Amatorio sfondo
【オライオンとアメジスト+ウォーラスとアグネス】
「………もっぺん言ってみろ」
「は?」
「…だから、もっぺん言ってみろ」
「いや、だから、お前達いつになったらくっつくのかなーって、あちこちみんな噂して…」
自分で訊いておきながら、皆まで言わせる前に遮るのは良くないって?
そんな事、今の俺には関係無い。
兎に角気に食わないので、年上の親友の口を噤ませる為に、利き手で思い切り殴りかかった。
…避けられた。
「ちょ、危なっ!?」
「避けるな避けるな、大人しく食らえ」
「無茶言うな!なんで俺が殴られなきゃならないんだよ!?」
まったく懲りないヤツだ。
その手の話題を出したら俺がこうなるのを知ってる筈なのに、全然学習する気配が無い。
その代わりに避けスキルだけ上がっていくのが、微妙に悔しかったりする。
「だから俺らはそんなんじゃねえって、お前、何度言ったらわかるんだよ」
「そうは言ってもさ、アレだ、傍から見てるとこう、もどかしいっつーかなんつーか…」
その科白ももう聞き飽きた。
だから余計なお節介なんだっつーの。
確かにアイツの事は可愛く思ってるけど、義理とはいえ妹だぞ?
そういう対象になる訳が………。
…無い、と言い切れない自分が多少、恐ろしかったりする。
何はともあれムカついたので、その辺に転がっていた掃除用のブラシを拾って更なる攻撃態勢へと移行する。
「タンマ、タンマ!それは洒落にならんって!!」
「知るか!」
脳天ブチ抜いたろか、と振りかざした柄がヤツの額へ一直線…となる寸前に、後頭部に向かって物凄い勢いで飛んできた風呂桶が見事に直撃し、俺は床と仲良くなる羽目になった。
…此処が風呂場だってのを、軽く忘れてた。
「お前らうるせえ!!響くんだからちったあ静かにしろ!!」
目の前を幻の星がちらちら過ぎる中でそんな怒鳴り声を聞く。
出来上がったたんこぶを押さえながら抗議しようと顔を上げたら、ついさっき遠距離から桶を投げつけてきたばかりのフリッツがいつの間にかすぐそこで仁王立ちしていて、同じく言い訳をしようとしていたであろうウォーラス共々、渾身の拳骨をお見舞いされた。
※※※
「相変わらず仲良しね」
「あれは仲良しって言うのかしら…」
分厚い壁を挟んだ向こう側から、何やらがちゃがちゃと元気な声がして。
…天井との間に少し隙間があるのを、知らない筈は無いと思うのだけれど。
「きっと私達がこっちに居るの、知らないのね」
向こうに居る同僚と、すぐ横でシャワーを浴びている年下の上司の相変わらずな関係を、こそばゆくも可愛くも思う。
「…メディアがシーデーをサウナに引っ張り込んでくれてて助かったわ」
そうね、とそこは同意しておく。
好奇心旺盛な彼女が居たら、何を訊かれるかわかったものじゃない。
それは決して嫌な事ではないだろうけれど、非常にややこしい事になるのは目に見えている。
「…あなたはどうなのよ、アグネス」
「私?私はどうもこうもないわよ」
「あ、そう…」
普段はどこか大人びていて、そのきっぱりした性格がどことなく男勝りにも感じさせる彼女の、こういうふとした時にする仕草が年相応で本当に可愛い。
今日も彼女はご自慢の髪の手入れに精を出す。
「(…まったく、二人とも素直じゃないんだから)」
自分はどうか、と話を振られても、本当にどうもこうもないのだから困る。
今のところ、私自身にその気が更々無いのだから。
…取り敢えず、お風呂から上がったら、色々あって胃を痛めているであろうもう一人の同僚に薬でも持っていってあげようかな、と思った。
「………もっぺん言ってみろ」
「は?」
「…だから、もっぺん言ってみろ」
「いや、だから、お前達いつになったらくっつくのかなーって、あちこちみんな噂して…」
自分で訊いておきながら、皆まで言わせる前に遮るのは良くないって?
そんな事、今の俺には関係無い。
兎に角気に食わないので、年上の親友の口を噤ませる為に、利き手で思い切り殴りかかった。
…避けられた。
「ちょ、危なっ!?」
「避けるな避けるな、大人しく食らえ」
「無茶言うな!なんで俺が殴られなきゃならないんだよ!?」
まったく懲りないヤツだ。
その手の話題を出したら俺がこうなるのを知ってる筈なのに、全然学習する気配が無い。
その代わりに避けスキルだけ上がっていくのが、微妙に悔しかったりする。
「だから俺らはそんなんじゃねえって、お前、何度言ったらわかるんだよ」
「そうは言ってもさ、アレだ、傍から見てるとこう、もどかしいっつーかなんつーか…」
その科白ももう聞き飽きた。
だから余計なお節介なんだっつーの。
確かにアイツの事は可愛く思ってるけど、義理とはいえ妹だぞ?
そういう対象になる訳が………。
…無い、と言い切れない自分が多少、恐ろしかったりする。
何はともあれムカついたので、その辺に転がっていた掃除用のブラシを拾って更なる攻撃態勢へと移行する。
「タンマ、タンマ!それは洒落にならんって!!」
「知るか!」
脳天ブチ抜いたろか、と振りかざした柄がヤツの額へ一直線…となる寸前に、後頭部に向かって物凄い勢いで飛んできた風呂桶が見事に直撃し、俺は床と仲良くなる羽目になった。
…此処が風呂場だってのを、軽く忘れてた。
「お前らうるせえ!!響くんだからちったあ静かにしろ!!」
目の前を幻の星がちらちら過ぎる中でそんな怒鳴り声を聞く。
出来上がったたんこぶを押さえながら抗議しようと顔を上げたら、ついさっき遠距離から桶を投げつけてきたばかりのフリッツがいつの間にかすぐそこで仁王立ちしていて、同じく言い訳をしようとしていたであろうウォーラス共々、渾身の拳骨をお見舞いされた。
※※※
「相変わらず仲良しね」
「あれは仲良しって言うのかしら…」
分厚い壁を挟んだ向こう側から、何やらがちゃがちゃと元気な声がして。
…天井との間に少し隙間があるのを、知らない筈は無いと思うのだけれど。
「きっと私達がこっちに居るの、知らないのね」
向こうに居る同僚と、すぐ横でシャワーを浴びている年下の上司の相変わらずな関係を、こそばゆくも可愛くも思う。
「…メディアがシーデーをサウナに引っ張り込んでくれてて助かったわ」
そうね、とそこは同意しておく。
好奇心旺盛な彼女が居たら、何を訊かれるかわかったものじゃない。
それは決して嫌な事ではないだろうけれど、非常にややこしい事になるのは目に見えている。
「…あなたはどうなのよ、アグネス」
「私?私はどうもこうもないわよ」
「あ、そう…」
普段はどこか大人びていて、そのきっぱりした性格がどことなく男勝りにも感じさせる彼女の、こういうふとした時にする仕草が年相応で本当に可愛い。
今日も彼女はご自慢の髪の手入れに精を出す。
「(…まったく、二人とも素直じゃないんだから)」
自分はどうか、と話を振られても、本当にどうもこうもないのだから困る。
今のところ、私自身にその気が更々無いのだから。
…取り敢えず、お風呂から上がったら、色々あって胃を痛めているであろうもう一人の同僚に薬でも持っていってあげようかな、と思った。