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りんごとそり

 セベクが豊作村へ向かったあと、ディアソムニア寮の談話室。
「豊作村か。おばあさまに話を聞いたことがある」
「わしは行ったことがあるぞ」
マレウスとリリアが話をしているところへ、シルバーがやって来た。
「マレウス様、セベクから写真が届きました」
 スマホの画面には、満面の笑みを浮かべてリンゴを頬張るセベクの姿があった。
「ふふ、イイ顔をしておるな」
「セベクも学友との旅を堪能しているのか」
「しかし、セベクはたとえ友人の誘いとはいえ、よくこのようなところへ行く気になったな」
マレウスが首を傾げた。シルバーが尋ねた。
「?どういうことですか、マレウス様」
リリアが口を挟んだ。
「あやつがワニの妖精であることは知っておろう?」
「父君が人間と聞きました」
「ジグボルトの連中は揃って寒がりと聞くが、セベクは耐えられているのだろうか」
「否、それほど心配する必要もないかもしれぬ」
リリアは自分のスマホに送られてきた写真を見て微笑んだ。
「この服装、アップル・ボアというそうじゃが、かなり暖かい。わしも試しに着せてもらったことがあるが快適じゃった。まだスマホで気軽に写真を撮れぬ時代じゃったから、記録を残せなんだのが残念じゃがの」
「親父殿…似合いそうですね」
「ふふふ、そうじゃろうそうじゃろう」
(リリアは機嫌がいい)マレウスは思った。

不意に、ブルブルとシルバーのスマホが震えた。
「シルバー!電話をかけてやったぞ」
「…俺の眠気覚ましのつもりだろうが、五月蠅い。マレウス様もリリア殿もいらっしゃるから、すぴーかーほんというのにするぞ」
シルバーは最近カリムから教わった「すぴーかーほん」という機能を使った。たちまち、セベクの大声が聞こえた。
「若様~~~!!」
「…セベクよ、そのような大声でなくとも聞こえるぞ」
「はっ!リリア様、失礼いたしました!!」
「元気そうだな、セベク」
「はいっ!!豊作村のリンゴをお土産に持って帰りますのでお楽しみを!!」
「ほう、フェルミエによろしく伝えてくれ。時にセベク」
「はいっ、若様!!!!!!」
「…なぜそんな風に声を張り上げている?」
「じじじ、実はっ!!!!声を張り上げていないと、ささささ、寒いのですっ!!!!!!!」
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