ポムフィオーレ寮の寮長、ヴィル・シェーンハイト。美意識が高い彼はスーパーモデル”ヴィル”としても有名で、その性別を超越した美しさに惹かれるものは男女問わず多い。

　ヴィルの芸歴は長い。
5歳のころからキッズファッション誌のモデルとして、11歳でドラマにも出た。だが、彼が所属した事務所は子どものタレントは一律に芸名を用い、本名を使わないという方針であったため、ヴィルも”ヴィリー”という芸名で活動していた。キッズモデルは名前を雑誌などに掲載しない事も多く、意外な人物がキッズモデルの経験がある、ということが後からわかることもある。
　とはいえ、今の彼になる前にすでにその美貌は噂になっていた。

　彼は時々思う。自分が子どもの頃同じ事務所に所属し、レッスンを受けていた”同期たち”のその後のことを。
その時から残っている者は少ない。ヴィル自身、最初の事務所から引き抜かれて今の事務所に変わっているし、芸能の世界を去ったものもきっと多い。彼ら彼女たちが幸せなのか、そうでないのか…。
　そのうちのひとりと自分が大きく関わるとは、その時のヴィルは想像もしていなかった。