私と空却さんが並び、机を挟んで空却さんのお父さんが座る

｢このバカ息子が茶も出さずに申し訳ないね｣

『い、いえ、ありがとうございます…いただきます』

受け取ったお茶を啜りながらちらりと空却さんを伺うと、空却さんはクチャクチャとガムを噛みながら頬杖を着いていた

うぅ…気まずい…

緊張のせいかお茶の味がしない

｢空却｣

｢あー？｣

｢さっきお前はこのお嬢さんと一緒に暮らすと言ったが…それはどういう意味だ？｣

｢言ったなァ。そのままの意味だが、分かんねーか？｣

空却さんは自分の頭をトントンと指さす

なんで喧嘩腰なんですか？

そのような態度に慣れているのか、お父さんは溜め息をついて話を続けた

｢そうではなく、何故そうなったか経緯を聞いている｣

｢コイツが帰る場所がないってんで、雨ん中放っとくわけにもいかねぇからな。人を導く僧侶になる男として当然の事をしたまでよ｣

｢…はぁ｣

ケラケラ笑う空却さんに2度目の溜め息をつく父さん

｢…お嬢さん…#夢主#さんと言ったな｣

話を振られ、背筋が伸びる

『はい』

｢#夢主#さん、家は？｣

『えっと…昔は名古屋に住んでたんですけど、最近までは東京の方に…それで、今は…』

家が無い、なんて言えるわけがなかった

｢#夢主#には家に帰れねー理由があんだよ。いちいち他人様が詮索することでもねぇだろ｣

空却さんが前に出て私を庇ってくれる

｢そうはいってもそこらの捨て猫や犬と違うんだ。…聞く所まだ成人もしていないだろう。ご両親が心配する｣

『…！』


親

心配

私にはそんなもの


｢それに東京から来た女性というと…#夢主#さんは中王区から来たのではないのかね？｣


中王区


お母さんが居なくなり、引き取られてからずっと居た場所

いつもひとりぼっちで、常に孤独が付きまとう場所

目の前が暗くなる

気分が悪い

『…ぁ』