好きって言うまで、あと一歩


🌱side


朝の教室は、やわらかい光で満ちていた
窓から差し込む日差しがまぶしくて、私はノートに視線を落としたまま、そっと前の席を見た
そこにいるのは、ほのちゃん
まりなたちと話しながら笑うその横顔が、朝の光に溶けて、きらきらして見える

(……かわいい)

思った瞬間、胸がぎゅっとなる

その視線に気づいたのか、ほのちゃんがくるりと振り返った

🧸「ひいちゃん?」

🌱「な、なに?」

🧸「また見てた」

🌱「み、見てないし」

🧸「今、見てたもん」

ほのちゃんは笑いながら席を立ち、私の机の横にしゃがむ

🧸「ねえ、ひいちゃんってさ」

🌱「なに?」

🧸「ほののこと見るとき、目やさしくなる」

🌱「…わからんよ、そんなの」

🧸「それに、顔も赤い」

🌱「…気のせい」

ほのちゃんはふふっと笑って、私の顔をのぞきこむ

🧸「でもね、ほのは好き」

🌱「…なにが」

🧸「そういうひいちゃん」

私の心臓は、どくん、と大きく跳ねた

(そんなの……反則……)





昼休み
並んで歩く廊下
私はほのちゃんの袖がすぐ隣にあるのに触れられなくて少しもどかしい

廊下を並んで歩きながら、私はずっと言えずにいた言葉を探していた

(“かわいい、好きだよ”って……言いたいだけなのに)

するとほのちゃんが、前を向いたまま言う

🧸「ねえ、ひいちゃん」

🌱「なに?」

🧸「今日さ、一緒に帰ろ」

🌱「…うん」

そのほのちゃんのひと言で胸がぽっと温かくなる

沈黙の中、歩幅が自然とそろう
肩と肩が、ほんの少し近い





夕方、帰り道
空はピンクとオレンジの間みたいな色をしていた

🧸「ほのな」

🌱「うん?」

🧸「ひいちゃんと帰るの、好き」

🌱「…私も」

🧸「ほんと?」

🌱「うん」

ほのちゃんは嬉しそうに目を細める

🧸「それだけ?」

私は、立ち止まって深く息を吸う
言うなら今しかない

🌱「…それだけじゃない」

ほのちゃんが振り返る

🌱「ほのちゃんの笑った顔も」

🧸「うん」

🌱「眠そうな顔も」

🧸「うん」

🌱「ちょっと拗ねるとこも」

🧸「…ちょっとってなんやねん笑」

🌱「全部、かわいい」

ほのちゃんの頬が、ゆっくり赤くなる

🧸「…急に何」

🌱「言わないと…ずっと言えなくなりそうで」

風が吹いて、ほのちゃんの髪が揺れる

🌱「私、ほのちゃんが好き」

しばらく沈黙
それから、ほのちゃんは小さく笑った

🧸「…ひいちゃんさ」

🌱「ん?」

🧸「遅いよ」

🌱「え?」

🧸「ほのもひいちゃんが好き」

🌱「…ほんと?」

🧸「ほんと」

ほのちゃんは一歩近づく

🧸「ひいちゃんと話すとき、ドキドキして」

🌱「…私も」

🧸「一緒にいると、安心して」

🌱「…私も」

二人の距離は、もう指一本ぶんもない

🧸「ねえ、ひいちゃん」

🌱「なに?」

🧸「手、つないでいい?」

🌱「うん」

そっと、指が触れる
からめるみたいに、ゆっくりつながる

🌱「あったかい、ほのちゃんの手」

夕焼けの中、並んで歩き出す

影がひとつになって、道に伸びる


ほのちゃんがいるだけで

胸がいっぱいになる

世界はいつもよりやさしくて、甘くて、

二人の帰り道は
恋のはじまりの色をしていた


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