イ反面ライダードライブ
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ひょっこり。原付の免許取りに来たついでに、兄である泊進ノ介の働きぶりを見にトクジョーカ、なるものを覗いてみた。掛けられたプレートからするにトクジョーカは特状課、と書くらしい。なるほど、言われるだけじゃ漢字って伝わらないもんだね。
『進ノ介~?』
少しだけ開けたドアから覗いて呼びかけてみた。
そうしたら、なんかいかにも刑事!な熱い人がドアへ寄ってきた。
「はいはいはいはーい...ってお前どこの誰だ?部外者は立ち入り禁止だっての」
『あの...と、泊進ノ介は居ませんか?』
「なんだ、アイツに用事か。で、どこの誰?」
『僕は泊流星と言います』
「...つーことは親族」
『はい、弟です。兄がいつもお世話になっております』
「いえいえ、こちらこそ...ってお前いくつだ?」
『18です』
「若いなあ」
『ははは』
「ちょっと待ってろ、えーと」
『あぁ、どっか出てるんならいいんです。免許取りがてら寄ってみただけなので』
「どこにも出てねぇよ。アイツ今食堂でメシ食ってるはずだから食堂行ったらどうだ?」
『そうですか、ありがとうございます。えっと...お名前聞いてもよろしいですか?』
「追田だ」
『追田さん。失礼しました。今後共兄を宜しくお願いします』
「あいよ、見つかるといいな、兄貴」
『はい、では』
「オウ」
特状課は思ったよりもずいぶんと狭い部署だった。
配置換えするととんでもねぇとこ行くんだな...
「高すぎず低すぎずな給料貰えたらいいなぁ」
「それ今流行ってんだろ?」
「いやだからあの...」
食堂はワイワイガヤガヤ。
ここで働いてる人とか、試験受けに来た人とか。端の方に座る兄を見つけたのは1分くらい経ってからのこと。こちらに背を向け椅子に座っていた。入口から中を覗いてキョロキョロしちゃったよ恥ずかしい。くそぅ、悔しいから、背後から驚かしてやろう。
『わっ。』
「おわっ!?......って...ん?流星?」
進ノ介はどうやら天ぷらそばを食べていた模様。汁が少し飛び散った。
『よう』
「びっくりした!!なんでいるんだよ!?」
『原付の免許取りに来た。ちなみに結果待ち』
「が、学ランで!?」
『うん、試験終わったら学校戻るから』
「試験一日かかるのに?」
『部活行きたいんだよ』
「あー、なるほどね」
『...』
「流星どうした?」
『その...隣に座ってる人は誰?』
「あー、紹介するわ。コイツは俺のバディ、詩島霧子、の...弟の詩島剛だ」
『へえ。進之介がよく話題にしてる詩島霧子さんの...。僕は泊流星です。兄がいつもお世話になっております』
「いえいえ。詩島剛っす。こちらこそうちの姉がお世話になっております。...なに。進兄さん、ねーちゃんのこと話題にしてるんだ?」
「わっ、流星、剛、ばか!」
『実家帰ってきた時によく話してますよー。バディバディうるさいっての』
「えっ...そんなに俺うるさい?」
『あーうるさいね!口を開けば霧子さんの事ばかり!』
「ハハハ!進兄さん。もういっそのこと私生活でもバディ組んだらいいんじゃないの?」
「ブッフォ!できるか!」
口からコーヒー噴射。汚い。しかもそのコーヒー俺に...
『かかってるんだけど!?』
「俺も!うわーもー進兄さんきったねー!」
「うるさい!」
慌てて台の上のふきんを引っ掴んでゴシゴシと顔を拭い..ってそれ机拭くためのふきんだよ...
「うわあ!?ぶ!?」
俺が心の中で思ってたことが通じたようだ。
『ほら落ち着けって。』
「そーだよ」
『霧子さんに過剰反応し過ぎ。』
「そーだよ」
『携帯鳴ってるよ』
「そーだよ」
「うお...?!?ホントだ。...もしもし?」
電話はやっぱりみんな声色変えるんだな。
実家にいる時の声とは違う。仕事してる、って感じだ。
仕事かあ。
俺は行きたい大学は決まってるんだけどなあ...
その先はなあ...
「...はい、分かりました。今から...はい、すぐに向かいます。では後ほど」
「流星」
『仕事?』
「ああ。悪い。試験のこととか聞きたかったけど...受かってるといいな」
『うん』
「じゃ、また」
『ん、バイバイ』
という訳で、取り残された俺と剛。
『...』
「...」
沈黙。
こうなるわ、そりゃ。初対面だもん。
「流星君いくつ?」
先に口を開いたのは剛。
タメ口なのはどうやら俺の学ランが判断基準のようだ。
『17、です。今年18だけど...』
「へえ、俺19」
『そーなんすか』
「早速なんだけどさ、ホントに進兄さんうるさいわけ?」
『あー...めっちゃうるさいっすよ。本人今まで自覚なかったみたいですけど』
「はは!もーかわいいんだからぁ!!」
『そう!それ!自分の兄ながらその感情よく分かります!今まで勉強と仕事ばかりで...それでやっと今あんな感じなんです。だから応援してやりたくて...』
「なるほどねー。いい弟だな」
『いや、そんな...剛さんのお姉さんは?どんな感じですか?』
「んー、どんなだろ。...あ、俺から進兄さんのこと話すとすっげーテンパるよ。この前家でコーヒー入れてくれてた時に話したら、そのコーヒーをテーブルに運ぶときにさ」
『はい』
「全部こぼした」
『えっ』
「トレーに載せてるときからプルプル震えてて、俺んところに運ばれてきた時にはもう中身空っぽだった」
『...うちと似たもの同士なんすね』
「だな...あー!早く結婚してくれないかなー!!」
『ですねぇ』
「姉ちゃんと進兄さん結婚したら俺達兄弟だ」
『ですねぇ』
「なーにジジくさい回答してんの」
『俺も剛さんが兄さんだったら嬉しいなー、と思って』
「はは。俺も弟と兄さんが一気に出来て嬉しい」
『まだ結婚してないんでそんなモン決まってないんすけどね』
「いーのいーの想像ってのは人を豊かにするか、ら...あ?なんかアナウンス...免許試験の結果発表だって!流星、掲示板見てこいよ!」
『はい!』
掲示板の前には人だかりができるから、かき分けるの大変なんだぜ、とかなんとかってのを先輩から聞いてた。
けど、今の時期に免許とるヤツなんてそうそういない。
掲示板の前にはチラホラ人がいるだけ。まばらだ。
というか、よく考えたら今日は原付の試験だ。
車の運転免許試験ばりに人が多くいる訳がなかった。
受験番号を呪文のように心の中で唱えながら探した。
『受か......................................................ってる』
うん、受かってる。
『...よし』
そして今一度剛さんのいる食堂へと戻る。
『剛さん。俺受かってました』
「お!良かったねえ流星」
『今免許交付待ちです』
「あー。長くなるね。顔写真撮るでしょ?」
『はい』
「免許証映えするように俺がヘアセットしてあげる」
『え、いいんすか?』
「いーよ、せめてもの合格祝い、ってことで」
『ありがとうございます!』
「時間は?」
『15:30~って。掲示板に』
「まだあと15分あるね。よし行くぞ」
トイレにセットへと向かう剛さんと俺。
はたから見たら連れションへ行く男子高校生みたいだ。連れションしたことないけど。
「さて、始めるか」
『お願いします』
手にワックスをすり込んでどうするか考えているようだ。
『あの』
「ん?なんか希望ある?」
『無いです...強いて言うならパパッと決まるスタイリング教えて欲しいです』
「ははは...教えるのはまあ今度ね。パパッとキメるわ」
『お願いしまーす』
そういって3分も経たないうちに...
「できた」
『はやっ』
「適当に流すだけだから。」
『流すだけでこんな決まるんだ...いつもの俺じゃないみたい』
「アハハ。」
『ありがとうございました。それじゃ、行ってきます』
「いってら~。あ、免許証交付されたら見せて」
『もちろんす』
「いってらっしゃい」
結果
もう二度と免許更新したくないようなバリバリ自画自賛な免許証ができた。
『感謝してます』
「おう」