イ反面ライダーEX-AID
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『もうおれ外、出る』
「ファンの子達、出待ちしてるんじゃない?もう少しあとから外に出た方がいいよ」
咥えていた煙草を吸殻入れにねじ込んで裏口から出ていこうとする流星に、ボーカルは声をかけた。
『知らない』
サインとかそういうの応えなくていいからせめて愛想だけは良くしろと、ボーカルは去りゆく流星の背中に言葉を投げかけた。
「流星ホント自由人な。そして無口。今日のライブ、口開いたのコーラス部分だけじゃないの?」
「一言くらいは喋ってたぞ」
「カウントダウンも言ってたな」
ボーカルとギターとベースは口々にその場にいない流星の事を揶揄う。別に本気で揶揄っている訳ではなく、本人が目の前に居たとしても口に出しているだろう。要は流星はいじられキャラなのだ。
ライブハウスの裏口を抜けた流星は案の定出待ちのファンに声をかけられた。
流星がついこの間メンバーから聞いた話だと、ファンの中でも流星は「出待ち対応しない」と有名らしい。それならば今日だって何も反応しなくていいだろう。今日に限らずいつもしてないけれど。
マスクをつけた流星は無表情で出待ちのファンをすり抜け歩く。
ステージにいた時と同じカジュアルスーツで街に溶け込めるだろうか。
向かったのは診療所だった。
数ヶ月前のステージリハ中、骨にヒビが入り駆け込んだ診療所。今日はヒビの経過観察の日なのだ。今日と明日のライブが地元開催で良かった。このライブハウスからなら、診療所は歩いて行ける距離にある。
『よう』
「…もっとまともな挨拶はできねえのか」
主治医はいつものように怠そうにおれを迎え入れてくれた。
『こんばんは』
「こんばんは。なんで今日スーツなんだ」
『ライブやってたから』
「渋いバンドだな」
『いいだろ』
「道理で向こうの通りにやたらと女子が並んでた訳だ」
『見に来ればよかったじゃん』
「俺そんな暇じゃねえから」
『あっそ。早く診てよ、花家センセ』
「それが受診する態度かよ」
『お願いします先生』
暫く見てもらったが、概ね良好だそうだ。
「日常生活ではまだ無茶すんなよ、例えば…ドラムとか」
『毎日してる』
「だろうな。早く治したいなら明日のライブ以降は毎日来い」
『そしたら治る?』
「ああ、すぐ治る」
「んな訳ないじゃん。大我が流星さんに会いたいだけだよ」
サラッと言ってのけたのは出先から帰ってきた西馬ニコだった。
「ニコ!人の診察覗くなって言ってんだろ」
「今日流星さん来るって大我ウキウキしてたから、あたしも気になってさ。てかさー流星さんファンに愛想つかされちゃうよ」
『え?ニコちゃん出待ちしてたの?』
「ニコ…ライブ行ってたのか」
「当たり前じゃん。明日も行くよ」
『ありがとう』
「あたしボーカルのファンなの」
『あっそ』
「…あれ!?流星さん恋人いるの!?」
ニコの目に留まったのは流星の首から下げられた、リングの通されたネックレス。
診察のためにジャケットを脱ぎネクタイを外し、シャツのボタンを開けていたため気付いたのだろう。
『ああ、これ?結婚指輪』
ボタンをかけネクタイを締め、ネックレスチェーンからリングを抜き取り指に填めた。
「そうなの!?流星さん奥さんいるの!?」
『うん。おれ既婚者だけど』
「知らなかった…」
『公表してないから。ファンの子達の印象悪いから外せって、ボーカルから言われていつも外してここに着けてる』
「だってさ、大我」
「フン」
大我はスタスタと診療室を出ていってしまった。
残ったのは流星とニコだけ。
『この事言いふらすなよ』
「うん、言わない」
『じゃあおれ帰るから』
「安静にしてね」
『大我どこ?診察代払いたいんだけど』
「あー…」
何故かニコは言葉を濁した。
『なんだよ』
「お腹でも壊してトイレにでも籠ってんじゃない?あたしが代わりに会計しておく」
『じゃあこれ…よろしく』
「明日のライブ楽しみにしてる」
『ああそうだ…これ花家センセに渡しといて。明日の招待チケット』
「わかった。じゃあね、お大事に」
診療所を出ると、もうとっぷりと夜だった。
歩ける距離ではあるが距離はあるためタクシーをとめてホテルへ帰ることにする。
「流星さん帰ったよ」
しばらくして大我の消えた方向にケラケラとニコが言う。
「失恋だねー、大我」
「うっせえ」
「ファンの子達、出待ちしてるんじゃない?もう少しあとから外に出た方がいいよ」
咥えていた煙草を吸殻入れにねじ込んで裏口から出ていこうとする流星に、ボーカルは声をかけた。
『知らない』
サインとかそういうの応えなくていいからせめて愛想だけは良くしろと、ボーカルは去りゆく流星の背中に言葉を投げかけた。
「流星ホント自由人な。そして無口。今日のライブ、口開いたのコーラス部分だけじゃないの?」
「一言くらいは喋ってたぞ」
「カウントダウンも言ってたな」
ボーカルとギターとベースは口々にその場にいない流星の事を揶揄う。別に本気で揶揄っている訳ではなく、本人が目の前に居たとしても口に出しているだろう。要は流星はいじられキャラなのだ。
ライブハウスの裏口を抜けた流星は案の定出待ちのファンに声をかけられた。
流星がついこの間メンバーから聞いた話だと、ファンの中でも流星は「出待ち対応しない」と有名らしい。それならば今日だって何も反応しなくていいだろう。今日に限らずいつもしてないけれど。
マスクをつけた流星は無表情で出待ちのファンをすり抜け歩く。
ステージにいた時と同じカジュアルスーツで街に溶け込めるだろうか。
向かったのは診療所だった。
数ヶ月前のステージリハ中、骨にヒビが入り駆け込んだ診療所。今日はヒビの経過観察の日なのだ。今日と明日のライブが地元開催で良かった。このライブハウスからなら、診療所は歩いて行ける距離にある。
『よう』
「…もっとまともな挨拶はできねえのか」
主治医はいつものように怠そうにおれを迎え入れてくれた。
『こんばんは』
「こんばんは。なんで今日スーツなんだ」
『ライブやってたから』
「渋いバンドだな」
『いいだろ』
「道理で向こうの通りにやたらと女子が並んでた訳だ」
『見に来ればよかったじゃん』
「俺そんな暇じゃねえから」
『あっそ。早く診てよ、花家センセ』
「それが受診する態度かよ」
『お願いします先生』
暫く見てもらったが、概ね良好だそうだ。
「日常生活ではまだ無茶すんなよ、例えば…ドラムとか」
『毎日してる』
「だろうな。早く治したいなら明日のライブ以降は毎日来い」
『そしたら治る?』
「ああ、すぐ治る」
「んな訳ないじゃん。大我が流星さんに会いたいだけだよ」
サラッと言ってのけたのは出先から帰ってきた西馬ニコだった。
「ニコ!人の診察覗くなって言ってんだろ」
「今日流星さん来るって大我ウキウキしてたから、あたしも気になってさ。てかさー流星さんファンに愛想つかされちゃうよ」
『え?ニコちゃん出待ちしてたの?』
「ニコ…ライブ行ってたのか」
「当たり前じゃん。明日も行くよ」
『ありがとう』
「あたしボーカルのファンなの」
『あっそ』
「…あれ!?流星さん恋人いるの!?」
ニコの目に留まったのは流星の首から下げられた、リングの通されたネックレス。
診察のためにジャケットを脱ぎネクタイを外し、シャツのボタンを開けていたため気付いたのだろう。
『ああ、これ?結婚指輪』
ボタンをかけネクタイを締め、ネックレスチェーンからリングを抜き取り指に填めた。
「そうなの!?流星さん奥さんいるの!?」
『うん。おれ既婚者だけど』
「知らなかった…」
『公表してないから。ファンの子達の印象悪いから外せって、ボーカルから言われていつも外してここに着けてる』
「だってさ、大我」
「フン」
大我はスタスタと診療室を出ていってしまった。
残ったのは流星とニコだけ。
『この事言いふらすなよ』
「うん、言わない」
『じゃあおれ帰るから』
「安静にしてね」
『大我どこ?診察代払いたいんだけど』
「あー…」
何故かニコは言葉を濁した。
『なんだよ』
「お腹でも壊してトイレにでも籠ってんじゃない?あたしが代わりに会計しておく」
『じゃあこれ…よろしく』
「明日のライブ楽しみにしてる」
『ああそうだ…これ花家センセに渡しといて。明日の招待チケット』
「わかった。じゃあね、お大事に」
診療所を出ると、もうとっぷりと夜だった。
歩ける距離ではあるが距離はあるためタクシーをとめてホテルへ帰ることにする。
「流星さん帰ったよ」
しばらくして大我の消えた方向にケラケラとニコが言う。
「失恋だねー、大我」
「うっせえ」