第18章
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西洋式の宿で荷を解いたあとは、少し近くを散歩でもしようと思って外へ出る。根室の港町をそぞろ歩いていると、兵士達が宿泊している宿の前を通りかかった。きっとこの中で鶴見中尉は仕事をしているのだろう、そんな彼に少し思いを馳せて宿へ戻ろうとした時だ。ちょっといいですかぁ?と声を掛けられて振り返ると、兵士が一人立っている。軍帽を被り、色白で鼻筋がすっと通った綺麗な顔をしていたが、彼の容姿でなにより目を引いたのは落書きされた頬のホクロだった。ナマエはギョッとしつつも返事をすると、男は真っ直ぐ歩いてきてピタリと立ち止まった。
「あなたがナマエさん?鶴見中尉殿のオクサマっていう」
彼はオクサマ、という単語に嫌味をたっぷり込めると、ナマエの頭の先から爪先まで無遠慮にじろじろと見る。その視線に何かただならぬものを感じながらも、名前を問うと彼は冷たく笑って答えた。
「宇佐美です。階級は上等兵。……これ、いいでしょう」
宇佐美は唐突に自らの頬を指差すと、見せ付けるように一歩近づいて来た。
「鶴見中尉殿が書いて下さったんだ。僕だけのために。僕が鶴見中尉殿の一番だから」
言いながら宇佐美の目は見開かれて、薄青い縁取りのある瞳には狂気じみた色が見えた。
「奥さんだからって鶴見中尉殿の全てを手に入れたなんて思わないで下さいよ?僕が一番だ」
彼は自分に言い聞かせるように うん、と頷くとそのまま立ち去ろうとしたので、ナマエは思わず宇佐美を引き止めた。
「あの……宇佐美さん。私はあのひとの全てなんて、もちろんわかりません。宇佐美さんの方が、過ごしている時間も長いでしょうし…よほどご存知だと思います」
宇佐美は そんなの当然でしょ、と言うとフフンと笑う。くるりと背を向けると宿へ戻って行ったので、ナマエはその姿を見送った。ちょっと変わった方だわ、と思いながら。
夜になると鶴見中尉はナマエが待つ部屋に戻ってきたが、机で洋燈を灯して仕事をしている。部屋にはベッドが二台と彼が作業している机、鏡台があり、窓から見える黒い夜空には、もう直ぐ新月なのか糸のように細い月が浮かんでいた。ちらりと見えた鶴見中尉よ手元は万年筆で何かの図面を書いていて、ペン先が小気味良く動いている。ナマエは彼の仕事が終わるまで起きていようと考えていたが、鶴見中尉は俯いていた顔をあげるとナマエのを見た。
「遅くまで明るくしていてすまないね。先に休んでいなさい」
そう言うと、洋燈の近くで読者をしていたナマエの手から文庫本を取り上げて机に置き、手を取ってベッドへ連れて行く。遠慮がちに寝具へ入ると、鶴見中尉は優しく笑って先程までナマエが腰掛けていた椅子を引き寄せて座った。
「すみません、先に横になってしまって」
「いいんだよ、まだかかるから。しかし、ナマエが船に弱いのは知らなかったな。返って連れ回さない方が良かったかもしれないね」
「そんな事ありません。大事なお仕事でしょうに連れてきて下さって嬉しいです」
鶴見中尉は掛け布団の中にあるナマエの手を取ると、包むように握った。乾いた大きな掌にすっぽりと包まれる感触。
「私と暮らすのは大変だろう。……だがこうしてナマエを肌身離さず側に置ける生活を、私は気に入っているがね」
私のナマエ、と囁くと、空いている手で彼女の頬を撫でて ゆっくりお休み、と言って口元に笑みを浮かべる。それでも目を開けて寝ようとしないナマエを見て、鶴見中尉は顔を寄せると額に唇を落とした。
「これで良く眠れるだろう?」
さあ、今度こそお休み。そう言うと、彼は仕事に戻った。ナマエはその姿をみながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。
♢
その後、鶴見中尉率いる小隊は斜里に寄港すると有坂閣下から武器を調達した。再び宇佐美と顔を合わせてみると、例の落書きがなんと刺青になっていて、いいでしょうと自慢される。驚いて目が点になっているうちに、彼は口笛を吹きながら上機嫌に立ち去っていった。そこへ、有坂閣下と共に鶴見中尉が歩いてきたので、ナマエは頭を下げた。季節は移って、白だった夫の肋骨服は冬服の濃紺絨になっている。
「やあナマエくん!!息災でなにより!!鶴見くんは相変わらず面白いね!!どうだい、今晩皆で食事でも!!」
「いいですなぁ、閣下!ナマエ、夜になったら迎えにいくよ!」
「は、はい!お誘い頂き有難う御座います!」
有坂閣下と話すときは大声を張り上げなくてはならないので大変だが、鶴見中尉は閣下と気が合うようだ。部下と接する時とは違う、楽しげな様子が見受けられて新鮮であるし、なにより有坂閣下はカラリとした豪快な人物で、ナマエもお付き合いするのが楽しかった。その晩は迎えにきた鶴見中尉と共に洋食店へ向かう。少し洒落た着物を着たら、ナマエはなんでも似合うね、その色も素敵だ。と鶴見中尉は惜しげもなく褒めるので、ナマエの心は浮き立った。彼はそんな様子をちらりと見遣ると、可愛い顔をするね、と言って素早く接吻をするのだから、心が休まる暇がない。ナマエは動悸を感じながら、辺りに人がいないか咄嗟に視線を走らせたが、誰もいないよ、と鶴見中尉は笑った。
「私はいても構わないがね」
そう悪戯っぽく笑うと、洋食店が見えてきて扉を開けてくれる。鶴見中尉は西洋式に、ナマエを先に店に入れると扉を閉めた。席に案内されて少し待ったあと、有坂閣下が現れて食事が始まる。
「鶴見くんは酒はやらないが、ナマエくんは試したことはあるかね!?今日はいいものを持ってきたんだ。景気付けにと思ってね」
そう言いながら、有坂閣下は店の者に合図して何かを持ってこさせた。白いテーブルクロスの上に置かれたのは洋酒の瓶で、赤玉ポートワイン、と書いてある。
「葡萄酒ですな。赤玉は確か春頃から発売されたのでしたね」
鶴見中尉が相槌を打つと、有坂閣下は頷いて注がれたワインを美味しそうに飲んだ。ナマエは、あまりお酒は頂かないのです、と答えようとしたが、夫はそれを遮った。
「閣下、妻も御相伴に預かっても宜しいですか」
ああ勿論だよとの返事を聞き、鶴見中尉はグラスをもう一つ持って来るよう店の者に言う。
「あの、私ワインなんて飲めるかどうか……」
ナマエは小声で、不安げに鶴見中尉に訴えたが彼は愉快そうな笑みを浮かべるばかりだった。
「試してみないと分からないだろう?それに有坂閣下もお一人で飲まれるのは寂しいだろう。一杯やってみなさい」
そう言われては頷くしかなく、ナマエは注がれた美しく赤い液体を見下ろした。ほっそりとした硝子の持ち手を持って一口飲み込むと、ワインの香りと甘味のある味が広がっていき、思ったより大丈夫だわ、とナマエは安心した。
「お気に召したかな」
鶴見中尉が ふふ、と笑って言うと、有坂閣下も満足そうに頷いて自らもグラスに口をつける。
「では、今夜は鶴見くんの益々の活躍を祈って乾杯しよう」
ナマエはアルコールのせいか、不思議な高揚感を感じながら はい、と頷いた。会食の時間は和やかに過ぎていって、有坂閣下は そろそろ宿に戻る、と言う。
「有坂閣下、今宵は良い時間を過ごせました。妻共々、感謝しております。また是非お食事でも」
「私もだよ鶴見くん!!ではお休み!!!」
店の外に出ると、有坂閣下は呼んであった馬車に乗って宿泊している宿へと戻っていった。その姿を見送ると、鶴見中尉とナマエも帰路に着く。ワインで火照った頬に夜風が心地よく、ふわふわとするような気分だった。
「ナマエ、私の腕につかまりなさい。フラフラして危ないよ」
鶴見中尉はそう言うと、ナマエの腕をとって歩き始める。ナマエは ふふ、と少し笑うと顔を上げて彼を見上げた。
「なんだか、不思議な感じです。フラフラしてしまって」
「飲み過ぎたのかな。……ほら」
じっとして、と耳元で囁かれたかと思うと、体がぐらんと揺れて抱き上げられる。ナマエは驚いて鶴見中尉殿にしがみつくと、彼は そうしていなさい、と微笑んだ。
「篤四郎さま、下ろして下さいませ。私、歩けますから……」
「何を言っているんだ、怪我をしたらどうする」
静かにできるね?と微笑まれ、ナマエはそれ以上話せなくなってしまって俯いた。顔や耳が熱くなるのを感じて、夜風では冷めそうにもない。やがて宿が見えてくると、宿のものが扉を開けながら お加減が悪いのですか、と心配そうに尋ねた。
「ああ、この上なく。このまま部屋に上がるよ」
鶴見中尉はそう言うと、宿泊している部屋に颯爽と入ってナマエをベッドへ軽やかに下ろした。そのまま肋骨服のホックを外すと軍服の襟元を寛がせ、寝かせたナマエをじっと見やってから接吻する。たっぷり数秒間。
「……体温が高いね。ワインのせいかな」
「やっぱり私…飲んではいけなかったんです」
「どうして?私はナマエが酒を飲んだらどうなるのか知りたかったんだよ。……駄目か?」
鶴見中尉は悪戯っぽく笑うと、再びナマエの唇を塞いだので言葉を続けられない。彼の手はやがて着物の下に潜り込み、窓から柔らかく差し込む仄かな月明かりの下で、ナマエは彼に抱かれた。
「あなたがナマエさん?鶴見中尉殿のオクサマっていう」
彼はオクサマ、という単語に嫌味をたっぷり込めると、ナマエの頭の先から爪先まで無遠慮にじろじろと見る。その視線に何かただならぬものを感じながらも、名前を問うと彼は冷たく笑って答えた。
「宇佐美です。階級は上等兵。……これ、いいでしょう」
宇佐美は唐突に自らの頬を指差すと、見せ付けるように一歩近づいて来た。
「鶴見中尉殿が書いて下さったんだ。僕だけのために。僕が鶴見中尉殿の一番だから」
言いながら宇佐美の目は見開かれて、薄青い縁取りのある瞳には狂気じみた色が見えた。
「奥さんだからって鶴見中尉殿の全てを手に入れたなんて思わないで下さいよ?僕が一番だ」
彼は自分に言い聞かせるように うん、と頷くとそのまま立ち去ろうとしたので、ナマエは思わず宇佐美を引き止めた。
「あの……宇佐美さん。私はあのひとの全てなんて、もちろんわかりません。宇佐美さんの方が、過ごしている時間も長いでしょうし…よほどご存知だと思います」
宇佐美は そんなの当然でしょ、と言うとフフンと笑う。くるりと背を向けると宿へ戻って行ったので、ナマエはその姿を見送った。ちょっと変わった方だわ、と思いながら。
夜になると鶴見中尉はナマエが待つ部屋に戻ってきたが、机で洋燈を灯して仕事をしている。部屋にはベッドが二台と彼が作業している机、鏡台があり、窓から見える黒い夜空には、もう直ぐ新月なのか糸のように細い月が浮かんでいた。ちらりと見えた鶴見中尉よ手元は万年筆で何かの図面を書いていて、ペン先が小気味良く動いている。ナマエは彼の仕事が終わるまで起きていようと考えていたが、鶴見中尉は俯いていた顔をあげるとナマエのを見た。
「遅くまで明るくしていてすまないね。先に休んでいなさい」
そう言うと、洋燈の近くで読者をしていたナマエの手から文庫本を取り上げて机に置き、手を取ってベッドへ連れて行く。遠慮がちに寝具へ入ると、鶴見中尉は優しく笑って先程までナマエが腰掛けていた椅子を引き寄せて座った。
「すみません、先に横になってしまって」
「いいんだよ、まだかかるから。しかし、ナマエが船に弱いのは知らなかったな。返って連れ回さない方が良かったかもしれないね」
「そんな事ありません。大事なお仕事でしょうに連れてきて下さって嬉しいです」
鶴見中尉は掛け布団の中にあるナマエの手を取ると、包むように握った。乾いた大きな掌にすっぽりと包まれる感触。
「私と暮らすのは大変だろう。……だがこうしてナマエを肌身離さず側に置ける生活を、私は気に入っているがね」
私のナマエ、と囁くと、空いている手で彼女の頬を撫でて ゆっくりお休み、と言って口元に笑みを浮かべる。それでも目を開けて寝ようとしないナマエを見て、鶴見中尉は顔を寄せると額に唇を落とした。
「これで良く眠れるだろう?」
さあ、今度こそお休み。そう言うと、彼は仕事に戻った。ナマエはその姿をみながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。
♢
その後、鶴見中尉率いる小隊は斜里に寄港すると有坂閣下から武器を調達した。再び宇佐美と顔を合わせてみると、例の落書きがなんと刺青になっていて、いいでしょうと自慢される。驚いて目が点になっているうちに、彼は口笛を吹きながら上機嫌に立ち去っていった。そこへ、有坂閣下と共に鶴見中尉が歩いてきたので、ナマエは頭を下げた。季節は移って、白だった夫の肋骨服は冬服の濃紺絨になっている。
「やあナマエくん!!息災でなにより!!鶴見くんは相変わらず面白いね!!どうだい、今晩皆で食事でも!!」
「いいですなぁ、閣下!ナマエ、夜になったら迎えにいくよ!」
「は、はい!お誘い頂き有難う御座います!」
有坂閣下と話すときは大声を張り上げなくてはならないので大変だが、鶴見中尉は閣下と気が合うようだ。部下と接する時とは違う、楽しげな様子が見受けられて新鮮であるし、なにより有坂閣下はカラリとした豪快な人物で、ナマエもお付き合いするのが楽しかった。その晩は迎えにきた鶴見中尉と共に洋食店へ向かう。少し洒落た着物を着たら、ナマエはなんでも似合うね、その色も素敵だ。と鶴見中尉は惜しげもなく褒めるので、ナマエの心は浮き立った。彼はそんな様子をちらりと見遣ると、可愛い顔をするね、と言って素早く接吻をするのだから、心が休まる暇がない。ナマエは動悸を感じながら、辺りに人がいないか咄嗟に視線を走らせたが、誰もいないよ、と鶴見中尉は笑った。
「私はいても構わないがね」
そう悪戯っぽく笑うと、洋食店が見えてきて扉を開けてくれる。鶴見中尉は西洋式に、ナマエを先に店に入れると扉を閉めた。席に案内されて少し待ったあと、有坂閣下が現れて食事が始まる。
「鶴見くんは酒はやらないが、ナマエくんは試したことはあるかね!?今日はいいものを持ってきたんだ。景気付けにと思ってね」
そう言いながら、有坂閣下は店の者に合図して何かを持ってこさせた。白いテーブルクロスの上に置かれたのは洋酒の瓶で、赤玉ポートワイン、と書いてある。
「葡萄酒ですな。赤玉は確か春頃から発売されたのでしたね」
鶴見中尉が相槌を打つと、有坂閣下は頷いて注がれたワインを美味しそうに飲んだ。ナマエは、あまりお酒は頂かないのです、と答えようとしたが、夫はそれを遮った。
「閣下、妻も御相伴に預かっても宜しいですか」
ああ勿論だよとの返事を聞き、鶴見中尉はグラスをもう一つ持って来るよう店の者に言う。
「あの、私ワインなんて飲めるかどうか……」
ナマエは小声で、不安げに鶴見中尉に訴えたが彼は愉快そうな笑みを浮かべるばかりだった。
「試してみないと分からないだろう?それに有坂閣下もお一人で飲まれるのは寂しいだろう。一杯やってみなさい」
そう言われては頷くしかなく、ナマエは注がれた美しく赤い液体を見下ろした。ほっそりとした硝子の持ち手を持って一口飲み込むと、ワインの香りと甘味のある味が広がっていき、思ったより大丈夫だわ、とナマエは安心した。
「お気に召したかな」
鶴見中尉が ふふ、と笑って言うと、有坂閣下も満足そうに頷いて自らもグラスに口をつける。
「では、今夜は鶴見くんの益々の活躍を祈って乾杯しよう」
ナマエはアルコールのせいか、不思議な高揚感を感じながら はい、と頷いた。会食の時間は和やかに過ぎていって、有坂閣下は そろそろ宿に戻る、と言う。
「有坂閣下、今宵は良い時間を過ごせました。妻共々、感謝しております。また是非お食事でも」
「私もだよ鶴見くん!!ではお休み!!!」
店の外に出ると、有坂閣下は呼んであった馬車に乗って宿泊している宿へと戻っていった。その姿を見送ると、鶴見中尉とナマエも帰路に着く。ワインで火照った頬に夜風が心地よく、ふわふわとするような気分だった。
「ナマエ、私の腕につかまりなさい。フラフラして危ないよ」
鶴見中尉はそう言うと、ナマエの腕をとって歩き始める。ナマエは ふふ、と少し笑うと顔を上げて彼を見上げた。
「なんだか、不思議な感じです。フラフラしてしまって」
「飲み過ぎたのかな。……ほら」
じっとして、と耳元で囁かれたかと思うと、体がぐらんと揺れて抱き上げられる。ナマエは驚いて鶴見中尉殿にしがみつくと、彼は そうしていなさい、と微笑んだ。
「篤四郎さま、下ろして下さいませ。私、歩けますから……」
「何を言っているんだ、怪我をしたらどうする」
静かにできるね?と微笑まれ、ナマエはそれ以上話せなくなってしまって俯いた。顔や耳が熱くなるのを感じて、夜風では冷めそうにもない。やがて宿が見えてくると、宿のものが扉を開けながら お加減が悪いのですか、と心配そうに尋ねた。
「ああ、この上なく。このまま部屋に上がるよ」
鶴見中尉はそう言うと、宿泊している部屋に颯爽と入ってナマエをベッドへ軽やかに下ろした。そのまま肋骨服のホックを外すと軍服の襟元を寛がせ、寝かせたナマエをじっと見やってから接吻する。たっぷり数秒間。
「……体温が高いね。ワインのせいかな」
「やっぱり私…飲んではいけなかったんです」
「どうして?私はナマエが酒を飲んだらどうなるのか知りたかったんだよ。……駄目か?」
鶴見中尉は悪戯っぽく笑うと、再びナマエの唇を塞いだので言葉を続けられない。彼の手はやがて着物の下に潜り込み、窓から柔らかく差し込む仄かな月明かりの下で、ナマエは彼に抱かれた。