ロ兄術廻戦
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ビジネスホテルではあるが、地下に大浴場があるのは有難い。
風呂上がり、持参したハーフパンツとTシャツに袖を通していたら、あとから出てきた七海はロッカーから浴衣を取り出していた。七海ってこういう所の浴衣使うタイプなんだな。
しかしどうにも暑い。火照った身体を冷ましたくて扇風機の前に立つ。髪は最近短髪にしたのでドライヤー要らずだ。とても涼しい。
少し経ってから俺と補助監督は七海の部屋に詰めかけ、明日の任務の段取りを確認した。補助監督は車内でひたすら待機。俺と七海は帳の中を二手に分かれて呪霊を捜索。七海には発見次第俺の式神を召喚するように伝えた。確認が終わり、補助監督は高専に経過報告を行いたいと退室した。
「平手」
「どうした」
「私はまだ平手を諦めていない」
俺も部屋で呪具の手入れでもしようかと立ち上がったところ、七海に腕を引かれベッドに押し倒された。
七海が高専生の頃から俺に好意を寄せているのは知っていた。というか、当時何度も告白された。灰原にも、先輩達にも、もう諦めて付き合えと言われたが、俺は頑なに首を縦には振らなかった。だって術師が誰かと添い遂げるなんて不可能に等しいから。どちらかが先に死ぬ世界で、どちらかがひとり取り残されるのは堪らなく悲しい。もしそれが俺や七海だったらと考える度に胸が苦しくなって、七海には良い返事を返せなかった。
俺だって七海と同じ気持ちなのに。
伝えられない、伝えたくない。
「七海もうやめろよ、そういうの」
「嫌だ」
「駄々っ子かよ」
「平手の前だから」
「お前な…」
七海を遠ざけようと胸を押したが、びくともしない。
七海は俺の前だとやけに大人しく、甘える。決して他人には見せない姿。そういった姿を俺だけが知っているという、ちょっとした優越感は無くはない。だが、やはり先のことを考えるとどうしても七海を退けたくなる。
たちまち七海は俺の事を抱きすくめた。大浴場に置かれていたボディソープの香りが鼻をかすめる。
「私たちの未来なんて、どうせ分かりきってる。平手はそれが辛いんだろう…なあ、流星。もう良いだろ」
「…っ!!」
七海が耳元で囁いた。
「私と、今を生きてくれ」