前半殆ど名前出てきません。スミマセン
恋をするまで
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「あのさぁ、そう言えば名前ってー」
「あれぇ、あんた真坂さん?」
やっとタイミングを見計らって名前を聞いたのに、遮られておそ松はギョッとする。それが先程まいてきた兄弟の声だから尚更だ。この、気怠そうな声。
「……と、おそ松兄さんか。」
「視界に入るの遅くなぁい?……一松、悪いけどお前に捕まる気はないからな。」
おそ松が一松の前に彼女を守るように立ち塞がる。
「いや、もう別に。兄さんが誰といようが、関係ないし。ノリで追いかけただけだし。……それにどうせフラれたんでしょ?」
公園でおそ松が知らない女の子をマスクで隠すようにした後、キスをしているように見えた。ガンと殴られたような衝撃的映像だった。後はもう我に返るまで、ひたすらにおそ松コロスと追いかけた。他のカラ松を抜いた兄弟たちも同じだろう。
「はぁ⁉︎フラれてねーし!これから仲良くおでん食べに行くんだもんねー!」
へへーんと一松が声をかけた真坂の肩を抱く。
「……変装の意味は?」
真坂がおそ松に耳打ちすればしまったー!と慌てていた。
一松を見れば、無表情に佇んでいる。おそ松が声をかけても頬を抓ってもネコを見せても何の反応も示さない。完全に固まっている。
「……ねぇ、真坂さん。コイツと知り合いだったの?」
(あの公園の相手が真坂さん?一緒にネコ見てたあの?……俺に近づいたのはおそ松兄さんと仲良くなりたかったから?)
やっと口を開いたかと思えば少し怒っているようだった。
「いえ、昨日出会った顔見知り程度です」
「ウソだね。だって……キ、キス。してたじゃん……」
(昨日の今日だったら即落ちじゃねーか!クソビッチが)
「……あれは、ウソでひゅた」
噛んだ。マスク越しに口元を押さえ、赤くなっている真坂の隣で、おそ松が爆笑している。一松はそれが面白くなかった。
「チッ……もういい。」
怒りと諦めが入り混じった感情が溢れどうでも良くなった。
こんなゴミみたいな存在は消さなきゃ。隠すようにフードを深く被ると踵を返し歩き出す。
「まって!」
フードを掴んでいたその手の上から、さらに手が重ねされていた。顔を覗き込まれてとても近かった。
「もしかして猫のお兄さん?」
マスクを取りながらホラ私とでも言いたげだった。バカじゃねーの、最初から分かってたよ名前呼んだじゃねーか。
頭の中ではスラスラと言葉が出るのに、発声が困難になっていた。
「……ゔん」
(覚えててくれたんだ)
あの日から外に出る度に、会うのを期待している自分がいた。
少し涙声での返事を悟られまいと視線を逸らす。
「えー。何々、お前らの方こそ知り合いだったの?オレが1番だと思ってたのにー、ガッカリー。」
おそ松の中でカラ松の存在がすでに消えていた。
「でもさー。オレの顔見て一松を思い出さない何て、大して仲良くもないんでしょ?ね?オレとのが仲良いもんねー」
そういうと、おそ松は真坂の背後まで来て両肩を掴み、一松から距離をとらせる。ムッとした一松と目が合えば、かすかに火花が散った。
「真坂さ……ちゃんは猫好き同士の、とと友達、だし。付き合いだって長い。もう三週間くらい。たまに、会うし」
「友達ー?友達なんて要らないって言ってたじゃん。確かにオレより出会いは少し早いけど、たまに、会う。んでしょ?それって友達なのかなー?」
ニヤニヤと追及するおそ松に、一松は言葉を飲んだ。確かにと、思ってしまった。
「友達だよ」
はっきりとした物言いに二人がそちらを振り向く。真坂は一松へ目線を合わせた。
「会う時はフード被ってたから、顔覚えてなくてゴメン。でも、猫のお兄さんは友達。……になりたい、です。」
照れながら真坂が手を差し出すと、一松も自然とその手をとっていた。
「お、おおお願い、します。友達、から。……一松です」
こちらも盛大に照れて顔を伏せながらの握手となった。
(あれぇ?何これオレが悪いみたいになってる?)
おそ松は予想外の展開に戸惑う。
(あの一松が自然に女の子と握手とか、全然普通じゃない。これは、もしかすると……)
「……落ちたの?」
真坂に聞こえないように耳元で囁くと一松がビクッと反応する。
「別に……んなんじゃ、ないし。」
「ふーん。友達《から》ねぇ。へーぇ?」
ニヤニヤ顔がムカついたのか、一松がおそ松の胸ぐらを掴む。眠そうな目に力が入り拳が握られる。
「ちょちょちょ!冗談だから!マジになるなって!ゴメンお兄ちゃんが悪かった!」
フーッ!と猫のように髪を逆立てていた一松はスッとおそ松を離した。
「……真坂ちゃん行こう。」
真坂は二人を見比べてから一松の後へと続いた。
「あ!なんだよ裏切り者ー!最初にデートしてたのはオレだかんな!」
おそ松が起き上がり、前の二人に追いつく。一松は上機嫌だし、真坂は楽しそうだった。二人きりでは無くなったが三人でまたおでん屋へと向かった。