数十年前───

一郎、空却、左馬刻、簓の4人は地域の夏祭りに来ていた

「祭りもう終わっちゃうな」

「まだ遊びたんねー！」

そう言って頬を膨らませる空却
実をいえば一郎もまだ遊び足りなかった

「じゃあこれから俺ん家来る？」

「まじ？！いいんか！？」

「おう！まだ親は祭りの片付け掛かりそうだし、終わるまで遊ぼうぜ」

「それ俺も行っていい？」

俺もこのあと暇やねん、と簓は続けた

「もちろん」

「おおきに！左馬刻も行くやろ？」

「…おう、合歓も母さんにべったりだしな」

妹に構って貰えない左馬刻は、少し不服そうに了承した


家に着くまでの道を並んで歩いて帰る
田舎ということもあって夜の道は暗いが、一定感覚で立っている街頭を頼りに歩いた

該当の近くを通る度、それぞれの影が道に映る
みんなと会話をしながら何となくそれを見つめ、ふと思いついた事を口に出す


「…なんか、いつの間にか影増えてたりしたら怖くね？」


その発言に1番怖がったのは簓

「え、ちょ、やめてや！そんなこと言われたら見てまうやん？！」

「いってぇ！くっつくんじゃねぇよ気持ち悪ぃ！」

「な、みんなで手ぇ繋いで帰ろ！」

「ビビりすぎだっつの」

「頼むって〜！」

簓の勢いに押され、残りの道はみんな手を繋いで歩く事になった

言い出しておいて簓のビビりように怖くなってしまった一郎も、両隣の人の手をしっかりと握った



「───ってこと、ありましたよね」

「あー、ンなこともあったな」

大人になった2人は、机を挟んで幼い頃の思い出話をしていた

「お前が余計な事言うから、合歓以外と手ぇ繋ぐことになっちまった」

この人は揺るがねぇな、と苦笑いする


「でも、ほんとにふと思ったんすもん。知らない間に6人目の影があったりしたら、まじで怖くないすか？」


「くだんねー…って、あ？」

馬鹿にしようとした所で左馬刻はなにか引っかかったようだ

「どうしました？」

「…なんで"6人目"なんだよ」

「え…？」


「あん時は俺とテメェと簓と空却、普通なら"5人目"だろ」


確かに

なぜ言い間違えたんだろうか


…言い間違えた？


あの時の並び順は？

必死に記憶を呼び覚ます

嫌な汗が流れ落ちる


あの時は…


空却、簓、左馬刻、俺の順だった


なのに、なぜ、


俺は、確かに両手とも手を繋いだのだ


あの時、俺の隣にいたのは…





誰だ？