てのひら
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佐一の手は、冬の乾燥で荒れている。
彼はそういったことに頓着しない性格だし、
少しガサガサするくらいでは動じない。
「手、痛くない?」
二人は休日に、ナマエの部屋のコタツで寛いでいる。
今日は気温が低く、なかなか外に出る気にならない。
ナマエが買ってきた女性向けのファッション誌をめくって、これナマエちゃん似合いそうとか言っている佐一に問いかけると、彼は顔を上げた。
傷があって、鋭い眼を持った彼の顔。
「え?手?……ああ、全然痛くないよ」
考えた事もなかった、と言うように、彼は自分の手を見返している。
そしてナマエの手を取ると、もみしだくように触った。
「ナマエちゃんの手は柔らかいよね。俺のと全然違うな。なんでこんなに違うんだろう」
もみもみと触っていたのが、ぐりぐりに変化していくぐらいに、ナマエの手を触り続ける。
それに少し笑ったあと、コタツの近くに置いてあった手提げに手を伸ばした。
「ハンドクリーム塗ってるからかな。こういうの」
そう言って、チューブ型のハンドクリームを佐一の前に出してみせる。
「あーこれ、ナマエちゃんたまに塗ってるよね。
オレこういうの使ったことないからなぁ…ちょっと塗ってよ」
いいよ、と言ってナマエは蓋を開けて、佐一の手の甲にクリームを少し出した。
ほのかに甘い香りが付いているので、彼の無骨な手には似合わないけれど、構わず塗った。
ナマエの手が素早くクリームを伸ばしていくのを、佐一はじっと見つめている。
「おお…なんかいい匂いする。しかもちょっとスベスベじゃない?ほらほら」
そう言って、彼は執拗に手を揉ませた。
ナマエは佐一の手を撫でてやると、そうだね、と同意する。
「ていうか、オレ今までかなりガサガサな手でナマエちゃんに触ってたね…もしかして嫌だった?」
ひとしきり手を撫でさせた後で、心配そうに聞く。
佐一は底抜けに優しいのだ。
嫌な訳がない。荒れた佐一の手は、不思議と色気があった。
「全然。私、佐一くんの手は好きだから」
そっか、と言って、彼は照れ笑いをする。
こういう時に佐一は少し俯いて目をそらすのだが、その仕草がナマエは好きだった。
そして急に立ち上がると、ナマエの隣に座ろうと無理矢理コタツの中に侵入しようとする。
小ぶりなコタツなので、大人二人(しかも片方はガタイのいい男)はかなり狭く、ナマエは抗議の声を上げた。
「ちょっと佐一くん、狭いよ」
「隣に座りたいんだよ」
なんとか収まったが、2人の膝はぎゅうぎゅうにコタツの足の間に詰め込まれている。
「……狭いね」
自分で入ってきたくせに、佐一はポツンと呟いた。
そりゃあそうでしょう、とナマエが笑って言うと、彼は急にナマエを腕に包む。
佐一にもぎゅうぎゅう押されて、ナマエは思わず笑いだしてしまい、それを静かにさせるかのように彼はキスをした。
「俺もナマエちゃんの手、好きだよ」
そう言うと、佐一はナマエの指をぎゅっと握る。
そのまま彼はそっとナマエを寝かせると、彼女のニットの中に手を滑り込ませた。佐一の手は温度が高く心地よい。ザラついた手も、男らしくて好きだ。
「……ベッド行こう」
彼はそう言うやいなや、逞しい腕でナマエを抱き上げた。
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