第9章
名前変換
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お盆が過ぎてからは一気に季節が進み、空気の冷たさを感じる。
深い緑だった山々は、一雨ごとに姿を変えて鮮やかな赤や金色に染まっていく。
初雪が舞うのもそう先の事ではないだろう。
今朝は旬の鮭を焼いた朝食を食べてから、濃紺の軍服を着て鶴見中尉は出かけていった。
表向きの軍の仕事もしつつ、刺青の囚人の捜索、兵器工場や芥子栽培の農地拡大のための資金集めもしている彼は多忙だ。
しかし鶴見中尉は何でも万事優雅に、上品にこなす。
椅子に腰掛けて読書をする時も、万年筆で何か書いている時も、ナマエに手を伸ばす時も。
食事の際はそれが際立って、お椀に口をつける仕草や、綺麗に箸を持つ手元に目がいってしまう。
最近の彼は、例の鞣した刺青人皮を服に仕立てて毎日着ている。
最初こそ驚きを通り越して狂気を感じたが、じきに慣れてしまった。
何せ、その皮を縫い合わせて服にしたのはナマエだ。
鶴見中尉に「他人にこれを見られる訳にはいかないから、ナマエに頼みたい」と、手を握られながら言われると、剥いだ人の皮に触るのが抵抗がある、などとは言い出せなくなってしまう。
おぞましさに吐き気がしたけれど結局やり遂げて、また鶴見中尉の思い通りになってしまったのだった。
作業中ずっとナマエの手元を見ていた彼は、出来上がったそれを見て満足気な顔になると、肋骨服を脱いでシャツの上に着てみせた。
どうだ似合うか?と問われて、ナマエは取り敢えず はいと答えたが、なんだか目の前の光景に眩々しそうになった。
しかしそれも毎日見て入れば慣れてしまうものだ。
自室で鶴見中尉のシャツの取れた釦を縫い付けていたナマエは、玄関から声が聞こえたので手を止めると立ち上がった。
玄関の引戸を開けると、見覚えのある男が二人立っている。
「あら、二階堂さん。こんにちは」
「どうも」
ナマエは彼らを交互に見ながら挨拶すると、瓜二つの兄弟は、表情を動かさずにナマエを見返した。
「鶴見中尉殿から言伝です。今晩は泊まりこみになるので帰らないとのことです」
「そうですか。承知致しました」
その時、冷たい北風が3人の間を通り抜けて行って、兄弟は不快そうに身を竦めた。
寒さが嫌いなのかもしれない。
その様子を見て、ナマエは遠慮がちに口を開いた。
「あの、もしお時間あれば折角来て下さいましたし、温かいお茶など召し上がりませんか?今日は冷えますし」
兄弟は顔を見合わせると、相談を始めた。
「どうする洋平」「どうする浩平」
「一寸くらいならいいんじゃないか?」
「そうだな。皆んなにもバレないだろ」
話がまとまったようなので、ナマエは二人を中に招き入れた。
深い緑だった山々は、一雨ごとに姿を変えて鮮やかな赤や金色に染まっていく。
初雪が舞うのもそう先の事ではないだろう。
今朝は旬の鮭を焼いた朝食を食べてから、濃紺の軍服を着て鶴見中尉は出かけていった。
表向きの軍の仕事もしつつ、刺青の囚人の捜索、兵器工場や芥子栽培の農地拡大のための資金集めもしている彼は多忙だ。
しかし鶴見中尉は何でも万事優雅に、上品にこなす。
椅子に腰掛けて読書をする時も、万年筆で何か書いている時も、ナマエに手を伸ばす時も。
食事の際はそれが際立って、お椀に口をつける仕草や、綺麗に箸を持つ手元に目がいってしまう。
最近の彼は、例の鞣した刺青人皮を服に仕立てて毎日着ている。
最初こそ驚きを通り越して狂気を感じたが、じきに慣れてしまった。
何せ、その皮を縫い合わせて服にしたのはナマエだ。
鶴見中尉に「他人にこれを見られる訳にはいかないから、ナマエに頼みたい」と、手を握られながら言われると、剥いだ人の皮に触るのが抵抗がある、などとは言い出せなくなってしまう。
おぞましさに吐き気がしたけれど結局やり遂げて、また鶴見中尉の思い通りになってしまったのだった。
作業中ずっとナマエの手元を見ていた彼は、出来上がったそれを見て満足気な顔になると、肋骨服を脱いでシャツの上に着てみせた。
どうだ似合うか?と問われて、ナマエは取り敢えず はいと答えたが、なんだか目の前の光景に眩々しそうになった。
しかしそれも毎日見て入れば慣れてしまうものだ。
自室で鶴見中尉のシャツの取れた釦を縫い付けていたナマエは、玄関から声が聞こえたので手を止めると立ち上がった。
玄関の引戸を開けると、見覚えのある男が二人立っている。
「あら、二階堂さん。こんにちは」
「どうも」
ナマエは彼らを交互に見ながら挨拶すると、瓜二つの兄弟は、表情を動かさずにナマエを見返した。
「鶴見中尉殿から言伝です。今晩は泊まりこみになるので帰らないとのことです」
「そうですか。承知致しました」
その時、冷たい北風が3人の間を通り抜けて行って、兄弟は不快そうに身を竦めた。
寒さが嫌いなのかもしれない。
その様子を見て、ナマエは遠慮がちに口を開いた。
「あの、もしお時間あれば折角来て下さいましたし、温かいお茶など召し上がりませんか?今日は冷えますし」
兄弟は顔を見合わせると、相談を始めた。
「どうする洋平」「どうする浩平」
「一寸くらいならいいんじゃないか?」
「そうだな。皆んなにもバレないだろ」
話がまとまったようなので、ナマエは二人を中に招き入れた。