イ反面ライダードライブ
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あー最悪だ。なんで職場の飲み会なんかあるんだよ。若手なんだから積極的に参加しような、じゃねーよクソ上司。なんとか適当に理由つけて不参加にすればよかった。そんで席はくじ引きした結果で、予め決まってる。俺なんか「若手だから残った席でいいだろ」って上司や先輩が引いたくじの残りカスの席。で、いざ席に着いてみると上司先輩に囲まれてる席で、もう更に帰りたくなった。
幹事が乾杯の音頭を取り、飲み会が始まった。上司先輩らは俺に仕事の苦労を延々と投げかけてくる。しかも決まって全部「俺が若い頃は…」で始まるヤツ。お前らの時代と今は違うんだよ。苦労なんていつの時代もそれなりにあるんだよ、とはさすがに言えないので適当な愛想笑いで誤魔化す。あー面白くねえ。
程なくしてトイレに立つものが現れ、ぼちぼちと席替えが始まった。
この流れで帰ろうかな。そう考えていた時だった。
「飲んでる?」
声をかけてきたのは詩島だった。こいつは…下のフロアの奴だっけ。多分同期、だと思う。採用時に一緒に社員証貰ってたし。
『うん』
「同期だよね。平手さんて何歳なの?」
『今年23』
「あ、一緒だ」
やっぱり同期で同い年だったか。
「詩島ァー」
「はい!」
「酒頼んでくれや」
「はーい、すみませーんビール追加お願いしまァァァす!」
こいつは上司に好かれててポイント高いんだろうな。すぐ本社異動とかしそう。結局年齢の話だけをして、詩島は上司のビールに構うため席を離れていった。こんだけの人数がいるんだ。帰ったって誰も気付かないだろう。とりあえず幹事には「家の都合で…」とかなんとか適当な理由をつけて店を出た。一人暮らしだけど。飲み会代って結構痛手だよな。若手だから負担金額はそれなりだけど、日常生活の中で使うとしたら結構大きい額だぞこれ。
翌日。
フロアには二日酔い重病者が蔓延していた。昨日どんだけ飲んだんだよ…
「おはよっす」
『っす』
隣席の同僚である山田が出勤してきた。
「昨日の飲み会どうだった?やばかった?」
コイツは残業で昨日の飲み会来なかったんだっけ。残業が羨ましいとか感じるの、これが初めてだ。
『俺途中で抜けた』
「だよな、フロアの状況やべーもんな。帰るって選択正しいよ…で、実はそんな平手にお願いがあるんだけど」
『何だよ』
「急で悪いんだけどさ、今日の飲み会出てくれないかな」
『は?』
「歳が近い人で人数揃えたくて…金は俺が払うからさ」
『マジ?』
まあ…タダ酒でさらに歳が近いヤツの集まりなら…飲んでやらんことも無い。うん。
「人数合わせに付き合わせてホントごめん」
かくして定時で切り上げる。
「ごめんな、マジで」
人数合わせに付き合わせていることをただただ平謝りしてくる。けど、帰ったってどうせ一人だしそれならタダ酒飲める方が良いんだよね、俺としては。
『今日の夕飯代浮くし、別にいーよ。で、どんなメンバーなんだよ』
「あーウチの会社の四件隣のビルのOL」
『やっぱり合コンかよ』
「あとアイツも呼んだ」
『アイツ?』
タイミングよく現れたアイツ。
「お待たせ」
「おいおせーぞ剛」
「先輩に引き止められてさ。ごめん、行こう」
結局話が盛り上がったのは俺と剛とOLだけで、俺を誘った山田は完敗だったらしい。やっぱり顔のつくりってそれなりに大事なんだね。父さん母さんご先祖様ありがとう。是非二軒目も、というOLを俺は断れない。一人寂しく家に帰るより絶対良いから。ちら、と剛を見た。既に顔が赤い。昨日はすぐ帰って気が付かなかったが、酒弱いのか。
『詩島、大丈夫か』
「うん。行こ」
一軒目で既に千鳥足の詩島を支えながら二軒目へとはしごする。しきりに腰へと手を回されたが、酔っているのだろうと特に気に留めることはなかった。
「ねえ、平手」
『ん?』
フラフラとした足つきで俺にしがみついてくる詩島。前を歩く同僚とOLは二軒目を探していてこちらを気にする様子はない。
「俺もう眠いや」
『…二軒目行くって言ったのどこのどいつだよ』
「ふふ、おれだね」
ニコニコと返答されてはちょっとイラッとしたものをどこにぶつければいいのか、行き場がなくなる。
『家どこだ?タクシー捕まえるか?』
「いい」
『いいってなんだよ』
「平手のとこ泊めてもらう」
『あ?まあいいけどさ、俺一人だし』
飲みたい気持ちはあるが、今の詩島を放っておいたらやばい気がする。二軒目に入ろうとする同僚を捕まえて、先に帰ることを伝えた。同僚もOLも残念がったが、仕方ない。OLとは適当に連絡先を交換してその場をあとにした。終電まではまだ早いが、詩島を電車に乗せるのは危ないだろう。
タクシーを呼びつけて、飲み屋街を抜ける。走るタクシーの中でしきりに手を握ってきた詩島だったが、既に夢うつつらしい。赤ちゃんかよ。アパートの前で停めてもらい、自宅のドアを開ける。
『ほら、着いたぞ』
「んー、ただいま」
『ただいまじゃねえし』
「ふふ」
とりあえず水を、とコップを差し出すと物凄い勢いで飲み干した。
『明日土曜。仕事なくて良かったな』
「うん。お風呂入る」
『お前風呂入ったらアルコールまわるぞ』
「シャワーだけ!シャワーだけ!」
『駄々をこねるな。もー、シャワーだけな。着替えは俺の出しておくから』
何をやってるんだ俺は。ぐずる詩島がやけに幼く見える。ひとまず浴室へと押し込み、俺は着替えを漁る。体格はそんなに大差ないから俺のスウェット着れるはず。
「出たよー」
『はいはい』
「身体拭いてー」
『はあ?自分で拭けよ』
「無理ですぅー」
何をやってるんだアイツは…。
風呂から出てもなおぐずっている詩島の身体を拭きあげ、スウェットを着せた。
『俺風呂入ってくるから、寝てな』
「やだー」
なんでだよ!
シャワーを浴び終えて戻ると、案の定布団の上に転がりイビキをかいて寝ている詩島がいた。
『おやすみ』
今日だけはとっておきだ。一晩中クーラーを設定温度低くしてかけてやろう。そっとタオルケットを詩島にかけ、俺は来客用の布団を敷いて寝た。
そして翌朝。7時起床。うん、休みの日にしては早く起きたな。スマホで時間を確認すると、昨日飲んだOLからの「また飲もう」という通知が来ていた。ベッドを見ると、もそもそと動く詩島がいた。
『おい、大丈夫か?』
「え、どこココ」
『俺ん家』
「なんで…」
『お前が酔っ払ったから泊めたの』
「マジ…?」
どうやら昨日の記憶が抜け落ちているらしい。
『うん。二日酔い?してないか?』
「してないけど、頭痛い…」
『もー今日は一日寝てろ』
「そうする…ねえ、平手って名前なんなの?」
『え?流星』
「流星ね」
『なんだよ』
「俺アメリカ留学してたからファーストネームで呼びたい派なんだよね」
『あ、そう』
「流星も俺のこと剛って呼んで」
『おう。…剛まだ寝るか?俺朝飯食うけど…つーか食えそう?』
「食べれる」
『ん、準備するわ』
トースターにパンを仕込み、その間にコーヒーを淹れる。一人暮らしのおかげでなんだか手際が良くなった。剛を机まで誘導しパンを咥えさせる。もさもさと咀嚼をしているが、うまく飲み込めていないようだった。
『無理すんなよ』
「ひへない」
『ちゃんと飲み込んでから喋れ』
剛が飲み込むのを見届け、俺も再び咀嚼をはじめる。
「昨日どんな感じだった?」
『あー…俺と剛はOLと盛り上がったけど、他のやつらは完敗だった。俺は剛連れて帰る時にOLと連絡先交換したけど、他のやつらどうなったんだろ…あ、ちなみにもうOLから次の誘い来てたぞ』
「ふーん」
『結構良い顔揃ってたよな。胸もデカかったし』
「俺あんまり興味ないかな」
『そうなのか?』
結構盛り上がってたのに?
「盛り上がるのは良いけど、恋愛対象には見れなかった」
『あーそういう。次飲む時剛も行く?』
「良いよ。狙ってる子いるの?」
『俺の向かいに座ってた子。綺麗めで結構タイプだったなー』
「流星ってそういうのタイプなんだ」
『ケバくない方がいいだろ。しかも昨日終わったあと一番に連絡くれてたんだよ。絶対いけるだろこれ』
「まあ頑張れ」
『おう』
「…俺帰るわ。飯食ったら大丈夫な気がしてきた」
『マジで大丈夫か?駅まで送る』
少し不安だったが、剛を駅まで送り届け、「次飲む予定立てたらいつでも連絡して」との言葉をもらい別れた。
月曜日。出勤早々隣席の山田に話しかけられた。話を聞くと、金曜は可哀想なことに完敗だったらしい。OLの連絡先をゲットしたことと、次に飲む約束を立てていることはコイツには悪いが黙っておいた方が良いだろうと判断した。
昼時には食堂で剛を探す。一人で飯を食ってるらしい剛の隣の席にかけた。
『よっす』
「あ、流星」
『あれからOLと連絡取ってんだけどさ、再来週の金曜日に飲み会になりそうなんだよね。剛は予定空いてる?』
「うん」
『おっ。じゃあ伝えとく』
スマホをいくらか操作し、剛の予定が合うことを相手に伝える。飲み屋はこちら側で探そうと思ったが「行きたいところがあるの」と、相手から提示された。予約も取ってくれるみたいで、なんだか申し訳ない。
そして来たる来週の金曜日。それはもうウキウキしながら仕事をこなした。山田には色々聞かれたが、「高校の時のツレと飲み会」と、テキトーにはぐらかしてきた。
「お待たせー!!」
『待ってないよー、行こう』
そうして飲み会が始まった。
「流星くんそれマジ?」
『うん。だから今日のことは山田に言えなくてさ』
場所はOLセレクトのスポーツバー。
大きなモニターやスクリーンでサッカーの試合が見られる造りになっている。バーではあるがくつろげるようにと、ゆったりした低めのソファ席もあり、中々洒落ていて悪くない。
「うーん。確かに山田くん、二軒目の誘い方とか露骨だったもんね」
『そっかあ。山田が可哀想だから次の合コンで彼女ゲットできるように指導してやってよ』
「えーそしたらまた山田くんと会わなきゃじゃん。やだー」
『やだって可哀想だからやめてやれよー』
「あはは」
山田は結局しつこいのがいけなかったらしい。なるべくソフトにアイツに伝えて次の合コンに活かせるようにしてやろう…。なんてOLと話していたら剛はまた顔を赤くして、全く焦点の定まらない視線をふらふらと漂わせていた。
『おい、剛』
「んー?」
『大丈夫か?』
「んぅ、流星ー」
『なに?』
「すきー」
『あーはいはい、俺も好きだよー』
剛完全に酔ってるな。適当な生返事で寝かせておいてやろう。
「剛くんって、可愛いよね」
「分かるー。弟っぽい」
睡眠タイムに入った剛を見てOL達が微笑む。
『この前の飲み会の時さ、俺と剛先に帰ったじゃん?』
「うん」
『俺の部屋に泊めて酔いが覚めるまで看病したの』
「まじで」
『うん。だから褒めて』
「流星くん偉い!お姉さんがよしよししてあげる」
『ありがとー』
「私も酔い潰れたら流星くんの家に泊めてもらおうかなー」
『いいよ!』
「あはは」
楽しい時間もあっという間。
また飲む約束ができちゃった。
OLらと別れ、タクシーを捕まえる。
『おい、剛』
「ん」
『帰るぞ』
「かえる」
…仕方ないから今回も俺ん家に泊めよう。また風呂入る、とか、身体拭いて、とか言い出さないといいが。
『ごめんな、剛酒弱いのに連れてきて』
「いい…」
家に着くと、剛がしきりに俺に触れようとしてきた。
『おい…?』
「流星、流星…」
『なんだよ』
「すき」
『え?』
「す、き」
『まだ酔ってるだろ…』
水を飲ませて落ち着かせる。コクコクと水分補給をした剛はまた眠りに落ちた。今日はもうめんどくせえから、Yシャツのまま寝てしまおう。剛にタオルケットをかけて、電気を消した。
翌日。
10時半起床。まあ休みの日だからぼちぼちか。滅茶苦茶に飲んだ訳では無いから二日酔いもない。とりあえず、OLから来ていたラインには『おつかれ』『また飲もう』のスタンプを送信。このくらいの時間では朝飯とは呼べない飯を食うことになる。いっそ昼まで待とう。テレビのチャンネルをコロコロ変えてみても、再放送のドラマしかやっていない。朝とも昼とも言えない時間とはこういうものか。
ちら、と剛を見ても未だ眠りこけている。今日は無理に起こさず自然に起きるまで放っておこう。昼飯を作っていれば音や匂いで分かるだろうと思ったが、案の定起きた。
『おはよ』
「ん…」
眠い目を擦るところが幼さを感じる。
『昼飯はケチャップライスなー。オムライスにしようと思ったけど卵1個しかなかった』
「うん」
いただきます、と二人で手を合わせる。剛の顔色伺うと、まあ美味しそうな顔をしていた。
『昨日の記憶あるか?』
「んー、ない」
『昨日ずっと俺に「すき」って言ってたぞ』
あ、剛がスプーン落とした。
『誰か昨日のメンツで好きな子いたのか?』
「流星」
スプーンを拾って咀嚼を再開した。
『え?』
「流星。俺は流星がすき」
下を向いてさも当然のように咀嚼を続ける剛を凝視するが、もくもくと表情を変えず食い続けている。
『俺…?』
「うん」
『え、ど、どういう事?』
「俺OLのことは恋愛対象として見てないけど、流星のことは恋愛対象として見てる」
『えっ…』
「引いた?」
スプーンを咥えようとした剛がやっと視線を上げて俺と目を合わせた。
『いや…色々…整理がつかない…えーと?ん?え?どこからだ?』
ぐるぐるぐるぐる、色々と考えてみるがなぜ剛が俺を好きなのか理解ができない。だって、俺ら男だぞ?二人とも。
『…とりあえず皿洗うわ』
ずーっと考えていたら、皿洗いにいつもの3倍くらい時間を要してしまった。
『えー。改めて聞きたいと思います』
正座して向かい合う。
「俺は流星がすき」
『いや早えーよオレが質問する前に答えるな』
「すき」
『分かったから落ち着け、静かにしろ。まずなんで俺なん?』
「いっちばん最初の、上司もいる飲み会に参加したのがきっかけ。ちょっとだけだったけど流星と話せてめちゃくちゃ嬉しかった」
『ほお』
「で、次。OLとの飲み会。人数合わせで呼ばれて嫌々参加したけど流星がいたからめっちゃ嬉しかった」
『ふーん』
「で、昨日。流星が好きだと思った。声とか仕草とか。OLには渡したくねーって思った」
『へえ』
「だから流星にすきだって言った」
『うーん…好きだっていう気持ちは人間的なものとしては分かる。でも、剛が俺を好きなことが分からない』
「今の理由だけじゃ足りないってこと?」
『そうじゃなくて…その』
「俺が男だから?」
『…』
「それが分からないってこと?」
『…うん』
「好きになることに性別なんて関係ないよ。俺は流星が好き」
『俺は…俺は分からない。今まで剛とは仲のいい同僚として絡んできたから、どうしていいのか分からない。俺は好きだよ、剛のこと。でもそれは友人とかって言う立場のことであって、恋愛のソレとは違う』
「そう」
『…』
「流星に好きになってもらえるように努力してもいい?」
『いい…けど、俺が恋愛対象として剛を見るかなんて分からないだろ』
「それでもいいから」
あれ?俺剛に押し倒されてる?思考回路を整理する暇もなく、唇に柔らかい感触。あれ?これ剛の唇?俺のに当たってる?おい、と言おうとしたのがまずかった。未だ剛の唇が触れているから。開きかけた唇に舌が侵入してくる。
『…!っ!!』
声にならない俺の声。段々と酸素が失われてゆく。剛を離そうともがくが、両手をホールドされていてはどうにもならない。
どれだけそうしていたかは分からない。もう訳が分かりなくなりそうな時にやっと唇が離れていった。酸素を求めて荒い呼吸をするが、なんだか上手く息を吸えていない。
「えっろ」
『ハァ…ハァ…』
「勃って…ないね」
『…!触んな…ッ』
「俺のはやべぇのに」
『擦り付けてくんなよ…』
「俺が勃たせてあげる」
『ちょっ…!?』
いきなりパンツまで下ろされた。
「デケェ…」
そんな恍惚とした表情で眺めないでくれ。臭えだろ。やめてくれ、と言おうとしたが剛は止まらない。最初は手で、次は口で、と、手を替え品を替え俺のを勃たせようとしている。下を見ると必死になる剛がこちらを上目遣いで見てきて目が合う。
『!』
なんでそんな男らしい顔してんだよ。
俺もなんで剛に下半身許してんだよ。
『あぁ…ッッ、アッ』
「イった…俺も」
そう言うと自身を取り出して俺のと一緒に扱いた。
『…ッン、フ』
「その顔、そそる」
俺と剛のブツからはニチニチといやらしい水分の音がしている。
何とかしようにも、力がどんどん抜けていく。されるがままだ。
結局、俺と剛のがくったりとするまで情事は続いた。
もう起き上がる気力もない。
『気は…済んだか…』
「…済む訳ないじゃん…すきなんだから」
『そうかよ…』
l
あれから数ヶ月。
俺達は何事も無かったかのように日々を生活している。が、職場内ですれ違ったり、ツレに合コンをセッティングされたり。剛と顔を合わせないことはない。はっきり言って、めちゃくちゃ会う。すげー会う。俺はと言えば、結局先の合コンで知り合った清楚系OLにアタックして無事付き合うことになった。晴れて俺に彼女が出来たのだ。
今日は久しぶりに隣席の山田主催の合コンに駆り出された。なんでも、あれからショックで当分合コンに行かなかったらしい。なるほどようやく傷が癒えてきた頃ということか。山田主催の合コンで彼女が出来たのだが、なんだか申し訳なくで未だに言えていない。
ゴメン、山田に合コンの人数合わせに駆り出された、と…。休憩中に彼女にラインを送る。すると、おつかれさまの文字と同時に着信があった。
『あーもしもし、ごめんな』
「おつかれさまー。いいよ。私も丁度合コンに駆り出されたの」
『マジ?もしかして俺んとこの相手チームお前?店の名前○○って言うんだけど』
「あー、そこだよ。なんだ流星いるんだ」
『俺ら付き合ってるって最初に打ち明けて抜けようか』
「そうだね」
そして迎える合コン。
『実は俺たちこの前の合コンで意気投合して付き合うことになりました…というか付き合ってます』的なことを披露。これは明日から山田の目が怖い。顔合わせられねえかも。『じゃあ俺たち先に帰るわ』と、一次会でみんなとはサヨナラを告げる。「お前らどこに行くんだよ」の問いには『ホテルに決まってんだろ』と流す。
結局流したとおりホテルに向かった。
そして朝を迎える。
彼女を家まで送り届け、俺も帰路へつく。よかった昨日が華金で。腰振りすぎて腰痛だよ。おまけに二日酔い。一日寝ていよう。
月曜日。
出勤すると案の定山田の顔がとても怖かった。
「…なんで言ってくれなかったんだよ」
『お前が幹事の合コンで付き合い始めたから、完敗だったお前に言いづらくて…ごめん』
「俺に気をつかってくれてたのか…」
『すまん』
「ま、いいわ。俺もさ、昨日お前が帰ってから…ふふ、彼女が…できたんですわ」
『え?マジ?』
「マジで」
『は!?おめでとう!!!!!』
背中をドンドン叩いて騒いでいたらいつの間にか始業時間になっていて課長に怒られた。その日の夜は急遽いつもの合コン参加メンバーで山田の祝賀会をやることになった。山田と、山田の彼女と、俺と、俺の彼女。それに加えて、剛と他数人OLやらも来るらしい。
『おめでとう、マジおめでとう。彼女できたって言い出せなくてマジごめん』
「もういいって。それより飲もうぜ?」
なんて寛大なんだ。山田。
ちなみに俺の彼女は向こうの席でOL同士で固まって女子会中だ。
「…平手はもうヤッたのか」
『…おん』
男同士で固まると、こんな無粋なネタで盛り上がる。
「どう?」
『感度最高』
「はは。実は今日ヤろうかと思ってて」
『マジか。飲みすぎんなよ』
「おう」
結局飲みすぎたのは俺らしい。ダメだ歩けない。彼女も飲み過ぎたらしく、二人揃って帰れないということで彼女は彼女の同僚に、俺は剛に付き添ってもらって帰ることになった。
『剛』
「何?」
『見過ぎだから』
タクシーの中ではずっと剛に見つめられている。
「見張りしてんの」
『この距離で?つか剛今日酒飲んでないよな?』
「最初の1杯だけ」
『そっかえらいえらい』
頭を撫でくりまわしてやる。コイツ飲むとすぐ酔っ払うからなあ。タクシーの勘定を終えて部屋の鍵を取り出そうとすると、鍵が無いことに気がついた。
『ねえなー』
「俺飲み屋電話してみる」
剛が電話をかけたところ、やはり置き忘れだったようだ。電車は終電だし、明日取りに行くことだけを伝えた。ちなみに剛の家までも少し距離がある。
『んー部屋入れねえのか』
「駅前にホテルあるよね?」
『あー…そこにすっか』
自宅から徒歩数分で駅に着く。いい立地だろ。ホテルも結構並んでて、選んだり迷う余地がありまくる。空いてたらの話だけど。が、ビジネスホテルは全滅だった。どこも満室。
『もう寝れればどこでもいいだろ』
「え?」
剛を引っ張って着いたのはラブホテル。
『おら入るぞ』
「え、うん」
___ごめんなさい続きません!!
幹事が乾杯の音頭を取り、飲み会が始まった。上司先輩らは俺に仕事の苦労を延々と投げかけてくる。しかも決まって全部「俺が若い頃は…」で始まるヤツ。お前らの時代と今は違うんだよ。苦労なんていつの時代もそれなりにあるんだよ、とはさすがに言えないので適当な愛想笑いで誤魔化す。あー面白くねえ。
程なくしてトイレに立つものが現れ、ぼちぼちと席替えが始まった。
この流れで帰ろうかな。そう考えていた時だった。
「飲んでる?」
声をかけてきたのは詩島だった。こいつは…下のフロアの奴だっけ。多分同期、だと思う。採用時に一緒に社員証貰ってたし。
『うん』
「同期だよね。平手さんて何歳なの?」
『今年23』
「あ、一緒だ」
やっぱり同期で同い年だったか。
「詩島ァー」
「はい!」
「酒頼んでくれや」
「はーい、すみませーんビール追加お願いしまァァァす!」
こいつは上司に好かれててポイント高いんだろうな。すぐ本社異動とかしそう。結局年齢の話だけをして、詩島は上司のビールに構うため席を離れていった。こんだけの人数がいるんだ。帰ったって誰も気付かないだろう。とりあえず幹事には「家の都合で…」とかなんとか適当な理由をつけて店を出た。一人暮らしだけど。飲み会代って結構痛手だよな。若手だから負担金額はそれなりだけど、日常生活の中で使うとしたら結構大きい額だぞこれ。
翌日。
フロアには二日酔い重病者が蔓延していた。昨日どんだけ飲んだんだよ…
「おはよっす」
『っす』
隣席の同僚である山田が出勤してきた。
「昨日の飲み会どうだった?やばかった?」
コイツは残業で昨日の飲み会来なかったんだっけ。残業が羨ましいとか感じるの、これが初めてだ。
『俺途中で抜けた』
「だよな、フロアの状況やべーもんな。帰るって選択正しいよ…で、実はそんな平手にお願いがあるんだけど」
『何だよ』
「急で悪いんだけどさ、今日の飲み会出てくれないかな」
『は?』
「歳が近い人で人数揃えたくて…金は俺が払うからさ」
『マジ?』
まあ…タダ酒でさらに歳が近いヤツの集まりなら…飲んでやらんことも無い。うん。
「人数合わせに付き合わせてホントごめん」
かくして定時で切り上げる。
「ごめんな、マジで」
人数合わせに付き合わせていることをただただ平謝りしてくる。けど、帰ったってどうせ一人だしそれならタダ酒飲める方が良いんだよね、俺としては。
『今日の夕飯代浮くし、別にいーよ。で、どんなメンバーなんだよ』
「あーウチの会社の四件隣のビルのOL」
『やっぱり合コンかよ』
「あとアイツも呼んだ」
『アイツ?』
タイミングよく現れたアイツ。
「お待たせ」
「おいおせーぞ剛」
「先輩に引き止められてさ。ごめん、行こう」
結局話が盛り上がったのは俺と剛とOLだけで、俺を誘った山田は完敗だったらしい。やっぱり顔のつくりってそれなりに大事なんだね。父さん母さんご先祖様ありがとう。是非二軒目も、というOLを俺は断れない。一人寂しく家に帰るより絶対良いから。ちら、と剛を見た。既に顔が赤い。昨日はすぐ帰って気が付かなかったが、酒弱いのか。
『詩島、大丈夫か』
「うん。行こ」
一軒目で既に千鳥足の詩島を支えながら二軒目へとはしごする。しきりに腰へと手を回されたが、酔っているのだろうと特に気に留めることはなかった。
「ねえ、平手」
『ん?』
フラフラとした足つきで俺にしがみついてくる詩島。前を歩く同僚とOLは二軒目を探していてこちらを気にする様子はない。
「俺もう眠いや」
『…二軒目行くって言ったのどこのどいつだよ』
「ふふ、おれだね」
ニコニコと返答されてはちょっとイラッとしたものをどこにぶつければいいのか、行き場がなくなる。
『家どこだ?タクシー捕まえるか?』
「いい」
『いいってなんだよ』
「平手のとこ泊めてもらう」
『あ?まあいいけどさ、俺一人だし』
飲みたい気持ちはあるが、今の詩島を放っておいたらやばい気がする。二軒目に入ろうとする同僚を捕まえて、先に帰ることを伝えた。同僚もOLも残念がったが、仕方ない。OLとは適当に連絡先を交換してその場をあとにした。終電まではまだ早いが、詩島を電車に乗せるのは危ないだろう。
タクシーを呼びつけて、飲み屋街を抜ける。走るタクシーの中でしきりに手を握ってきた詩島だったが、既に夢うつつらしい。赤ちゃんかよ。アパートの前で停めてもらい、自宅のドアを開ける。
『ほら、着いたぞ』
「んー、ただいま」
『ただいまじゃねえし』
「ふふ」
とりあえず水を、とコップを差し出すと物凄い勢いで飲み干した。
『明日土曜。仕事なくて良かったな』
「うん。お風呂入る」
『お前風呂入ったらアルコールまわるぞ』
「シャワーだけ!シャワーだけ!」
『駄々をこねるな。もー、シャワーだけな。着替えは俺の出しておくから』
何をやってるんだ俺は。ぐずる詩島がやけに幼く見える。ひとまず浴室へと押し込み、俺は着替えを漁る。体格はそんなに大差ないから俺のスウェット着れるはず。
「出たよー」
『はいはい』
「身体拭いてー」
『はあ?自分で拭けよ』
「無理ですぅー」
何をやってるんだアイツは…。
風呂から出てもなおぐずっている詩島の身体を拭きあげ、スウェットを着せた。
『俺風呂入ってくるから、寝てな』
「やだー」
なんでだよ!
シャワーを浴び終えて戻ると、案の定布団の上に転がりイビキをかいて寝ている詩島がいた。
『おやすみ』
今日だけはとっておきだ。一晩中クーラーを設定温度低くしてかけてやろう。そっとタオルケットを詩島にかけ、俺は来客用の布団を敷いて寝た。
そして翌朝。7時起床。うん、休みの日にしては早く起きたな。スマホで時間を確認すると、昨日飲んだOLからの「また飲もう」という通知が来ていた。ベッドを見ると、もそもそと動く詩島がいた。
『おい、大丈夫か?』
「え、どこココ」
『俺ん家』
「なんで…」
『お前が酔っ払ったから泊めたの』
「マジ…?」
どうやら昨日の記憶が抜け落ちているらしい。
『うん。二日酔い?してないか?』
「してないけど、頭痛い…」
『もー今日は一日寝てろ』
「そうする…ねえ、平手って名前なんなの?」
『え?流星』
「流星ね」
『なんだよ』
「俺アメリカ留学してたからファーストネームで呼びたい派なんだよね」
『あ、そう』
「流星も俺のこと剛って呼んで」
『おう。…剛まだ寝るか?俺朝飯食うけど…つーか食えそう?』
「食べれる」
『ん、準備するわ』
トースターにパンを仕込み、その間にコーヒーを淹れる。一人暮らしのおかげでなんだか手際が良くなった。剛を机まで誘導しパンを咥えさせる。もさもさと咀嚼をしているが、うまく飲み込めていないようだった。
『無理すんなよ』
「ひへない」
『ちゃんと飲み込んでから喋れ』
剛が飲み込むのを見届け、俺も再び咀嚼をはじめる。
「昨日どんな感じだった?」
『あー…俺と剛はOLと盛り上がったけど、他のやつらは完敗だった。俺は剛連れて帰る時にOLと連絡先交換したけど、他のやつらどうなったんだろ…あ、ちなみにもうOLから次の誘い来てたぞ』
「ふーん」
『結構良い顔揃ってたよな。胸もデカかったし』
「俺あんまり興味ないかな」
『そうなのか?』
結構盛り上がってたのに?
「盛り上がるのは良いけど、恋愛対象には見れなかった」
『あーそういう。次飲む時剛も行く?』
「良いよ。狙ってる子いるの?」
『俺の向かいに座ってた子。綺麗めで結構タイプだったなー』
「流星ってそういうのタイプなんだ」
『ケバくない方がいいだろ。しかも昨日終わったあと一番に連絡くれてたんだよ。絶対いけるだろこれ』
「まあ頑張れ」
『おう』
「…俺帰るわ。飯食ったら大丈夫な気がしてきた」
『マジで大丈夫か?駅まで送る』
少し不安だったが、剛を駅まで送り届け、「次飲む予定立てたらいつでも連絡して」との言葉をもらい別れた。
月曜日。出勤早々隣席の山田に話しかけられた。話を聞くと、金曜は可哀想なことに完敗だったらしい。OLの連絡先をゲットしたことと、次に飲む約束を立てていることはコイツには悪いが黙っておいた方が良いだろうと判断した。
昼時には食堂で剛を探す。一人で飯を食ってるらしい剛の隣の席にかけた。
『よっす』
「あ、流星」
『あれからOLと連絡取ってんだけどさ、再来週の金曜日に飲み会になりそうなんだよね。剛は予定空いてる?』
「うん」
『おっ。じゃあ伝えとく』
スマホをいくらか操作し、剛の予定が合うことを相手に伝える。飲み屋はこちら側で探そうと思ったが「行きたいところがあるの」と、相手から提示された。予約も取ってくれるみたいで、なんだか申し訳ない。
そして来たる来週の金曜日。それはもうウキウキしながら仕事をこなした。山田には色々聞かれたが、「高校の時のツレと飲み会」と、テキトーにはぐらかしてきた。
「お待たせー!!」
『待ってないよー、行こう』
そうして飲み会が始まった。
「流星くんそれマジ?」
『うん。だから今日のことは山田に言えなくてさ』
場所はOLセレクトのスポーツバー。
大きなモニターやスクリーンでサッカーの試合が見られる造りになっている。バーではあるがくつろげるようにと、ゆったりした低めのソファ席もあり、中々洒落ていて悪くない。
「うーん。確かに山田くん、二軒目の誘い方とか露骨だったもんね」
『そっかあ。山田が可哀想だから次の合コンで彼女ゲットできるように指導してやってよ』
「えーそしたらまた山田くんと会わなきゃじゃん。やだー」
『やだって可哀想だからやめてやれよー』
「あはは」
山田は結局しつこいのがいけなかったらしい。なるべくソフトにアイツに伝えて次の合コンに活かせるようにしてやろう…。なんてOLと話していたら剛はまた顔を赤くして、全く焦点の定まらない視線をふらふらと漂わせていた。
『おい、剛』
「んー?」
『大丈夫か?』
「んぅ、流星ー」
『なに?』
「すきー」
『あーはいはい、俺も好きだよー』
剛完全に酔ってるな。適当な生返事で寝かせておいてやろう。
「剛くんって、可愛いよね」
「分かるー。弟っぽい」
睡眠タイムに入った剛を見てOL達が微笑む。
『この前の飲み会の時さ、俺と剛先に帰ったじゃん?』
「うん」
『俺の部屋に泊めて酔いが覚めるまで看病したの』
「まじで」
『うん。だから褒めて』
「流星くん偉い!お姉さんがよしよししてあげる」
『ありがとー』
「私も酔い潰れたら流星くんの家に泊めてもらおうかなー」
『いいよ!』
「あはは」
楽しい時間もあっという間。
また飲む約束ができちゃった。
OLらと別れ、タクシーを捕まえる。
『おい、剛』
「ん」
『帰るぞ』
「かえる」
…仕方ないから今回も俺ん家に泊めよう。また風呂入る、とか、身体拭いて、とか言い出さないといいが。
『ごめんな、剛酒弱いのに連れてきて』
「いい…」
家に着くと、剛がしきりに俺に触れようとしてきた。
『おい…?』
「流星、流星…」
『なんだよ』
「すき」
『え?』
「す、き」
『まだ酔ってるだろ…』
水を飲ませて落ち着かせる。コクコクと水分補給をした剛はまた眠りに落ちた。今日はもうめんどくせえから、Yシャツのまま寝てしまおう。剛にタオルケットをかけて、電気を消した。
翌日。
10時半起床。まあ休みの日だからぼちぼちか。滅茶苦茶に飲んだ訳では無いから二日酔いもない。とりあえず、OLから来ていたラインには『おつかれ』『また飲もう』のスタンプを送信。このくらいの時間では朝飯とは呼べない飯を食うことになる。いっそ昼まで待とう。テレビのチャンネルをコロコロ変えてみても、再放送のドラマしかやっていない。朝とも昼とも言えない時間とはこういうものか。
ちら、と剛を見ても未だ眠りこけている。今日は無理に起こさず自然に起きるまで放っておこう。昼飯を作っていれば音や匂いで分かるだろうと思ったが、案の定起きた。
『おはよ』
「ん…」
眠い目を擦るところが幼さを感じる。
『昼飯はケチャップライスなー。オムライスにしようと思ったけど卵1個しかなかった』
「うん」
いただきます、と二人で手を合わせる。剛の顔色伺うと、まあ美味しそうな顔をしていた。
『昨日の記憶あるか?』
「んー、ない」
『昨日ずっと俺に「すき」って言ってたぞ』
あ、剛がスプーン落とした。
『誰か昨日のメンツで好きな子いたのか?』
「流星」
スプーンを拾って咀嚼を再開した。
『え?』
「流星。俺は流星がすき」
下を向いてさも当然のように咀嚼を続ける剛を凝視するが、もくもくと表情を変えず食い続けている。
『俺…?』
「うん」
『え、ど、どういう事?』
「俺OLのことは恋愛対象として見てないけど、流星のことは恋愛対象として見てる」
『えっ…』
「引いた?」
スプーンを咥えようとした剛がやっと視線を上げて俺と目を合わせた。
『いや…色々…整理がつかない…えーと?ん?え?どこからだ?』
ぐるぐるぐるぐる、色々と考えてみるがなぜ剛が俺を好きなのか理解ができない。だって、俺ら男だぞ?二人とも。
『…とりあえず皿洗うわ』
ずーっと考えていたら、皿洗いにいつもの3倍くらい時間を要してしまった。
『えー。改めて聞きたいと思います』
正座して向かい合う。
「俺は流星がすき」
『いや早えーよオレが質問する前に答えるな』
「すき」
『分かったから落ち着け、静かにしろ。まずなんで俺なん?』
「いっちばん最初の、上司もいる飲み会に参加したのがきっかけ。ちょっとだけだったけど流星と話せてめちゃくちゃ嬉しかった」
『ほお』
「で、次。OLとの飲み会。人数合わせで呼ばれて嫌々参加したけど流星がいたからめっちゃ嬉しかった」
『ふーん』
「で、昨日。流星が好きだと思った。声とか仕草とか。OLには渡したくねーって思った」
『へえ』
「だから流星にすきだって言った」
『うーん…好きだっていう気持ちは人間的なものとしては分かる。でも、剛が俺を好きなことが分からない』
「今の理由だけじゃ足りないってこと?」
『そうじゃなくて…その』
「俺が男だから?」
『…』
「それが分からないってこと?」
『…うん』
「好きになることに性別なんて関係ないよ。俺は流星が好き」
『俺は…俺は分からない。今まで剛とは仲のいい同僚として絡んできたから、どうしていいのか分からない。俺は好きだよ、剛のこと。でもそれは友人とかって言う立場のことであって、恋愛のソレとは違う』
「そう」
『…』
「流星に好きになってもらえるように努力してもいい?」
『いい…けど、俺が恋愛対象として剛を見るかなんて分からないだろ』
「それでもいいから」
あれ?俺剛に押し倒されてる?思考回路を整理する暇もなく、唇に柔らかい感触。あれ?これ剛の唇?俺のに当たってる?おい、と言おうとしたのがまずかった。未だ剛の唇が触れているから。開きかけた唇に舌が侵入してくる。
『…!っ!!』
声にならない俺の声。段々と酸素が失われてゆく。剛を離そうともがくが、両手をホールドされていてはどうにもならない。
どれだけそうしていたかは分からない。もう訳が分かりなくなりそうな時にやっと唇が離れていった。酸素を求めて荒い呼吸をするが、なんだか上手く息を吸えていない。
「えっろ」
『ハァ…ハァ…』
「勃って…ないね」
『…!触んな…ッ』
「俺のはやべぇのに」
『擦り付けてくんなよ…』
「俺が勃たせてあげる」
『ちょっ…!?』
いきなりパンツまで下ろされた。
「デケェ…」
そんな恍惚とした表情で眺めないでくれ。臭えだろ。やめてくれ、と言おうとしたが剛は止まらない。最初は手で、次は口で、と、手を替え品を替え俺のを勃たせようとしている。下を見ると必死になる剛がこちらを上目遣いで見てきて目が合う。
『!』
なんでそんな男らしい顔してんだよ。
俺もなんで剛に下半身許してんだよ。
『あぁ…ッッ、アッ』
「イった…俺も」
そう言うと自身を取り出して俺のと一緒に扱いた。
『…ッン、フ』
「その顔、そそる」
俺と剛のブツからはニチニチといやらしい水分の音がしている。
何とかしようにも、力がどんどん抜けていく。されるがままだ。
結局、俺と剛のがくったりとするまで情事は続いた。
もう起き上がる気力もない。
『気は…済んだか…』
「…済む訳ないじゃん…すきなんだから」
『そうかよ…』
l
あれから数ヶ月。
俺達は何事も無かったかのように日々を生活している。が、職場内ですれ違ったり、ツレに合コンをセッティングされたり。剛と顔を合わせないことはない。はっきり言って、めちゃくちゃ会う。すげー会う。俺はと言えば、結局先の合コンで知り合った清楚系OLにアタックして無事付き合うことになった。晴れて俺に彼女が出来たのだ。
今日は久しぶりに隣席の山田主催の合コンに駆り出された。なんでも、あれからショックで当分合コンに行かなかったらしい。なるほどようやく傷が癒えてきた頃ということか。山田主催の合コンで彼女が出来たのだが、なんだか申し訳なくで未だに言えていない。
ゴメン、山田に合コンの人数合わせに駆り出された、と…。休憩中に彼女にラインを送る。すると、おつかれさまの文字と同時に着信があった。
『あーもしもし、ごめんな』
「おつかれさまー。いいよ。私も丁度合コンに駆り出されたの」
『マジ?もしかして俺んとこの相手チームお前?店の名前○○って言うんだけど』
「あー、そこだよ。なんだ流星いるんだ」
『俺ら付き合ってるって最初に打ち明けて抜けようか』
「そうだね」
そして迎える合コン。
『実は俺たちこの前の合コンで意気投合して付き合うことになりました…というか付き合ってます』的なことを披露。これは明日から山田の目が怖い。顔合わせられねえかも。『じゃあ俺たち先に帰るわ』と、一次会でみんなとはサヨナラを告げる。「お前らどこに行くんだよ」の問いには『ホテルに決まってんだろ』と流す。
結局流したとおりホテルに向かった。
そして朝を迎える。
彼女を家まで送り届け、俺も帰路へつく。よかった昨日が華金で。腰振りすぎて腰痛だよ。おまけに二日酔い。一日寝ていよう。
月曜日。
出勤すると案の定山田の顔がとても怖かった。
「…なんで言ってくれなかったんだよ」
『お前が幹事の合コンで付き合い始めたから、完敗だったお前に言いづらくて…ごめん』
「俺に気をつかってくれてたのか…」
『すまん』
「ま、いいわ。俺もさ、昨日お前が帰ってから…ふふ、彼女が…できたんですわ」
『え?マジ?』
「マジで」
『は!?おめでとう!!!!!』
背中をドンドン叩いて騒いでいたらいつの間にか始業時間になっていて課長に怒られた。その日の夜は急遽いつもの合コン参加メンバーで山田の祝賀会をやることになった。山田と、山田の彼女と、俺と、俺の彼女。それに加えて、剛と他数人OLやらも来るらしい。
『おめでとう、マジおめでとう。彼女できたって言い出せなくてマジごめん』
「もういいって。それより飲もうぜ?」
なんて寛大なんだ。山田。
ちなみに俺の彼女は向こうの席でOL同士で固まって女子会中だ。
「…平手はもうヤッたのか」
『…おん』
男同士で固まると、こんな無粋なネタで盛り上がる。
「どう?」
『感度最高』
「はは。実は今日ヤろうかと思ってて」
『マジか。飲みすぎんなよ』
「おう」
結局飲みすぎたのは俺らしい。ダメだ歩けない。彼女も飲み過ぎたらしく、二人揃って帰れないということで彼女は彼女の同僚に、俺は剛に付き添ってもらって帰ることになった。
『剛』
「何?」
『見過ぎだから』
タクシーの中ではずっと剛に見つめられている。
「見張りしてんの」
『この距離で?つか剛今日酒飲んでないよな?』
「最初の1杯だけ」
『そっかえらいえらい』
頭を撫でくりまわしてやる。コイツ飲むとすぐ酔っ払うからなあ。タクシーの勘定を終えて部屋の鍵を取り出そうとすると、鍵が無いことに気がついた。
『ねえなー』
「俺飲み屋電話してみる」
剛が電話をかけたところ、やはり置き忘れだったようだ。電車は終電だし、明日取りに行くことだけを伝えた。ちなみに剛の家までも少し距離がある。
『んー部屋入れねえのか』
「駅前にホテルあるよね?」
『あー…そこにすっか』
自宅から徒歩数分で駅に着く。いい立地だろ。ホテルも結構並んでて、選んだり迷う余地がありまくる。空いてたらの話だけど。が、ビジネスホテルは全滅だった。どこも満室。
『もう寝れればどこでもいいだろ』
「え?」
剛を引っ張って着いたのはラブホテル。
『おら入るぞ』
「え、うん」
___ごめんなさい続きません!!