第3章
名前変換
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身支度を整え、言われた通り部屋で待つ。
窓の脇に椅子が置いてあったので、そこに腰掛ける。
先程まで部屋に差し込んでいたお日様は傾いて、空が橙色に変わっていく。もうじき夕方になるようだ。
ナマエはぼんやりと外を見つめながら、鶴見中尉のことを考えた。
考えたというよりは、考えてしまう、という表現の方が適切だ。
彼女は鶴見中尉のことが気になって仕方がなかった。
鶴見中尉の視線を受けた背中。
ぞくぞくとするような、痺れるような感覚。
羞恥の奥深くに、何か別のものがあった。
その正体を突き詰めると、歓びであったと思い至ってナマエは驚いた。
それは今まで持ったどの感情よりも生々しく、本能のような烈しさがあった。
ノックの音が響き、鶴見中尉が部屋に戻ってきたので、ナマエはそっと目を伏せた。
「滞りなく終わったよ。これで遺産はあなたのものだ」
「…はい、お世話になりました」
「今日のところは、また私の家へ帰るのが良いだろう。
今後のことは、ゆっくり決めるといい。
馬車を呼んであるから、行くとしようか」
「はい、鶴見様」
鶴見中尉の後ろを歩きながら、その背中を盗み見る。
ナマエは彼の本当の危険性にたった今気が付いた。
鶴見中尉は、人の心に直接触れるのだ。誰にも触ることを許さなかった部分に、巧みに、いとも簡単に。
鶴見中尉に関わると危なそうだ、という自分の直感は正しかった訳になるが、後の祭りだった。
もう触れられてしまったから。
一度変化したものは二度と元に戻らず、螺旋階段を一段一段降りていくように、鶴見中尉の掌に落ちていく予感がした。
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