第3章
名前変換
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家に戻ると、夕食となった。
向かい合って食事をしていると、何も喉を通らない心地だった。
鶴見中尉の一挙手一投足に敏感になっている上に、自分の姿も気になった。
どうにか自然に振る舞いたいが、何が自然だったのか思い出せなくなってしまう。
自分の考えとは裏腹に、感情だけが生き物のように動いているかのようだった。
そんな心境を知ってか知らずか、鶴見中尉は優しく微笑んだ。
「今日は色々あって疲れたでしょう。ゆっくり休むんだよ」
「ありがとうございます、鶴見様」
言葉をかわすのも恥ずかしく、気の利いた一言も言えぬまま黙ってしまい、ナマエは焦った。
昼間の場面が蘇って、まともに顔を見ることもできない。
「今後のことだが、どうしたいか決めるまでここに居てくれて構わないよ。
どのような選択をするかはナマエさんの自由だから、私は何か言う立場ではないけれど」
箸を置いて、鶴見中尉はじっとナマエを見た。
「個人的に、あなたの事は心配しているよ。
…いっそ閉じ込めてしまいたいくらいにね」
鶴見中尉に閉じ込められる生活も悪くない、そう思った自分に驚く。
このままでは何か得体の知れないものに、自分の心が飲み込まれてしまうように感じる。
そうなるのは怖かったが、しかしそういう自分になってみたいような気もするのだった。
「いつまでもご厄介になる訳にはいきませんから、どこか家を借りようと思っています。
………あの、お近くでも、いいでしょうか」
このまま鶴見中尉と関わっていると碌なことにはならない。
離れた方がいいのは分かっているが、自分の中の本能のような感情に抗うことは出来なかった。
鶴見中尉の顔には、おや、という表情が浮かぶ。
「勿論だ。私達はご近所さんだね」
恥ずかしそうに目をそらしたナマエに、鶴見中尉はじっと視線を注いだ。
………………………………………
ナマエに自室で休むよう伝え、一人になった所で月島がやってきた。
「座れ。今日はご苦労だったな。…報告を」
月島は正座すると、居住まいを正して口を開く。
「はい。ミョウジナマエの周辺についてですが、父親が経営していた銅山の同業者には、今回の相続の件を知っている者もいるようです。
その中には事業が芳しくない者、欲をかく者がいて、そういう連中が人を雇ってミョウジナマエを手に入れようと動いていると思われます」
「…そうだろうな。婚姻関係ともなれば、彼女の財産は全て我が物にできる。天涯孤独の彼女は格好の餌食だな」
「はい。……では、引き続きミョウジナマエの護衛、監視を続けます」
「ああ。先に手を打っておかなければな」
月島は無表情だったが、内心で彼女の立場を哀れに思った。
この場所に産まれなければ、鶴見中尉に目をつけられなければ、こんな事に巻き込まれる事もなかっただろうに。
「はい」
そんな思いはおくびにも出さずに、月島は短く返事をした。
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向かい合って食事をしていると、何も喉を通らない心地だった。
鶴見中尉の一挙手一投足に敏感になっている上に、自分の姿も気になった。
どうにか自然に振る舞いたいが、何が自然だったのか思い出せなくなってしまう。
自分の考えとは裏腹に、感情だけが生き物のように動いているかのようだった。
そんな心境を知ってか知らずか、鶴見中尉は優しく微笑んだ。
「今日は色々あって疲れたでしょう。ゆっくり休むんだよ」
「ありがとうございます、鶴見様」
言葉をかわすのも恥ずかしく、気の利いた一言も言えぬまま黙ってしまい、ナマエは焦った。
昼間の場面が蘇って、まともに顔を見ることもできない。
「今後のことだが、どうしたいか決めるまでここに居てくれて構わないよ。
どのような選択をするかはナマエさんの自由だから、私は何か言う立場ではないけれど」
箸を置いて、鶴見中尉はじっとナマエを見た。
「個人的に、あなたの事は心配しているよ。
…いっそ閉じ込めてしまいたいくらいにね」
鶴見中尉に閉じ込められる生活も悪くない、そう思った自分に驚く。
このままでは何か得体の知れないものに、自分の心が飲み込まれてしまうように感じる。
そうなるのは怖かったが、しかしそういう自分になってみたいような気もするのだった。
「いつまでもご厄介になる訳にはいきませんから、どこか家を借りようと思っています。
………あの、お近くでも、いいでしょうか」
このまま鶴見中尉と関わっていると碌なことにはならない。
離れた方がいいのは分かっているが、自分の中の本能のような感情に抗うことは出来なかった。
鶴見中尉の顔には、おや、という表情が浮かぶ。
「勿論だ。私達はご近所さんだね」
恥ずかしそうに目をそらしたナマエに、鶴見中尉はじっと視線を注いだ。
………………………………………
ナマエに自室で休むよう伝え、一人になった所で月島がやってきた。
「座れ。今日はご苦労だったな。…報告を」
月島は正座すると、居住まいを正して口を開く。
「はい。ミョウジナマエの周辺についてですが、父親が経営していた銅山の同業者には、今回の相続の件を知っている者もいるようです。
その中には事業が芳しくない者、欲をかく者がいて、そういう連中が人を雇ってミョウジナマエを手に入れようと動いていると思われます」
「…そうだろうな。婚姻関係ともなれば、彼女の財産は全て我が物にできる。天涯孤独の彼女は格好の餌食だな」
「はい。……では、引き続きミョウジナマエの護衛、監視を続けます」
「ああ。先に手を打っておかなければな」
月島は無表情だったが、内心で彼女の立場を哀れに思った。
この場所に産まれなければ、鶴見中尉に目をつけられなければ、こんな事に巻き込まれる事もなかっただろうに。
「はい」
そんな思いはおくびにも出さずに、月島は短く返事をした。
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