真実(ほんとう)の気持ち~エース
俺がユウと体を重ねたことは、二人だけの秘密だった。
あの日以来、それにはお互いに触れず、普段と変わらない日々を続けていた。
4年生になって、俺はいくつかの企業でインターンになり、魔力のないユウはそういう職場体験が出来ないことから、学園長の好意で学園の図書館の実習をしたり、学園長の助手(要は、パシリ)をしていた。そうそう、マレウス先輩の好意で、リリア先輩の助手をする、何てのもやっていた。
ずっと同じように過ごしてきたから、俺たちは忘れていた。
あいつが、もともとこのツイステッドワンダーランドの住人ではないことを。
ユウは、卒業式をあと数日後に迎えるある日、突然消えた。
「親分」のグリムをオンボロ寮のソファに残したまま…。
俺はこっそり学園長にそのことを尋ねたが、いい答えはもらえなかった。
「あの子は元の世界に戻る方法を探していましたからね。勿論私も手を尽くしました。私、優しいので。ですが、返したのは私じゃありません」
「なぜわかるんです」
「異世界への道も、”鏡”が必要なはず、なのですよ。ですが、あなたやスペード君の話では、監督生君は文字通り”消えて”しまったのでしょう」
学園長は嘘をついていないようだった。
「であれば、何らかの形で、魂が呼び戻された…説明はできませんが、そうとしか思えません」
「戻れるんですか」
「わかりませんね…。こんなことはナイトレイブンカレッジ始まって以来ありませんから」
それ以上のヒントは、学園長にもなさそうだった。
卒業後はバラバラになった。デュースは2回の挑戦で警察官の試験に受かり、ジャックは陸上選手として輝石の国の実業団に入った。エペルは故郷に帰ると思いきや、カラテという格闘技の選手になった。セベクは茨の谷へ帰ってマレウス先輩の護衛となり、俺はなんとなく学園に残って、クルーウェル先生の助手をやっている。
成績もちょっと頑張ったんでそこそこいい企業にも入れるところだったが、グリムを残していくのが心配だった。両親も兄貴も、「俺が魔法士学校の先生になる」と言う話をしたら驚いたが、結局俺が決めたことに反対はされなかった。
グリムは相変わらずオンボロ寮に住んでいて、「大魔法士の夢は諦めていないんだゾ」と、毎日鍛練に励んでいた。俺はグリムと一緒に、オンボロ寮に寝泊まりしながらクルーウェル先生の助手になった。3年くらい修業して、基礎授業を持たせてもらえるようになったら昇給させてくれるそうだ。
「仔犬。いやトラッポラ。ネクタイを締めるならボタンをかけろ」
クルーウェル先生は相変わらずだ。
「いや、苦しいんスよ」
「いつまでも学生気分では困る。服装が乱れていたら、学生に舐められるぞ」
「スーツはこれ1着なんスよ。体力育成でもないのに、運動着で授業の手伝いをするわけにもいかないでしょう。書庫の整理の時だけは黙認してもらってますが」
「全くお前は…減らず口は相変わらずだな。仔犬と呼ぶぞ」
「もう立派な成犬のつもりですが」
クルーウェル先生はふっと笑って準備室を出て行ったが、3日後にスーツをくれた。案外優しいんだと思った。
あの日以来、それにはお互いに触れず、普段と変わらない日々を続けていた。
4年生になって、俺はいくつかの企業でインターンになり、魔力のないユウはそういう職場体験が出来ないことから、学園長の好意で学園の図書館の実習をしたり、学園長の助手(要は、パシリ)をしていた。そうそう、マレウス先輩の好意で、リリア先輩の助手をする、何てのもやっていた。
ずっと同じように過ごしてきたから、俺たちは忘れていた。
あいつが、もともとこのツイステッドワンダーランドの住人ではないことを。
ユウは、卒業式をあと数日後に迎えるある日、突然消えた。
「親分」のグリムをオンボロ寮のソファに残したまま…。
俺はこっそり学園長にそのことを尋ねたが、いい答えはもらえなかった。
「あの子は元の世界に戻る方法を探していましたからね。勿論私も手を尽くしました。私、優しいので。ですが、返したのは私じゃありません」
「なぜわかるんです」
「異世界への道も、”鏡”が必要なはず、なのですよ。ですが、あなたやスペード君の話では、監督生君は文字通り”消えて”しまったのでしょう」
学園長は嘘をついていないようだった。
「であれば、何らかの形で、魂が呼び戻された…説明はできませんが、そうとしか思えません」
「戻れるんですか」
「わかりませんね…。こんなことはナイトレイブンカレッジ始まって以来ありませんから」
それ以上のヒントは、学園長にもなさそうだった。
卒業後はバラバラになった。デュースは2回の挑戦で警察官の試験に受かり、ジャックは陸上選手として輝石の国の実業団に入った。エペルは故郷に帰ると思いきや、カラテという格闘技の選手になった。セベクは茨の谷へ帰ってマレウス先輩の護衛となり、俺はなんとなく学園に残って、クルーウェル先生の助手をやっている。
成績もちょっと頑張ったんでそこそこいい企業にも入れるところだったが、グリムを残していくのが心配だった。両親も兄貴も、「俺が魔法士学校の先生になる」と言う話をしたら驚いたが、結局俺が決めたことに反対はされなかった。
グリムは相変わらずオンボロ寮に住んでいて、「大魔法士の夢は諦めていないんだゾ」と、毎日鍛練に励んでいた。俺はグリムと一緒に、オンボロ寮に寝泊まりしながらクルーウェル先生の助手になった。3年くらい修業して、基礎授業を持たせてもらえるようになったら昇給させてくれるそうだ。
「仔犬。いやトラッポラ。ネクタイを締めるならボタンをかけろ」
クルーウェル先生は相変わらずだ。
「いや、苦しいんスよ」
「いつまでも学生気分では困る。服装が乱れていたら、学生に舐められるぞ」
「スーツはこれ1着なんスよ。体力育成でもないのに、運動着で授業の手伝いをするわけにもいかないでしょう。書庫の整理の時だけは黙認してもらってますが」
「全くお前は…減らず口は相変わらずだな。仔犬と呼ぶぞ」
「もう立派な成犬のつもりですが」
クルーウェル先生はふっと笑って準備室を出て行ったが、3日後にスーツをくれた。案外優しいんだと思った。