真実(ほんとう)の気持ち~エース
入学式の時、式典服を着て不思議な使い魔のような獣とともに現れた人物。
多少小柄だと思ったが、エペルやリドル先輩みたいに、成長途中の人もいるし、細っこいのはあいつが小食なだけだと思ってた。ひょろひょろ、ガリガリはイグニハイドの寮長、イデア・シュラウド先輩みたいに偏食だからかもしれないし。
だから、俺はあいつが本当は女だったなんてずっと気づいてなかったんだ。
ユウ。
ちょっぴりハスキーな声で話す。
昼食はコロッケパン1つでおなかいっぱいだそうだ。
魔力がない、別の知らない世界から来た不思議な人物。
大人しそうなのに、妙に毒舌だったり、厭世的だったり。
俺。デュース。ユウ。そしてグリム。
俺たちは「マブ」だった。勿論1年生の中では、ジャックやエペル、セベクとも仲が良かったが、入学式からトラブルメーカーだった俺たちは特別だった。特別だって思ってた。
だから、俺がユウのことを好きなんじゃないかと思った時、一番驚いたのは俺自身だった。
だって男同士だろ…。そっちのケはないってずっと思ってたし、だからこの気持ちを抑え込んで、誰にも知られちゃいけないんだと思った。それでも、気づいたらあいつのことを目で追ってしまっていた。
同性愛なんて不毛だし、建設的じゃない。それにきっとこれはひと時の気まぐれな感情。だから、忘れてしまえ。そう思っていた。
だって俺ら、マブじゃん。
それなのに。
俺がユウのことを女だと知ったのは、本当に偶然だった。
オンボロ寮のバスルームで包帯みたいなものがとぐろを巻いているのを見つけてしまった時も、どんな酷いけがをしたのかって心配したくらいだった。だけどバスルームから出てきたあいつは…
「え、エースっ?!」
「お、まえ…なんだその胸…」
俺たち男にはあり得ない、ふくらんだ胸。一瞬だけ不覚にも見えてしまったが、あいつには男にあるべきものがなかった。俺は言葉を失った。
声もなくバスタオルを巻いて自分の部屋へ走っていったユウは着替えをして戻って来た。そして、俺に話があるといった。
ユウのやつ、胸を晒した布を体に巻き付けて、胸の膨らんでるのを誤魔化していたんだって。それは、学園長の助言でもあった。
確かに、男子校のはずのNRCに女がいるなんて…兄貴の時代だってそんなのありえなかった。だから男のふりをして、学園長にかけてもらった幻惑魔法で、周りにユウを「男子生徒」と認識させながら過ごしてきたのだ。余談だがグリムはユウを女だと知っていて、
「男だろうが女だろうが、こいつは俺サマの子分なんだゾ」
と言い放った。
「エース…ごめん、騙してたわけじゃない」
「知ってるよ。俺が逆の立場でも、きっと同じことをしていた」
「みんなには内緒にして」
いつもの、弱っちく見えるくせに時々毒舌なユウじゃなかった。本当に弱くて、焦っていて、…可愛い、と思った。
「バーカ、そんなことべらべらと喋んねえよ」
「ありがと」
「秘密は、俺の胸の中にしまっておくさ」
その言葉に、ユウはしばらく瞳を閉じて考え込んでいたようだが、やがて顔を上げた。
そして。俺はユウの顔を見て自分の思いを告げた。
お前のことずっと好きだったんだ。
だからさ、お前が女で、よかった。
俺の言葉に、ユウの瞳から涙があふれた。
嘘だろ、と思った。そして、自分の気持ちを言ってしまったことを一瞬後悔しそうになった。あいつの言葉を聞くまでは。
「ほんとは、私もエースのこと、ずっと好きだった」
俺は思わずユウを抱きしめ、夢中になって唇を重ねた。ユウは大人しくそれを受け止めた。信じられなかった。
「いい、か」
俺の問いに、ユウは「何が」とは尋ねなかった。きっとわかってたんだと思う。
「ここ、は、ダメ」
「…」
目と目が合って、また自然に二人でキスをした。それから、二人でユウの部屋へいった。
ユウは、まぎれもなく女の子だった。俺の腕の中で微笑み、俺に身を預けてきた。柔らかくて、胸も膨らんでて、肌はすべすべで、いい匂いがした。あいつは胸が小さいことを気にしてたけど、そんなこと俺にはどうでもよかった。
胸の先を弄ると、普段はあり得ないくらい可愛い声で啼いた。最初は、小鳥がついばむようなキス。それからもっともっと深く、舌を絡めて、激しく求め合うように。
肩、背中、胸、腰。指でそっとなぞると、ぶるっと身を振るわせ、甘い声で「エース」と囁くあいつ。
「もし女の子と、そういうことになったら無理やりにしないで優しく、ほぐしてやるんだ」
兄貴にそう教えられた通り、俺はユウの大事なところをゆっくり、ゆっくりとほぐした。俺のことを受け入れる時、なるべく痛みがないように。
「ユウ」
「なに?」
「お前さ、本当に女の子だったんだな」
ユウは黙ってうつむいた。その耳元に「可愛いよ」と囁くと、体中が綺麗に染まった。愛しくて、俺はユウを抱きしめた。
二人とも初めてで、最初はうまくいかなくて、でも何度か試してやっと、ひとつになった。ユウの中はとても気持ち良くて、俺は夢中になった。ユウも気持ちよさそうに、何度も可愛い声を上げて、そのたびに俺はあいつの中にもぐりこみたくなった。
二人とも果てたあとも、俺たちはオンボロ寮のユウのベッドの上で抱き合っていた。
「エース…」
「ごめん、無理、させた」
「ううん。…嬉しいよ」
これは、一晩だけの夢。二人で、そう誓った。だから、俺たちが結ばれたことは悪いけどデュースにも内緒だった。お互いの思いを、一度だけかなえて、その後はまたいつも通りの生活へ戻っていくんだ。
それでいいと思ってた。
それが、違うんだと気づいたのは、随分後になってからだった。
多少小柄だと思ったが、エペルやリドル先輩みたいに、成長途中の人もいるし、細っこいのはあいつが小食なだけだと思ってた。ひょろひょろ、ガリガリはイグニハイドの寮長、イデア・シュラウド先輩みたいに偏食だからかもしれないし。
だから、俺はあいつが本当は女だったなんてずっと気づいてなかったんだ。
ユウ。
ちょっぴりハスキーな声で話す。
昼食はコロッケパン1つでおなかいっぱいだそうだ。
魔力がない、別の知らない世界から来た不思議な人物。
大人しそうなのに、妙に毒舌だったり、厭世的だったり。
俺。デュース。ユウ。そしてグリム。
俺たちは「マブ」だった。勿論1年生の中では、ジャックやエペル、セベクとも仲が良かったが、入学式からトラブルメーカーだった俺たちは特別だった。特別だって思ってた。
だから、俺がユウのことを好きなんじゃないかと思った時、一番驚いたのは俺自身だった。
だって男同士だろ…。そっちのケはないってずっと思ってたし、だからこの気持ちを抑え込んで、誰にも知られちゃいけないんだと思った。それでも、気づいたらあいつのことを目で追ってしまっていた。
同性愛なんて不毛だし、建設的じゃない。それにきっとこれはひと時の気まぐれな感情。だから、忘れてしまえ。そう思っていた。
だって俺ら、マブじゃん。
それなのに。
俺がユウのことを女だと知ったのは、本当に偶然だった。
オンボロ寮のバスルームで包帯みたいなものがとぐろを巻いているのを見つけてしまった時も、どんな酷いけがをしたのかって心配したくらいだった。だけどバスルームから出てきたあいつは…
「え、エースっ?!」
「お、まえ…なんだその胸…」
俺たち男にはあり得ない、ふくらんだ胸。一瞬だけ不覚にも見えてしまったが、あいつには男にあるべきものがなかった。俺は言葉を失った。
声もなくバスタオルを巻いて自分の部屋へ走っていったユウは着替えをして戻って来た。そして、俺に話があるといった。
ユウのやつ、胸を晒した布を体に巻き付けて、胸の膨らんでるのを誤魔化していたんだって。それは、学園長の助言でもあった。
確かに、男子校のはずのNRCに女がいるなんて…兄貴の時代だってそんなのありえなかった。だから男のふりをして、学園長にかけてもらった幻惑魔法で、周りにユウを「男子生徒」と認識させながら過ごしてきたのだ。余談だがグリムはユウを女だと知っていて、
「男だろうが女だろうが、こいつは俺サマの子分なんだゾ」
と言い放った。
「エース…ごめん、騙してたわけじゃない」
「知ってるよ。俺が逆の立場でも、きっと同じことをしていた」
「みんなには内緒にして」
いつもの、弱っちく見えるくせに時々毒舌なユウじゃなかった。本当に弱くて、焦っていて、…可愛い、と思った。
「バーカ、そんなことべらべらと喋んねえよ」
「ありがと」
「秘密は、俺の胸の中にしまっておくさ」
その言葉に、ユウはしばらく瞳を閉じて考え込んでいたようだが、やがて顔を上げた。
そして。俺はユウの顔を見て自分の思いを告げた。
お前のことずっと好きだったんだ。
だからさ、お前が女で、よかった。
俺の言葉に、ユウの瞳から涙があふれた。
嘘だろ、と思った。そして、自分の気持ちを言ってしまったことを一瞬後悔しそうになった。あいつの言葉を聞くまでは。
「ほんとは、私もエースのこと、ずっと好きだった」
俺は思わずユウを抱きしめ、夢中になって唇を重ねた。ユウは大人しくそれを受け止めた。信じられなかった。
「いい、か」
俺の問いに、ユウは「何が」とは尋ねなかった。きっとわかってたんだと思う。
「ここ、は、ダメ」
「…」
目と目が合って、また自然に二人でキスをした。それから、二人でユウの部屋へいった。
ユウは、まぎれもなく女の子だった。俺の腕の中で微笑み、俺に身を預けてきた。柔らかくて、胸も膨らんでて、肌はすべすべで、いい匂いがした。あいつは胸が小さいことを気にしてたけど、そんなこと俺にはどうでもよかった。
胸の先を弄ると、普段はあり得ないくらい可愛い声で啼いた。最初は、小鳥がついばむようなキス。それからもっともっと深く、舌を絡めて、激しく求め合うように。
肩、背中、胸、腰。指でそっとなぞると、ぶるっと身を振るわせ、甘い声で「エース」と囁くあいつ。
「もし女の子と、そういうことになったら無理やりにしないで優しく、ほぐしてやるんだ」
兄貴にそう教えられた通り、俺はユウの大事なところをゆっくり、ゆっくりとほぐした。俺のことを受け入れる時、なるべく痛みがないように。
「ユウ」
「なに?」
「お前さ、本当に女の子だったんだな」
ユウは黙ってうつむいた。その耳元に「可愛いよ」と囁くと、体中が綺麗に染まった。愛しくて、俺はユウを抱きしめた。
二人とも初めてで、最初はうまくいかなくて、でも何度か試してやっと、ひとつになった。ユウの中はとても気持ち良くて、俺は夢中になった。ユウも気持ちよさそうに、何度も可愛い声を上げて、そのたびに俺はあいつの中にもぐりこみたくなった。
二人とも果てたあとも、俺たちはオンボロ寮のユウのベッドの上で抱き合っていた。
「エース…」
「ごめん、無理、させた」
「ううん。…嬉しいよ」
これは、一晩だけの夢。二人で、そう誓った。だから、俺たちが結ばれたことは悪いけどデュースにも内緒だった。お互いの思いを、一度だけかなえて、その後はまたいつも通りの生活へ戻っていくんだ。
それでいいと思ってた。
それが、違うんだと気づいたのは、随分後になってからだった。
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