イ反面ライダーEX-AID
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「待って流星先生」
食堂前。
宝生永夢は慌てて目の前を過ぎてゆく監察医の腕を掴んだ。
『宝生先生。どうしたんです』
「そのアロハシャツって…」
『あー、これ。九条先生に借りたんだ。アロハシャツなんて初めて着る。楽でいいね』
なんでも、貴利矢さんから出勤早々シャツにコーヒーを零され、替えの服など持ち合わせていない平手先生は貴利矢さんの持ってきているお泊まりセットの中にあったアロハシャツを借りたらしい。
似合ってる?と、裾や襟を摘んでヒラヒラさせる平手先生はちょっとだけ楽しげだ。
「まあまあですね」
『手厳しいな』
なんだか悔しくて、適当な返事をした。
貴利矢さんの、平手先生に対する一方的な恋心から来る下心が薄らと見えたからだ。
『俺そろそろ休憩終わるからこの辺で』
「引き止めてしまってすみませんでした」
永夢と別れて自身のデスクへ戻ると、九条先生は懲りずに二人分のコーヒーを運んできた。
「お疲れ」
『また零すんじゃないでしょうね』
「もう零しませんー」
『はいはいそうですか…ありがとうございます』
俺はアイスで九条先生はホットだ。同勤して二年になるため、お互いの飲み物のタイプも熟知しているが、シュガースティックを大量に千切り、コーヒーに注ぐ先輩を見る度に俺は胸焼けを起こす。やはりコーヒーはブラックに限るな、と食後のコーヒーを愉しむ。
『九条先生。検案が14時から一件入ってます』
「だねえ。まだちょっと時間あるから、午前中の資料纏めて自分宛にメールしといて」
『了解です』
「そうだ。さっき食堂前で永夢と話してたっしょ」
『はい』
病院自体の造りが変わっていて、この部屋の窓からは食堂あたりの様子が見えるような構造になっている。恐らくそこから見ていたのだろう。
「何喋ってたの」
『別に。大したことじゃないです』
「教えてよー。監察医が小児科の奴と喋る事なんてそうそう無いし?自分にとっては大事なことかもしれないじゃん?」
『そうですかね?なんでアロハシャツ着てるのか聞かれて、九条先生にコーヒー零されたって返して…それだけですよ』
「…ふうん」
『似合ってる?って聞いたらまあまあって言われちゃって。ちょっと凹んでます』
「そんなことないって!!」
『ありがとうございます。なんか南国の医者みたいな気分になれますね、アロハシャツ』
「そう?」
『はい。メール送りますね』
流星がカタカタとパソコン操作をする様子を貴利矢は眺めていた。
やっぱり流星はアロハシャツが似合う。わざとコーヒーを零して正解だった。お陰でいわゆる彼服の様なシチュエーションもうまく作り出せたのだ。
『九条先生、メール送りました』
「ありがとさん」
『俺の顔、なんかついてます?』
「え?」
『え?って…さっきから見てますよね?』
「じ、自意識過剰なんじゃないの…」
あわてて取り繕うもなんだか余計に怪しさが際立つ。
『九条先生、ホント嘘つくの下手ですね?』
「なっ…!」
いやらしい顔で流星は嗤う。
人生で初めて言われたセリフだ。
「それは…流星にだけだ」
『ホントですかー?』
「CRじゃみんな騙されっから。マジで」
『ふぅん』
少しの恋心を打ち明けるも、興味なさげにあしらわれてはこちらの立場が危うい。もういっそ爆弾でも投下してしまおうか。
「す、好きな奴には隠し事したくねえから!」
『え?』
「だー!二回も言わせんな!!」
『よく聞こえなかったんで。もう一度』
向かいあわせのデスク。
パソコンからひょっこりと顔を出しニヤついている流星の姿。
「だから!流星の事が好きなんだって!」
『なーんだそういう事…もしかして宝生先生と何を話してたって聞いてきたのもヤキモチ?かわいいですねー』
「あー!うっせー!」
『九条先生、そろそろ14時なんで行きますよ』
「お前ホントそーゆートコな」
『仕事中なんで』
「よく言うぜ」
ほらほら、と流星は席を立ち検案へ向かう準備をしている。
『あ…でも』
流星は振り返って貴利矢を見つめた。
「?」
『アロハシャツ、いい匂いですね。好きになりそう』
「!!」
平手流星。
君もそういう爆弾発言はよしてくれないか。