イ反面ライダーEX-AID
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『すみません、表の貼り紙見たんですけど…』
ある日さっぱりとした短髪に黒縁眼鏡、黒いポロシャツにジーンズという、見た目は大学生程の男が大我の診療所に現れた。
ニコに任せたら雑貨屋のポップの如く可愛げに装われ肝心の募集要項が読みづらくなり、その日のうちに大我の手書きのものへと貼り替えた「医療事務募集」の張り紙。やはりシンプルが勝る。
なんだかニコに勝った気になり、大我はヨシ、と心の中でガッツポーズをした。
早速診察室へ招き入れ、面接を行う。今すぐにでも雇い入れたかった大我は、ニコをここで雇うために百均で適当に買った履歴書の余りがあったことを思い出し、デスクの引き出しから引っ張り出してここで書くように促すと、既に用意があるらしく、それを受け取った。
「平手流星さん」
『はい』
「あ、いや、履歴書読み上げただけ」
『すみません』
照れた様に俯く平手は幼げがあり、初々しい。生まれ年から見て年齢は25歳なので童顔か。大我は自身の顎を撫でながら履歴書をさらに眺めた。
「前職である内科の医療事務を辞めたのはなぜだ?」
『院長が開業医だったのですが、年齢の事もあって先日閉院したんです。それで院長先生の方から貴院の医療事務募集を見かけたとの情報を頂いたので、本日参りました』
近所の病院が閉院したと風の噂で聞いていたが、あそこの病院だったのか。
前職は近所でも評判の良かった内科で、資格欄も申し分ない。加えて通勤も自転車移動圏内なので特に問題は無いだろう。
「分かった。採用だ、明日から来てくれ」
翌日から受付に立った流星。午後診療のため出勤してきたニコは驚き、すぐさま診療室に飛び込んだ。
「大我あの人誰!?」
「昨日雇った医療事務員。平手」
「歳は!?」
「ああ見えて25歳だ」
「若く見える…」
「前職も医療事務だから、受付で分からないことがあったらアイツを頼れ。そういう訳で、よろしく」
ニコは腑に落ちないながらも大人しく受付に戻ると、平手の隣に座った。
『平手流星です。西馬さんのことは先生から伺いました。今日からよろしくお願いします』
「よろしくお願いします。あたし歳下なんで敬語いらないですよ」
『…わかった』
簡素な自己紹介の後、はにかんだ流星の顔はやはり幼く、ニコは同い年かのような錯覚に陥る。
「…あたしも敬語なしでいい?」
『いいよ』
その日は予約無しの飛び込み患者もおらず、加えて流星の手際も慣れた様子であり時間どおりに診察を終えることができたことから、ニコの提案で近所の居酒屋にて流星の歓迎会を開くこととなった。最奥の座敷席に通された一行は適当に飲み物とつまみを頼み、とりあえず乾杯の後に改めて自己紹介をし合った。
『…え、じゃあ西馬さんはここで働きながらプロゲーマーやってんの!?二足のわらじじゃん』
「二足のわらじうける。てかあたしのことニコって呼んでよ、あたしもそうするから」
『おれ流星』
天然でひねりの効いたワードを繰り出す流星にニコはケタケタと笑っており、雰囲気は悪くない。また一段と診療所の明るさが上がってしまうなと自嘲気味に笑いながらも、大我は二人にツッコミを入れた。
「お前らタメかよ」
『あはは、初日から打ち解けちゃいました。先生グラス空いてますけど、なんか飲み物頼みますか?』
「同じやつを頼む」
『生ですね…店員さんすんません!生おかわり!!』
大我の頼んだ二杯目が届く頃、ニコと流星は大我が酒に弱いことを知った。ニコが心配そうに大我を見つめる。
「大我まだ一杯飲んだだけだよね?顔赤いよ?」
「うるせえ。そういう日もある」
壁にもたれかかってしまった大我は、通常時よりもかなりふわふわとした口調だった。
「つーか、ニコ。お前酒飲んでないよな?」
「未成年だから当たり前じゃん」
「なら良し」
「流星、この人時々こういう父親くさいこと言うから気をつけてね」
『先生かわいいですね』
流星はふふ、と笑うと横でふわふわとしている大我を眺めた。すると大我は珍しく頬を染めたのだった。ニコはいつもとは違う大我の一面を見て驚き、思わず身を乗り出し向かいに座る大我の肩を掴んで揺すった。
「大我ホントに大丈夫!?」
「おい揺するな、吐く…」
『先生、疲れが溜まってるんじゃないですか?そんな時に酒なんか入れちゃダメっすよ』
なおも肩を掴むニコとは対照的に、大我の隣に座っている流星は大我の背中をさすった。
しばらくしてから、流星はおもむろに立ち上がった。
『ちょっとおれ外で煙草吸ってきます』
店の前に備え付けられた煙草スペースでの喫煙を終え席に戻ると、大我はいくらか酔いが覚めたようで、漬物の盛り合わせを齧っていた。だがまだ少し焦点は定まっていない。対するニコは酔っ払った大我に興味をなくしたのか、スマホゲームに熱中していた。
『ニコ、先生いつもこんな感じなの?』
「お酒飲んだところ初めて見たからびっくりって感じ」
『そっか。じゃあニコも未成年だし、先生もこんな感じだから長居はやめようか』
そう言って流星は店員さんにおあいそ、と声を掛け、カードを切った。
大我を肩に担ぎ、店先でまた明日と言ってニコと別れた流星は、診療所へと歩を進めていた。
『吐き気、まだありますか?』
「いや、大丈夫だ」
『それなら良かったです。それにしても先生、思ったより華奢ですね。ちゃんと食ってますか?』
「食ってる。つーか平手煙草やめろ、身体に悪い」
『先生もニコみたいに、おれのこと名前で呼んでくださいよ』
「流星。いいか、煙草やめろよ」
『考えときます』
暫く歩くと、診療所の裏口に着く頃には大我は自力で歩けるようになっていた。裏口のドアを開けながら大我は呟く。
「上がっていけ。んで飲み代返すから教えろ」
『レシート貰ってないし、忘れちゃいましたよ』
「じゃあこれ持っとけ」
そう言って大我は財布から三万円を取り出し、流星に握らせた。
『いやさすがにこんなに飲み食いしてませんって』
「…迷惑料だと思って受け取れ」
簡易ベッドにどかりと腰をおろした大我はそのまま大きな欠伸をして寝転がった。今夜は月が大きく見える。ということはあれが最近ニュース番組で見たスーパームーンだろうか。大我はぼんやりと窓の月を眺めた。
『迷惑じゃなかったですよ。むしろ先生にもかわいいとこあるんだなって、思いました』
「流星、先生呼びやめろ」
『じゃあ花家さん?』
「バカ、名前だ」
『バカってなんですか…大我さん?』
「良し。その調子で煙草もやめろ」
『えー…煙草は無理です』
「俺は禁煙外来もやってんだよ」
『いやゲーム病の治療だけでしょう。そんな見え透いた嘘つかないでください』
「うるせえ。毎日キスしてやるから」
『大我さんやっぱまだ酔ってますよね?キスは甘んじて今からでも受け入れますが、煙草はやめませんからね』
そう言って流星は寝転がる大我に覆い被さり、キスを落とした。
「…苦えな」
翌日以降、大我は流星とニコに一日一本棒付きキャンディーを支給することになる。
「大我なにコレ」
「流星の禁煙用。もう苦いのは懲り懲りだからな」
「???」
ある日さっぱりとした短髪に黒縁眼鏡、黒いポロシャツにジーンズという、見た目は大学生程の男が大我の診療所に現れた。
ニコに任せたら雑貨屋のポップの如く可愛げに装われ肝心の募集要項が読みづらくなり、その日のうちに大我の手書きのものへと貼り替えた「医療事務募集」の張り紙。やはりシンプルが勝る。
なんだかニコに勝った気になり、大我はヨシ、と心の中でガッツポーズをした。
早速診察室へ招き入れ、面接を行う。今すぐにでも雇い入れたかった大我は、ニコをここで雇うために百均で適当に買った履歴書の余りがあったことを思い出し、デスクの引き出しから引っ張り出してここで書くように促すと、既に用意があるらしく、それを受け取った。
「平手流星さん」
『はい』
「あ、いや、履歴書読み上げただけ」
『すみません』
照れた様に俯く平手は幼げがあり、初々しい。生まれ年から見て年齢は25歳なので童顔か。大我は自身の顎を撫でながら履歴書をさらに眺めた。
「前職である内科の医療事務を辞めたのはなぜだ?」
『院長が開業医だったのですが、年齢の事もあって先日閉院したんです。それで院長先生の方から貴院の医療事務募集を見かけたとの情報を頂いたので、本日参りました』
近所の病院が閉院したと風の噂で聞いていたが、あそこの病院だったのか。
前職は近所でも評判の良かった内科で、資格欄も申し分ない。加えて通勤も自転車移動圏内なので特に問題は無いだろう。
「分かった。採用だ、明日から来てくれ」
翌日から受付に立った流星。午後診療のため出勤してきたニコは驚き、すぐさま診療室に飛び込んだ。
「大我あの人誰!?」
「昨日雇った医療事務員。平手」
「歳は!?」
「ああ見えて25歳だ」
「若く見える…」
「前職も医療事務だから、受付で分からないことがあったらアイツを頼れ。そういう訳で、よろしく」
ニコは腑に落ちないながらも大人しく受付に戻ると、平手の隣に座った。
『平手流星です。西馬さんのことは先生から伺いました。今日からよろしくお願いします』
「よろしくお願いします。あたし歳下なんで敬語いらないですよ」
『…わかった』
簡素な自己紹介の後、はにかんだ流星の顔はやはり幼く、ニコは同い年かのような錯覚に陥る。
「…あたしも敬語なしでいい?」
『いいよ』
その日は予約無しの飛び込み患者もおらず、加えて流星の手際も慣れた様子であり時間どおりに診察を終えることができたことから、ニコの提案で近所の居酒屋にて流星の歓迎会を開くこととなった。最奥の座敷席に通された一行は適当に飲み物とつまみを頼み、とりあえず乾杯の後に改めて自己紹介をし合った。
『…え、じゃあ西馬さんはここで働きながらプロゲーマーやってんの!?二足のわらじじゃん』
「二足のわらじうける。てかあたしのことニコって呼んでよ、あたしもそうするから」
『おれ流星』
天然でひねりの効いたワードを繰り出す流星にニコはケタケタと笑っており、雰囲気は悪くない。また一段と診療所の明るさが上がってしまうなと自嘲気味に笑いながらも、大我は二人にツッコミを入れた。
「お前らタメかよ」
『あはは、初日から打ち解けちゃいました。先生グラス空いてますけど、なんか飲み物頼みますか?』
「同じやつを頼む」
『生ですね…店員さんすんません!生おかわり!!』
大我の頼んだ二杯目が届く頃、ニコと流星は大我が酒に弱いことを知った。ニコが心配そうに大我を見つめる。
「大我まだ一杯飲んだだけだよね?顔赤いよ?」
「うるせえ。そういう日もある」
壁にもたれかかってしまった大我は、通常時よりもかなりふわふわとした口調だった。
「つーか、ニコ。お前酒飲んでないよな?」
「未成年だから当たり前じゃん」
「なら良し」
「流星、この人時々こういう父親くさいこと言うから気をつけてね」
『先生かわいいですね』
流星はふふ、と笑うと横でふわふわとしている大我を眺めた。すると大我は珍しく頬を染めたのだった。ニコはいつもとは違う大我の一面を見て驚き、思わず身を乗り出し向かいに座る大我の肩を掴んで揺すった。
「大我ホントに大丈夫!?」
「おい揺するな、吐く…」
『先生、疲れが溜まってるんじゃないですか?そんな時に酒なんか入れちゃダメっすよ』
なおも肩を掴むニコとは対照的に、大我の隣に座っている流星は大我の背中をさすった。
しばらくしてから、流星はおもむろに立ち上がった。
『ちょっとおれ外で煙草吸ってきます』
店の前に備え付けられた煙草スペースでの喫煙を終え席に戻ると、大我はいくらか酔いが覚めたようで、漬物の盛り合わせを齧っていた。だがまだ少し焦点は定まっていない。対するニコは酔っ払った大我に興味をなくしたのか、スマホゲームに熱中していた。
『ニコ、先生いつもこんな感じなの?』
「お酒飲んだところ初めて見たからびっくりって感じ」
『そっか。じゃあニコも未成年だし、先生もこんな感じだから長居はやめようか』
そう言って流星は店員さんにおあいそ、と声を掛け、カードを切った。
大我を肩に担ぎ、店先でまた明日と言ってニコと別れた流星は、診療所へと歩を進めていた。
『吐き気、まだありますか?』
「いや、大丈夫だ」
『それなら良かったです。それにしても先生、思ったより華奢ですね。ちゃんと食ってますか?』
「食ってる。つーか平手煙草やめろ、身体に悪い」
『先生もニコみたいに、おれのこと名前で呼んでくださいよ』
「流星。いいか、煙草やめろよ」
『考えときます』
暫く歩くと、診療所の裏口に着く頃には大我は自力で歩けるようになっていた。裏口のドアを開けながら大我は呟く。
「上がっていけ。んで飲み代返すから教えろ」
『レシート貰ってないし、忘れちゃいましたよ』
「じゃあこれ持っとけ」
そう言って大我は財布から三万円を取り出し、流星に握らせた。
『いやさすがにこんなに飲み食いしてませんって』
「…迷惑料だと思って受け取れ」
簡易ベッドにどかりと腰をおろした大我はそのまま大きな欠伸をして寝転がった。今夜は月が大きく見える。ということはあれが最近ニュース番組で見たスーパームーンだろうか。大我はぼんやりと窓の月を眺めた。
『迷惑じゃなかったですよ。むしろ先生にもかわいいとこあるんだなって、思いました』
「流星、先生呼びやめろ」
『じゃあ花家さん?』
「バカ、名前だ」
『バカってなんですか…大我さん?』
「良し。その調子で煙草もやめろ」
『えー…煙草は無理です』
「俺は禁煙外来もやってんだよ」
『いやゲーム病の治療だけでしょう。そんな見え透いた嘘つかないでください』
「うるせえ。毎日キスしてやるから」
『大我さんやっぱまだ酔ってますよね?キスは甘んじて今からでも受け入れますが、煙草はやめませんからね』
そう言って流星は寝転がる大我に覆い被さり、キスを落とした。
「…苦えな」
翌日以降、大我は流星とニコに一日一本棒付きキャンディーを支給することになる。
「大我なにコレ」
「流星の禁煙用。もう苦いのは懲り懲りだからな」
「???」