父の面影
「マルティナの部屋に?いいの?」
久しぶりにデルカダール城に戻った一行は、王の好意で城内の客間に宿泊することになった。
その晩、マルティナがベロニカとセーニャに、自室に泊まることを提案した。
「もちろんよ。この間クローゼットを見たら、あなたたちに似合う服を見つけたの」
珍しくマルティナがはしゃぐ様子を見せた。
「お姉様、マルティナさまもああ言ってくださることですし」
「そうね、マルティナからの誘いじゃね。それにあたし、お姫様の部屋って気になるの」
「大したことないわよ。シャール様のお部屋みたいに優雅でもないし」
それでも、好奇心をそそられたベロニカとセーニャはマルティナの部屋に泊まることになった。
「これは、私がお城にいたら着るはずだった服」
ベロニカは水色の総レースのワンピースを着せられ、三つ編みの髪を解いてリボンを結ばれた。
「とても可愛らしいですわ」
「似合う〜?」
「可愛いわよ、ベロニカ。あなたがお姫様って言われてもおかしくないくらい」
セーニャはというと、これまた大人っぽいラベンダー色のドレスを着せられている。
「マ、マルティナ様…こ、これお胸が」
確かに、デコルテを強調する肩を出すドレスで胸がスカスカだ。マルティナは腕組みをして、一旦ドレスを脱がせ、セーニャに胸パッドをつけてその上からドレスを被せた。
「うん、大丈夫」
「ねえマルティナ。セーニャの着てるのは誰のドレス?」
「あれは…私のお母様の形見らしいわ」
「それにしてもマルティナ様」
セーニャはしみじみとマルティナを見つめた。
「男装すると、見事に王子様ですわ」
「背も高いし、スタイルいいもんねえ。
ね、セーニャ。マルティナって誰かに似てない?」
セーニャは小首をかしげていたが、
「そう言えば、デルカダール王様によく似ていらっしゃるような」
「お、お、お父様?!」
「ほんとだ!ねえマルティナ、そこのガウン羽織ってみて」
ベロニカは開いたクローゼットにかかっていたガウンを指差した。マルティナがそのもふもふのガウンを羽織ると、双子娘はきゃあきゃあとはしゃいだ。
「姫様、もう遅いのでお静かに…?!」
マルティナの乳母がドアを開けた。
「…だんなさま…いえいえ、まさか…姫様?!」
マルティナは困惑した顔で乳母を見つめた。
「ねえルナ、私そんなにお父様に似ていて?」
「はい、姫様。今のそのお姿、だんなさまが王位を継ぐ前、奥様と結婚する前の姿にそっくりでございますよ」
マルティナは微妙な表情を浮かべ、そろそろ休むからと乳母を返した。
「ねえマルティナさん」
ベロニカが話しかけた。
「何?」
「あのさ、さっきの話…マルティナさんがデルカダールの王様に似ているって話。あれ、気にしてるの?」
「それは…」
「気にすることないと思うよ。っていうか、むしろすごくない?
だってさ、男装したマルティナさんがお父さんの若いころに似てるってことは。王様若いころイケメンだったってことじゃん!!」
「そうですよ。それに、マルティナ様は将来デルカダールの女王になるお方です。凛々しき戦姫でよろしいのでは」
「そう…かもね…」
大好きなお父様の面影があると言われるのは嬉しいけれど、もうしちょっと可愛いと思われたいな、という複雑なマルティナであった。
久しぶりにデルカダール城に戻った一行は、王の好意で城内の客間に宿泊することになった。
その晩、マルティナがベロニカとセーニャに、自室に泊まることを提案した。
「もちろんよ。この間クローゼットを見たら、あなたたちに似合う服を見つけたの」
珍しくマルティナがはしゃぐ様子を見せた。
「お姉様、マルティナさまもああ言ってくださることですし」
「そうね、マルティナからの誘いじゃね。それにあたし、お姫様の部屋って気になるの」
「大したことないわよ。シャール様のお部屋みたいに優雅でもないし」
それでも、好奇心をそそられたベロニカとセーニャはマルティナの部屋に泊まることになった。
「これは、私がお城にいたら着るはずだった服」
ベロニカは水色の総レースのワンピースを着せられ、三つ編みの髪を解いてリボンを結ばれた。
「とても可愛らしいですわ」
「似合う〜?」
「可愛いわよ、ベロニカ。あなたがお姫様って言われてもおかしくないくらい」
セーニャはというと、これまた大人っぽいラベンダー色のドレスを着せられている。
「マ、マルティナ様…こ、これお胸が」
確かに、デコルテを強調する肩を出すドレスで胸がスカスカだ。マルティナは腕組みをして、一旦ドレスを脱がせ、セーニャに胸パッドをつけてその上からドレスを被せた。
「うん、大丈夫」
「ねえマルティナ。セーニャの着てるのは誰のドレス?」
「あれは…私のお母様の形見らしいわ」
「それにしてもマルティナ様」
セーニャはしみじみとマルティナを見つめた。
「男装すると、見事に王子様ですわ」
「背も高いし、スタイルいいもんねえ。
ね、セーニャ。マルティナって誰かに似てない?」
セーニャは小首をかしげていたが、
「そう言えば、デルカダール王様によく似ていらっしゃるような」
「お、お、お父様?!」
「ほんとだ!ねえマルティナ、そこのガウン羽織ってみて」
ベロニカは開いたクローゼットにかかっていたガウンを指差した。マルティナがそのもふもふのガウンを羽織ると、双子娘はきゃあきゃあとはしゃいだ。
「姫様、もう遅いのでお静かに…?!」
マルティナの乳母がドアを開けた。
「…だんなさま…いえいえ、まさか…姫様?!」
マルティナは困惑した顔で乳母を見つめた。
「ねえルナ、私そんなにお父様に似ていて?」
「はい、姫様。今のそのお姿、だんなさまが王位を継ぐ前、奥様と結婚する前の姿にそっくりでございますよ」
マルティナは微妙な表情を浮かべ、そろそろ休むからと乳母を返した。
「ねえマルティナさん」
ベロニカが話しかけた。
「何?」
「あのさ、さっきの話…マルティナさんがデルカダールの王様に似ているって話。あれ、気にしてるの?」
「それは…」
「気にすることないと思うよ。っていうか、むしろすごくない?
だってさ、男装したマルティナさんがお父さんの若いころに似てるってことは。王様若いころイケメンだったってことじゃん!!」
「そうですよ。それに、マルティナ様は将来デルカダールの女王になるお方です。凛々しき戦姫でよろしいのでは」
「そう…かもね…」
大好きなお父様の面影があると言われるのは嬉しいけれど、もうしちょっと可愛いと思われたいな、という複雑なマルティナであった。
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