ゆうべはおたのしみでしたね
「よう、みんな、枕投げやろうぜ!」
ククールの言葉に、僕とヤンガスは顔を見合わせた。
「枕・・・なげ?」
「ああ、なんだか極東の町で流行ってるらしい」
「どこで仕入れてきたんでがすか、その知識」
「これだよこれ」
ヤンガスの質問に、ククールは先ほどレストランでもらってきた無料のパンフレットみたいな冊子をひらひらさせた。
そこには、「枕投げ」という遊びのルールと実際に遊んでいる写真が載っていた。うん、なんだか楽しそうだ。
「うわ、なんかうるさそう。寝るわ私。このところお肌の調子がいまいちなんだよね~。お休み~」
ゼシカは僕たちと違う部屋をとっているので仕方がないが、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。
本当なら、憎きドルマゲスとの決戦が近いから作戦も立てなければならないし、必要な武器防具を買い、薬草なども仕入れなければならない。だが、その重圧はかなりのものだ。一晩くらいは、羽目を外してもいいだろう。
「わしも仲間に入れてくれ。体がなまっておるんじゃ」
ほら、ククールのおちゃらけを止めなきゃいけないトロデ王様自身がはしゃいでいる。魔物の姿ではしゃいでもあんまり可愛くないけど。しかもいつの間にか変わった衣服を着ている。
「いいでがすが…おっさんその衣服いつの間に!?」
ククールがそばでにやりと笑った。
「宿の人に借りてきたんだ。小さい子がいるから着替えを貸してくれって」
おいおい、どんだけ口から出まかせなんだこの人は。
「レンタル衣装って、何ゴールドかかるんですか!ただでさえ決戦に向けて節約しなきゃいけないのに…」
「細かいぜ、エイト。商人トルネコみたいだ」
さっきのレストランでシャンパン空けたのは誰なんだと僕は恨めしそうにククールを見つめた。
「大丈夫でがすよ、兄貴。これは宿屋のサービスの”ユカタ”っていうローブで、宿賃に入っているでがす」
金銭の出入りにはうるさい、元盗賊のヤンガスはそのあたりしっかりしている。悪党だった彼だが、僕を「兄貴」と呼んで慕ってくれるのはなかなかこそばゆい。
「さあ、始めるぞい」
トロデ王は自分の体の大きさの半分くらいある枕をつかみ、ヤンガスに投げた。ヤンガスが鼻から息を吹きながらその枕をキャッチして、ククールに投げた。ククールには当たらず、彼は自分のところにある枕をつかんで投げる。僕は当たらないように逃げながら、小さな枕を投げる。楽しい。こんなアクティビティ、もっと早く知っていれば今までの戦いもつらくなかったのに。
翌朝。
枕投げで寝不足な男性陣を、ゼシカは呆れたように腕組みをして見ていた。
何をどう勘違いしたのか、宿の主人は
「ゆうべはおたのしみでしたね」
などと言ってくる。ヤンガスはレンタルの小さいユカタを受付に返しながら、
「いや、枕投げで大乱闘しただけでげすよ」
とぼやいた。
宿屋の主人が枕投げ選手権のチャンピオンだと知ったのは、僕たちがドルマゲスを倒してもう一度この街の宿屋に泊まった時だった。
ククールの言葉に、僕とヤンガスは顔を見合わせた。
「枕・・・なげ?」
「ああ、なんだか極東の町で流行ってるらしい」
「どこで仕入れてきたんでがすか、その知識」
「これだよこれ」
ヤンガスの質問に、ククールは先ほどレストランでもらってきた無料のパンフレットみたいな冊子をひらひらさせた。
そこには、「枕投げ」という遊びのルールと実際に遊んでいる写真が載っていた。うん、なんだか楽しそうだ。
「うわ、なんかうるさそう。寝るわ私。このところお肌の調子がいまいちなんだよね~。お休み~」
ゼシカは僕たちと違う部屋をとっているので仕方がないが、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。
本当なら、憎きドルマゲスとの決戦が近いから作戦も立てなければならないし、必要な武器防具を買い、薬草なども仕入れなければならない。だが、その重圧はかなりのものだ。一晩くらいは、羽目を外してもいいだろう。
「わしも仲間に入れてくれ。体がなまっておるんじゃ」
ほら、ククールのおちゃらけを止めなきゃいけないトロデ王様自身がはしゃいでいる。魔物の姿ではしゃいでもあんまり可愛くないけど。しかもいつの間にか変わった衣服を着ている。
「いいでがすが…おっさんその衣服いつの間に!?」
ククールがそばでにやりと笑った。
「宿の人に借りてきたんだ。小さい子がいるから着替えを貸してくれって」
おいおい、どんだけ口から出まかせなんだこの人は。
「レンタル衣装って、何ゴールドかかるんですか!ただでさえ決戦に向けて節約しなきゃいけないのに…」
「細かいぜ、エイト。商人トルネコみたいだ」
さっきのレストランでシャンパン空けたのは誰なんだと僕は恨めしそうにククールを見つめた。
「大丈夫でがすよ、兄貴。これは宿屋のサービスの”ユカタ”っていうローブで、宿賃に入っているでがす」
金銭の出入りにはうるさい、元盗賊のヤンガスはそのあたりしっかりしている。悪党だった彼だが、僕を「兄貴」と呼んで慕ってくれるのはなかなかこそばゆい。
「さあ、始めるぞい」
トロデ王は自分の体の大きさの半分くらいある枕をつかみ、ヤンガスに投げた。ヤンガスが鼻から息を吹きながらその枕をキャッチして、ククールに投げた。ククールには当たらず、彼は自分のところにある枕をつかんで投げる。僕は当たらないように逃げながら、小さな枕を投げる。楽しい。こんなアクティビティ、もっと早く知っていれば今までの戦いもつらくなかったのに。
翌朝。
枕投げで寝不足な男性陣を、ゼシカは呆れたように腕組みをして見ていた。
何をどう勘違いしたのか、宿の主人は
「ゆうべはおたのしみでしたね」
などと言ってくる。ヤンガスはレンタルの小さいユカタを受付に返しながら、
「いや、枕投げで大乱闘しただけでげすよ」
とぼやいた。
宿屋の主人が枕投げ選手権のチャンピオンだと知ったのは、僕たちがドルマゲスを倒してもう一度この街の宿屋に泊まった時だった。
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