第2章
名前変換
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夜が明けてきた頃に目が覚めて、ナマエは布団から出た。
布団をあげた後に障子越しの薄明かりを頼りに火鉢へ近寄り、寝る前炭に薄くかけておいた灰をよける。
間も無く部屋が暖まってきて、改めて周囲を見回すと、ここは紛れもなく鶴見中尉の自宅だった。
中庭に面した6畳ほどの部屋で、ナマエは昨晩ここに通されたのだった。
昨日までは使用人用の小部屋で休んでいたのに、状況が変わりすぎて頭が追いつかない。
手炙りにかざした掌に熱を感じながら、誰かに声をかけるか悩んでいると、「失礼するよ」と男性の声がする。
「はっ、はい」
ナマエは慌てて襟を直して襖の方を見ると、すでに軍衣を着て、身支度を整えた鶴見中尉が立っていた。
「早起きだね。眠れなかったかい」
「いえ、そんなことは…鶴見様も、お早いですね」
「ああ、色々と片付けないといけない事もあってね」
そう言いながら、鶴見中尉も火鉢の前に座ると、手をかざして暖をとる。
「…しかし、こうして家に女性がいるのは不思議だね」
連れて着たのは私だったな、とふふふと笑う。
「私はこれから兵舎へ向かうが、ナマエさんはひとまずお店に行った方がいいだろう。
無理やり連れ出してしまったしね」
「…そうですね、女将さんに借りたお着物もお返ししないといけないですし」
衣紋掛けに掛かっている着物を見やって言う。
昨日のことが鮮明に思い出されるが、それはまるで遠い日の出来事のように、非現実的だった。
「道中不安だろうから、私の部下の月島をつけよう。
ナマエさんの準備が整った頃に、迎えに行かせるよ」
「ありがとうございます。…ご親切にして下さって」
「いいんだ。あなたは何も気にしなくていい」
そう言って鶴見中尉は微笑んだが、背筋がすうっと寒くなるようなものを感じるのは、女の勘だろうか。
優しい物腰の奥に、仄暗い何かを感じずにはいられなかった。