イ反面ライダードライブ
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剛は特状課を出て、帰路についた。今日はバイクはメンテの日。しぶしぶ徒歩で帰宅。ここから先は公園内を通って裏通りへ出るのが近道なのだ。公園の入口に差し掛かったところから見えるベンチに腰掛けていた人物に目が留まる。あれは…
「あはは。そんな寄るなって。毛が付いちまう」
少し高い声。喋り方。やっぱり。もふもふと猫達に群がられ、ベンチに座っていたのは、いつも通ってる弁当屋のバイトくんだ。
名前は「平手」。いつも会計でレジ打って貰ってる時にネームプレートを見てるからバッチリ覚えてる。
パパラッチ。ふとそんな考えが頭をよぎった。近くにあった植え込み越しにカメラを構える。ファインダー越しに平手を見れば、猫に懐かれて頬を舐められたりしている。それをさして咎める様子もない。
(なんてのんびりしてやがる…)
カシャ
(平手も猫みたいだ)
カシャカシャッ
これを見せてやろう。どんな反応すんのかな。
「ねえアンタ」
近付いて声をかけた。
「ん…?あ!いつもご贔屓に!ありがとうございます」
営業スマイルだ。
「なんでアンタこんなとこにいんの?」
「ああ。配達終わったから休憩中なんす」
「へーえ。お勤めご苦労様」
「ありがとうございます」
そう言って大きく伸びをした後、彼が取り出したのは煙草。
口に咥えて、ライター持って。
「吸ってもいいっすか?
咥えて、くゆらせている。
は?
黙って見ていると、
「ダメっすか…」
なんて、しょぼくれた。
「アンタ未成年じゃなかったの?」
「違いますよ」
「え」
嘘だろ。高校生のバイトくんなんだとばかり思ってた。
「なんすか、童顔て言いたいんすか?」
レジ打ちの時の爽やかスマイルじゃなくて、ニヤッと笑った。例えるならイタズラが失敗したような。あの感じ。
「年上かよ…」
上はありえねーとは思ってたけど。
「...君もしかして年下?いくつ?」
「19、です」
「なーんだ。俺21」
教えあったところでふっと息を吐き出す。お互い息を吐き出すタイミングが妙に合った。二つも違うんだ…
「年下に見るとか酷ぇよなー」
「ごめ…すみません」
「あはは。敬語なんか今更使っても遅いって…俺もお前のこと年上だと思ってたからおあいこ」
「...俺のことなんで年上だと思ってたの?」
「なんていうか、雰囲気?自信満々な感じ。裏返したらガキっぽい自信満々な感じなんだけどな。そこは紙一重。お前こそ教えろよ」
「背がちいせえし、童顔」
「ストレートだな」
「まあね。俺こういう性格なの」
「ふーん…で、煙草吸っていい?」
「おん」
その瞬間、二カッと笑って火をつけた。
「あー、うまい」
「さっき」
「?」
「写真撮ってた」
「ふーん。ま、首からカメラ下げてっから見りゃ分かるよ。何撮ってたの?風景?」
「アンタ」
「えっ。俺?」
「うん。猫に頬を舐められてるところ」
「あ、あれ撮ってたんだ。見せてくれるの?」
「どうぞ」
そう言ってカメラを差し出す。
「…これ完全にパパラッチじゃん」
「ごめん」
「盗撮が趣味なの?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「あ、これなんかいいね。俺めっちゃ笑ってんじゃん。俺バイト以外あんま笑わねえもん。すげえ」
「アメリカで修行積んだからな」
「へえ。行ってみたいなー、アメリカ」
そう言いながらカメラを俺の手元に戻した。
「連れてってあげようか?」
「行きたいなーでもなー毎日忙しいんだよ」
「ふーん」
「なんだ、俺が忙しく見えないわけか。俺な、今レポート提出やらレジュメ作成やら研究発表の資料作りで忙しいの」
「じゃ、バイトはなんでやってんの?」
「息抜きだよ、息抜き」
「ふーん…」
「お前さ、名前なんての?」
また煙草をぷかぷかとやりだした平手。
「詩島剛」
「え?しじ…?」
「し、じ、ま、ご、う」
「詩島くんね」
「アンタは平手…」
「平手流星、だよ」
「流星さん」
「うん」
気がつけば、周りにいた猫達は向こうのベンチに座る男性の人に吸い寄せられたようだった。
「流星さん」
「なに?」
「息抜きの時間、少し俺にください」
「?」
「アメリカまではさすがに連れていけないけど、知ってるところ色々紹介するんで!美味しいゴハン屋とか!!気が休まるところとか!!!」
俺がそういうと、流星は一瞬目を見張って。
吹き出した。
「はは、そういうコトね。何かと思ったよ。大事な休憩時間がお前に奪われるかと思った」
「俺が連れ出すことで時間奪っちゃうことになるけど...」
「いーよー、べつに。お前誕生日いつなの?」
「なんで?」
「一緒に酒飲みてーなーと思って。お前とはバイト先で会うだけだったけど、面白いヤツって分かってもっと話したくなった」
「ああ、そゆこと。俺そろそろ誕生日だよ」
「へえ、いつ?」
「明日」
「あ?」
「明日」
「明日って…明日じゃん!!!!!おめでとう!」
「ありがとうございます」
「明日は彼女に祝ってもらうの?」
「彼女?」
「なんかほら、たまーに一緒に弁当買いに来る人」
「…アッハッハ!あれ俺のねーちゃんだよ」
「えっそうなの!?じゃあ彼女は」
「いないよ」
「可哀想」
「いーのいーの」
「なんで?」
「明日は流星さんとデートだから」
「流星...って俺かよ。明日かーーー」
「なんか予定入ってんの?」
「べっつに、なんも。強いて言うなら洗濯して掃除機かけたいなー、なんて」
「それ予定なの...」
「うん。洗濯物たまってるし、机のところにホコリ見えてきたから」
「そう」
「つっても、明日の予定はそれしかないよ。いいよ、明日でも」
「ホントに!?!?」
「ホント」
「どこ行こう!?」
「はは、そういうところ、まだ子どもみたいだね」
「うっせ」
「ははは」
「んん、明日さあ、流星さんの家に行ってもいいの?」
「え?」
「家にお邪魔したい」
「いいけどさあ...片付けてからになるよ」
「全然問題なし!」
「うーん、じゃあ明日は早く起きて片付けておくわ」
「やったね!!ありがとう!!!!!」
「じゃあ、俺休憩終わるからさ、連絡先聞いていい?あとで連絡すっから」
「うぃっす!じゃあ...」
「LINEでいい?てかやってる?」
「やってる」
「おっし、じゃあこれ読み取ってくんね?」
差し出されたのはQRコード。
「...ほい」
スマホをいくらか操作し、お互いを友達に追加しあった。
「ん!登録完了!ほいなら、俺はバイトへ戻りまーす」
「流星さん頑張って」
「おう。ありがとう、詩島くん」
そう言って立ち去ろうとした流星を俺は呼び止めた。
迷惑かもしれないけど...
「あの」
「ん?なに?」
「名前で読んで」
「?いいよ。...剛」
「...」
綺麗だった。最後に振り返って、微笑んで。
「明日、剛が来るの楽しみにしてるから。」
「うん」
「また明日な」
「うん」
手を振って別れた後、俺は流星が座っていたベンチに座った。やべえ。明日楽しみすぎる。つーか、そもそも俺どうしたんだろ。弁当屋で会うだけだった人に話しかけて家にお邪魔させてもらうなんて。俺どうかしてる。
剛は流星が吐き出した紫煙を思い浮かべた。
「あはは。そんな寄るなって。毛が付いちまう」
少し高い声。喋り方。やっぱり。もふもふと猫達に群がられ、ベンチに座っていたのは、いつも通ってる弁当屋のバイトくんだ。
名前は「平手」。いつも会計でレジ打って貰ってる時にネームプレートを見てるからバッチリ覚えてる。
パパラッチ。ふとそんな考えが頭をよぎった。近くにあった植え込み越しにカメラを構える。ファインダー越しに平手を見れば、猫に懐かれて頬を舐められたりしている。それをさして咎める様子もない。
(なんてのんびりしてやがる…)
カシャ
(平手も猫みたいだ)
カシャカシャッ
これを見せてやろう。どんな反応すんのかな。
「ねえアンタ」
近付いて声をかけた。
「ん…?あ!いつもご贔屓に!ありがとうございます」
営業スマイルだ。
「なんでアンタこんなとこにいんの?」
「ああ。配達終わったから休憩中なんす」
「へーえ。お勤めご苦労様」
「ありがとうございます」
そう言って大きく伸びをした後、彼が取り出したのは煙草。
口に咥えて、ライター持って。
「吸ってもいいっすか?
咥えて、くゆらせている。
は?
黙って見ていると、
「ダメっすか…」
なんて、しょぼくれた。
「アンタ未成年じゃなかったの?」
「違いますよ」
「え」
嘘だろ。高校生のバイトくんなんだとばかり思ってた。
「なんすか、童顔て言いたいんすか?」
レジ打ちの時の爽やかスマイルじゃなくて、ニヤッと笑った。例えるならイタズラが失敗したような。あの感じ。
「年上かよ…」
上はありえねーとは思ってたけど。
「...君もしかして年下?いくつ?」
「19、です」
「なーんだ。俺21」
教えあったところでふっと息を吐き出す。お互い息を吐き出すタイミングが妙に合った。二つも違うんだ…
「年下に見るとか酷ぇよなー」
「ごめ…すみません」
「あはは。敬語なんか今更使っても遅いって…俺もお前のこと年上だと思ってたからおあいこ」
「...俺のことなんで年上だと思ってたの?」
「なんていうか、雰囲気?自信満々な感じ。裏返したらガキっぽい自信満々な感じなんだけどな。そこは紙一重。お前こそ教えろよ」
「背がちいせえし、童顔」
「ストレートだな」
「まあね。俺こういう性格なの」
「ふーん…で、煙草吸っていい?」
「おん」
その瞬間、二カッと笑って火をつけた。
「あー、うまい」
「さっき」
「?」
「写真撮ってた」
「ふーん。ま、首からカメラ下げてっから見りゃ分かるよ。何撮ってたの?風景?」
「アンタ」
「えっ。俺?」
「うん。猫に頬を舐められてるところ」
「あ、あれ撮ってたんだ。見せてくれるの?」
「どうぞ」
そう言ってカメラを差し出す。
「…これ完全にパパラッチじゃん」
「ごめん」
「盗撮が趣味なの?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「あ、これなんかいいね。俺めっちゃ笑ってんじゃん。俺バイト以外あんま笑わねえもん。すげえ」
「アメリカで修行積んだからな」
「へえ。行ってみたいなー、アメリカ」
そう言いながらカメラを俺の手元に戻した。
「連れてってあげようか?」
「行きたいなーでもなー毎日忙しいんだよ」
「ふーん」
「なんだ、俺が忙しく見えないわけか。俺な、今レポート提出やらレジュメ作成やら研究発表の資料作りで忙しいの」
「じゃ、バイトはなんでやってんの?」
「息抜きだよ、息抜き」
「ふーん…」
「お前さ、名前なんての?」
また煙草をぷかぷかとやりだした平手。
「詩島剛」
「え?しじ…?」
「し、じ、ま、ご、う」
「詩島くんね」
「アンタは平手…」
「平手流星、だよ」
「流星さん」
「うん」
気がつけば、周りにいた猫達は向こうのベンチに座る男性の人に吸い寄せられたようだった。
「流星さん」
「なに?」
「息抜きの時間、少し俺にください」
「?」
「アメリカまではさすがに連れていけないけど、知ってるところ色々紹介するんで!美味しいゴハン屋とか!!気が休まるところとか!!!」
俺がそういうと、流星は一瞬目を見張って。
吹き出した。
「はは、そういうコトね。何かと思ったよ。大事な休憩時間がお前に奪われるかと思った」
「俺が連れ出すことで時間奪っちゃうことになるけど...」
「いーよー、べつに。お前誕生日いつなの?」
「なんで?」
「一緒に酒飲みてーなーと思って。お前とはバイト先で会うだけだったけど、面白いヤツって分かってもっと話したくなった」
「ああ、そゆこと。俺そろそろ誕生日だよ」
「へえ、いつ?」
「明日」
「あ?」
「明日」
「明日って…明日じゃん!!!!!おめでとう!」
「ありがとうございます」
「明日は彼女に祝ってもらうの?」
「彼女?」
「なんかほら、たまーに一緒に弁当買いに来る人」
「…アッハッハ!あれ俺のねーちゃんだよ」
「えっそうなの!?じゃあ彼女は」
「いないよ」
「可哀想」
「いーのいーの」
「なんで?」
「明日は流星さんとデートだから」
「流星...って俺かよ。明日かーーー」
「なんか予定入ってんの?」
「べっつに、なんも。強いて言うなら洗濯して掃除機かけたいなー、なんて」
「それ予定なの...」
「うん。洗濯物たまってるし、机のところにホコリ見えてきたから」
「そう」
「つっても、明日の予定はそれしかないよ。いいよ、明日でも」
「ホントに!?!?」
「ホント」
「どこ行こう!?」
「はは、そういうところ、まだ子どもみたいだね」
「うっせ」
「ははは」
「んん、明日さあ、流星さんの家に行ってもいいの?」
「え?」
「家にお邪魔したい」
「いいけどさあ...片付けてからになるよ」
「全然問題なし!」
「うーん、じゃあ明日は早く起きて片付けておくわ」
「やったね!!ありがとう!!!!!」
「じゃあ、俺休憩終わるからさ、連絡先聞いていい?あとで連絡すっから」
「うぃっす!じゃあ...」
「LINEでいい?てかやってる?」
「やってる」
「おっし、じゃあこれ読み取ってくんね?」
差し出されたのはQRコード。
「...ほい」
スマホをいくらか操作し、お互いを友達に追加しあった。
「ん!登録完了!ほいなら、俺はバイトへ戻りまーす」
「流星さん頑張って」
「おう。ありがとう、詩島くん」
そう言って立ち去ろうとした流星を俺は呼び止めた。
迷惑かもしれないけど...
「あの」
「ん?なに?」
「名前で読んで」
「?いいよ。...剛」
「...」
綺麗だった。最後に振り返って、微笑んで。
「明日、剛が来るの楽しみにしてるから。」
「うん」
「また明日な」
「うん」
手を振って別れた後、俺は流星が座っていたベンチに座った。やべえ。明日楽しみすぎる。つーか、そもそも俺どうしたんだろ。弁当屋で会うだけだった人に話しかけて家にお邪魔させてもらうなんて。俺どうかしてる。
剛は流星が吐き出した紫煙を思い浮かべた。