イ反面ライダードライブ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どうやったって埋まらない差が俺と剛にはある。
それは年の差。7歳差なのだ、俺たちは。
数年前、地元で定期的に開催されているポートレートのワークショップでたまたま出会ったのだが剛だった。当時俺は社会人で剛はまだ学生だったのだが、月一回開催のワークショップが終わる度に帰り道で剛がやたらと俺に絡んできて、遂には告白をしてきた。その時は年の差を理由に何度も断ったが剛にも折れる気配はなく、1年経って初心者向けワークショップが終了した頃、押し切られる形で交際がスタートした。
『剛、次の展示会のことなんだが』
「なに?」
流星は現在、ワークショップへ通っていた頃から勤めていた事務職を辞め、剛と同じフリーランスのカメラマンをしている。
今は2ヶ月後に控えた個展の準備で忙しい。
剛は剛で、海外からの撮影依頼を控えているためその準備でバタついている。
『実は展示会のバラシの日と、剛がアメリカから帰ってくる日が被っていて、空港には迎えに行けそうもないんだ』
「大丈夫だよ、俺電車で帰れるから」
『でも駅まで遠いだろ』
「俺もう学生じゃないんだからさ。そんなに心配しないでよ」
『でもまだ未成年なんだ。心配』
過保護。流星を表すにはもってこいの言葉だ。
剛が告白して始まった流星との交際は今のところ順調である。流星が大人だからなのか喧嘩も少なく、それに加えて剛が流星にべったりな節がある。流星も恐らくそれを悪くは思っていないのが、同じ家に暮らすようになって感じられるようになってきた。
「ちゃんと帰ってくるからさ、ね?」
『空港着いたらちゃんと連絡くれよ』
これ出発の日も、それまでも、アメリカに行ってからも、帰る直前も耳にタコができるくらい聞くことになるんだろうなあと思うと剛は少し耳が痛かった。
「分かってるってば。そういう流星さんの方は準備進んでるの?」
『そこそこ順調。でもまだ展示物と招待者のピックアップと…やることはまだ山積みかな』
「流星さんのこと手伝いたいけど、俺今余裕無いんだよね…」
『心配するな。心配なんて俺が剛にするだけで良いんだから』
「ふはっ。なにそれ」
そんなことを言っていたのが2ヶ月前。
近所の公園にいる地域猫にスポットライトを当てた内容の流星の展示会には公園付近に住む人だけでなく猫雑誌で取り上げてもらったことも功を奏し、ネットの猫好きの間でも話題となり、多くの来場者が訪れた。特に出口付近に備えたチャリティーグッズの売れ行きが良く、流星の展示会は大盛況の内に幕を閉じた。
『こっちのバラシ終わったら、あとは自分だけで会場の撤収できそうなんで帰ってもらって大丈夫です。皆さん本当にありがとうございました』
「おつかれ。また呼んでよ」
『はい、期待していて下さい』
一人ではさすがに作業の手が足りないと呼んだ知り合いに労いの言葉と粗品を渡し、帰ってもらった。彼らにも仕事はあるのでこれ以上の時間は拘束出来なかった。
立体物の展示ではないので比較的撤収作業は楽な方なのだが、それでも展示物は少なくはない。会場清掃までを含めた作業は早朝から夕方まで続いた。
「空港着いたよ、っと…」
剛は飛行機が着陸し、電子機器の使用を認めるアナウンスを聞いてからいの一番に流星にメッセージを送った。すると数分も経たずして「おかえり」と返信があった。やっぱり流星は過保護だ。
機内を出てからは荷物場のターンテーブルに流れてきたスーツケースを掴み、国際線出口で片帰りの電車の時刻を検索していると声をかけられた。
『おかえり』
「…流星さん?」
『そうだよ』
流星は照れて少し目尻を下げた。
どうして。今日は迎えに来られないと言っていたのに。
流星が着こなしたブルーストライプのノーカラーシャツがこの蒸し蒸しとした6月にはひどく爽やかに見えた。
「…っ!ただいまっ!!」
人目もはばからず、剛はターミナルで流星に抱き着いた。
「なんで!?なんでいるの!?」
『俺、日付間違えてたんだ。恥ずかしい』
「そういう流星さんも可愛いよ!」
『とりあえず手、緩めてくれないか…首しまってる…』
「あ、ごめんね」
剛が慌てて離れて流星を見上げると、先程流星が垂らした目尻は更に下がっている。
『おかえり。無事でよかった』
嗚呼、この人にはずっと過保護でいて欲しいと、剛は思った。
それは年の差。7歳差なのだ、俺たちは。
数年前、地元で定期的に開催されているポートレートのワークショップでたまたま出会ったのだが剛だった。当時俺は社会人で剛はまだ学生だったのだが、月一回開催のワークショップが終わる度に帰り道で剛がやたらと俺に絡んできて、遂には告白をしてきた。その時は年の差を理由に何度も断ったが剛にも折れる気配はなく、1年経って初心者向けワークショップが終了した頃、押し切られる形で交際がスタートした。
『剛、次の展示会のことなんだが』
「なに?」
流星は現在、ワークショップへ通っていた頃から勤めていた事務職を辞め、剛と同じフリーランスのカメラマンをしている。
今は2ヶ月後に控えた個展の準備で忙しい。
剛は剛で、海外からの撮影依頼を控えているためその準備でバタついている。
『実は展示会のバラシの日と、剛がアメリカから帰ってくる日が被っていて、空港には迎えに行けそうもないんだ』
「大丈夫だよ、俺電車で帰れるから」
『でも駅まで遠いだろ』
「俺もう学生じゃないんだからさ。そんなに心配しないでよ」
『でもまだ未成年なんだ。心配』
過保護。流星を表すにはもってこいの言葉だ。
剛が告白して始まった流星との交際は今のところ順調である。流星が大人だからなのか喧嘩も少なく、それに加えて剛が流星にべったりな節がある。流星も恐らくそれを悪くは思っていないのが、同じ家に暮らすようになって感じられるようになってきた。
「ちゃんと帰ってくるからさ、ね?」
『空港着いたらちゃんと連絡くれよ』
これ出発の日も、それまでも、アメリカに行ってからも、帰る直前も耳にタコができるくらい聞くことになるんだろうなあと思うと剛は少し耳が痛かった。
「分かってるってば。そういう流星さんの方は準備進んでるの?」
『そこそこ順調。でもまだ展示物と招待者のピックアップと…やることはまだ山積みかな』
「流星さんのこと手伝いたいけど、俺今余裕無いんだよね…」
『心配するな。心配なんて俺が剛にするだけで良いんだから』
「ふはっ。なにそれ」
そんなことを言っていたのが2ヶ月前。
近所の公園にいる地域猫にスポットライトを当てた内容の流星の展示会には公園付近に住む人だけでなく猫雑誌で取り上げてもらったことも功を奏し、ネットの猫好きの間でも話題となり、多くの来場者が訪れた。特に出口付近に備えたチャリティーグッズの売れ行きが良く、流星の展示会は大盛況の内に幕を閉じた。
『こっちのバラシ終わったら、あとは自分だけで会場の撤収できそうなんで帰ってもらって大丈夫です。皆さん本当にありがとうございました』
「おつかれ。また呼んでよ」
『はい、期待していて下さい』
一人ではさすがに作業の手が足りないと呼んだ知り合いに労いの言葉と粗品を渡し、帰ってもらった。彼らにも仕事はあるのでこれ以上の時間は拘束出来なかった。
立体物の展示ではないので比較的撤収作業は楽な方なのだが、それでも展示物は少なくはない。会場清掃までを含めた作業は早朝から夕方まで続いた。
「空港着いたよ、っと…」
剛は飛行機が着陸し、電子機器の使用を認めるアナウンスを聞いてからいの一番に流星にメッセージを送った。すると数分も経たずして「おかえり」と返信があった。やっぱり流星は過保護だ。
機内を出てからは荷物場のターンテーブルに流れてきたスーツケースを掴み、国際線出口で片帰りの電車の時刻を検索していると声をかけられた。
『おかえり』
「…流星さん?」
『そうだよ』
流星は照れて少し目尻を下げた。
どうして。今日は迎えに来られないと言っていたのに。
流星が着こなしたブルーストライプのノーカラーシャツがこの蒸し蒸しとした6月にはひどく爽やかに見えた。
「…っ!ただいまっ!!」
人目もはばからず、剛はターミナルで流星に抱き着いた。
「なんで!?なんでいるの!?」
『俺、日付間違えてたんだ。恥ずかしい』
「そういう流星さんも可愛いよ!」
『とりあえず手、緩めてくれないか…首しまってる…』
「あ、ごめんね」
剛が慌てて離れて流星を見上げると、先程流星が垂らした目尻は更に下がっている。
『おかえり。無事でよかった』
嗚呼、この人にはずっと過保護でいて欲しいと、剛は思った。