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食いしん坊万歳~グリム

 グリムのボロボロの原因は結局キノコが「疑わしい」というところまでしかわからなかった。

「監督生さん、今日は”山を愛する会”の部活の日ですよ」

そう、僕はなぜか、ジェイド先輩の同好会「山を愛する会」に入れられてしまったのだ。
 他にも、ラギー先輩の借りを返すためと、グリムに付き合って「マジフト部」、元の世界でやっていたサックスが役に立って、リリア先輩から誘われた「軽音部」と、既に部活を掛け持ちしているのに。
 なぜか、「山を愛する会」の会員になってしまった。

「さあ、今日は裏山に採集に行く日ですよ」
ジェイド先輩が迎えに来た。いつものあの、何を考えているかわからない笑顔だ。
 このウツボの双子のうち、フロイド先輩は何を考えているのかわからない不気味さがあり、ジェイド先輩は礼儀正しい笑顔の中に何か底知れないものがある恐怖を感じる。が、なぜかこの双子に僕は気に入られている。もちろん、オクタヴィネル寮長のアズール先輩も含めて「絶対に敵に回してはいけない人リスト」のメンバーだ。

「ああ、ここにこんなにたくさんのキノコが」
ジェイド先輩はほくほくした顔でキノコを採集している。僕はげんなりしながら、キノコ狩りに付き合った。かなりの収穫を得てジェイド先輩はご満悦だったが、この大量のキノコが料理され、フロイド先輩がげんなりしながら食べるのか、それともモストロ・ラウンジの特別メニューになるのかと考えると、微妙な気分になった。

 それから2日後。
「よう監督生。こんなところに」
この声はトレイ先輩だ。
「どうかしましたか」
「この間の鯖缶の成分の分析が終わったので、伝えに来たんだ」
「あ、ありがとうございます。それでどうなりました?」
実は、グリムのボロボロの原因を探るため、科学部の先輩に頼んで、鯖缶の分析をしてもらったのだ。
「アレルギーは鯖缶じゃなかった」
「何だったんですか」
「それが…」
そこへ、どたどたと誰かが走ってくる音が聞こえた。
「小エビちゃ~~~ん!!ここにいたの~」
フロイド先輩だ。珍しく慌てている。
「ど、どうしたんですか?」
「ジェイドの顔にボロボロが出たんだよ~~~~」

 ボロボロ…ボロボロ?それって、この間グリムの体に出た奴と同じ?

 ということは???????

 ジェイド先輩、昨日何を食べたんだっけ?昨日は「山を愛する会」の活動で採れたキノコを料理すると言って…キノコ???

「フロイド先輩、昨日、ジェイド先輩夕食に何食べてました?」
「えー?昨日?なんか変なキノコをたくさんざるに持ってきて、食堂の厨房を借りてたみたいだけど」

「人間!ここにいたのか」
相変わらず声がでかい…ディアソムニア寮のセベク・ジグボルトだ。
「…セベク?どうしたの?」
「シルバーが…お前のところのグリムと同じようなボロボロが出たんだ。お前は何か知らないか?!」
 そういえば、シルバー先輩は以前、ジェイド先輩が作ったキノコのリゾットを食べて美味しいと言っていたが…まさか…
「トレイ先輩、ボロボロの原因って」
「コロコロフクロダケっていう毒性のあるキノコの成分が、鯖缶から発見されたんだ。このキノコの毒性の話は、魔法薬学各論、つまり3年生の授業でしか取り扱わない。コロコロフクロダケは、食用のフクロダケとよく似ていてな。うっかり食っちまう奴がたまにいるんだ」

つまり、ジェイド先輩は…

「そうだ。たいていはグリムみたいに全身ボロボロの発疹が出るが、たまに食物アレルギーで出る、アナフィラキシーショックに似た症状が出るほど危険なキノコなんだ」

トレイ先輩の話に、僕は頭を抱えた。


 結局、ジェイド先輩もシルバー先輩もコロコロフクロダケは少量しか食べていなかったため、3日ほどで発疹は消えたが、授業に出られないほど痛いので休んでいた。ウツボ兄弟の片割れがいないのは妙な感じだったし、巻き込まれたシルバー先輩は気の毒だったが、驚くべきことに、ジェイド先輩はそんなひどい目にあってすら、キノコへの愛情が消えなかったのだ。

「もう二度とキノコは食べないんだゾ」

だが僕は知っている。グリムがうまいうまいと食べていたツナ缶に、キノコのエキスが入っていたことを…
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