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雪割草とテラリウムージェイド

 その後、ジェイドは時々セシリアと山へ出かける日々が続いた。

「え~、せっかくの休みなのに、ジェイドまた山にいくの~?」
フロイドはへそを曲げていた。
「はい、テラリウムの材料になりそうな苔を見つけたので」
「俺の靴見に行くっていったのに」
「アズールがいるでしょう」
「最近ジェイド付き合い悪いんだもん。つまんねー」
「まあまあ、僕が行きますから。フロイドも拗ねるんじゃありませんよ」
 ジェイドはアズールに「あとは頼みます」と告げて、出かけた。

 魔法の鏡を抜けてジェイドがやってきたのは、輝石の国の中では比較的雪の少ない山だった。
今日の山は、麓にお土産屋さんや山小屋カフェがある。お土産屋さんの軒先で、セシリアは可愛い鉢植えを見つけた。
「可愛い花が咲いてる。ジェイドさん、これって」
「これも、雪割草ですね」
「この間のお花と、色が違いますね…」
セシリアは雪割草の花をかなり長いこと眺めていた。
白、薄紫、ピンク。余程気に入ったのだろうか。長いこと眺めているセシリアの横顔に、ジェイドはなぜか胸が高鳴るのを感じた。
(雪割草の花も愛らしいですが、セシリアさんは…とても愛らしい…)
振り返って自分の名前を呼ぶセシリアに気づくと、急にジェイドは恥ずかしくなった。
「どうしたんですか?」
「いえ…」
「ジェイドさんも雪割草に見とれてたんですね」
「なかなか見ものでしたからね。熱心に見ておられたようですが、気に入ったのですか」
セシリアは消え入りそうな声で「はい」と言った。
「先に採取に行きましょう。後でお店に寄って、鉢植えを選びましょうね」
 その言葉に、にっこりと微笑むセシリアを見て、またジェイドはドキドキした。
(本当に、可愛らしい方だ)

 キノコは見つからなかったが、テラリウム用の苔を少し採取し、二人は麓の販売所にやって来た。
 雪割草の苗は、ほかの高山植物の苗と同じように店先で売られていた。
「2株1500マドル」
セシリアは苗の前でうろうろとしていた。
「どうされましたか」
「苗が欲しいんですけど…ばら売りはしてないんですね。この間の株があるので、二株も育てる場所がなくて」
「それでは、僕とセシリアさんで苗を分けてはいかがですか」
その提案に、セシリアの顔は輝いた。
 その後に入った麓の山小屋カフェで、紅茶とケーキを楽しみながら、セシリアの表情はずっと輝いていた。

 こうして、ジェイドの部屋には新しく「雪割草コーナー」が加わった。
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