だ。
異論は…あるだろうが、取り敢えず認めてやらない。

お前が悪いんだ、まったく。
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