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三日間の恋人~レオナ

 朝焼けの平原から正式な婚約の書類が届けられる頃、クローディアのもとに街の宝石屋から修理された手鏡が届いた。
「お客様の手鏡に使われたものと同じ蝶番は廃盤になっておりました」
 宝石屋の主人はテナガザルの獣人だ。大変腰が低いことで知られていた。
「代わりに、同じサイズのこちらに付け替え、欠けた石も継いでおきましたがいかがでしょう」
「ありがとうございます。さすが、腕がよいと噂されることはありますね。こちらに頼んで正解でした」
「恐縮でございます。私どもはお客様のご要望に応えるのが仕事ですから。それと」
 宝石屋の主人が取り出したのは、箱に入った包みだった
「レオナ殿下からの贈り物でございます。お収めください」
クローディアがその包みを開けると、出てきたのは文箱だった。
「これは…」
 蓋の表面に宝石のかけらやビーズがちりばめられた文箱を受け取り、戸惑いながらクローディアは宝石屋の主人を見送った。
 レオナからは既に、誕生日プレゼントの名目でネックレスをもらっている。高価なものではないというが、石の入ったものだ。それなのに、さらに贈り物とはどういうことだろう。

 レオナが文箱を送った理由は、蓋を開けた時に分かった。
白い上質の封筒に

「クローディア・フェルマン嬢へ

    レオナ・キングスカラーより」

という流麗な文字が書かれた手紙が入っていたのだ。

 手紙には、これまた流麗な文字で文章がしたためられていた。

「愛しいディアへ

  これから毎月、手紙を送る。

  お前も手紙を送ってくれ。

  これから番になる相手のことをもっと知りたい。

   心から、お前を愛している
                 レオナXX」

 レオナの低い声が聞こえてくるようだった。
便箋はもう一枚ついていた。

「追伸

   朝焼けの平原への親書で、お前が正式に俺の婚約者と
   認められたそうだ。
   婚約破棄の書類を砂にしておいてよかった。

   今更、従者を寄越すと言っているが
   義姉貴は今つけている侍女で事足りると言っている。
   蝶番の代金はお前の親父に払わせた。
   持参金には安すぎるくらいだがな。
   お前もなにか必要なら言え。遠慮するな」

 クローディアは笑った。

「それなら、服を何枚か新調しようかしら。レオナに気に入ってもらえるといいのだけど」
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