第八の罪、その名は
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第二章:交錯する影と暴かれる真実
1. 雨と破滅のあとに
ニーナの死。
そして、その悲劇を嘲笑うかのように現れたイシュヴァール残党の男——スカー(傷男)との残酷な敗北。
土砂降りの雨が降り注ぐセントラルの路地裏で、オートメイルを粉砕されたエドワードは、冷たい泥の中に崩れ落ちていた。
「ちくしょう……ちくしょう……っ! ニーナ一人……救えねぇで……! 何が国家錬金術師だ……何が天才だっ……!!」
己の無力さに泥を叩きつけ、絶望の叫びをあげるエド。
その傍らで、エイミーは雨に打たれながら立ち尽くしていた。
実は、エイミーの身体も限界を迎えていた。
服の下——エンヴィーに暴行され、破られた私服の隙間から覗く皮膚には、生々しい紫色の痣と傷跡が痛々しく残っている。息をするたびに肋骨が軋み、冷たい雨が傷口を苛酷に濡らす。
(痛い……身体も……心も……)
スカーが現れた時、エイミーは恐怖で身体が動かなかった。
自分がホムンクルスとして戦う術を持たない『臆病』だからというだけではない。
「賢者の石の錬成」や「人の命を弄ぶ存在」としての自分たち(ホムンクルス)の罪深さを、スカーという存在を通じて突きつけられたからだ。
だが——泥に塗れて泣き叫ぶエドの姿を見た瞬間、エイミーの足は自然と動いていた。
「エドワードさん……っ!」
エイミーは泥の上に両膝をつき、雨で濡れたエドの背中に手を添えた。
痛む身体に構わず、震える手で彼を包み込もうとする。
「触るなっ……!!」
「っ……!」
エドが激しくその手を振り払った。
だが、それはエイミーを拒絶したのではなく、自分自身の無力さに対する激しい怒りと絶望ゆえのものだった。
「俺は……誰も救えねぇ……っ! クソみたいな錬金術で……ニーナも……アルの身体も……お前一人守るどころか……っ!!」
スカーの手がかかりそうになった時、何もできなかった自分への不甲斐なさ。
エドの胸の中は、怒りと悲しみで張り裂けそうになっていた。
エイミーは振り払われた自分の手を静かに見つめ、それからもう一度、今度は力強くエドの手を両手でギュッと握りしめた。
「……違います……っ!」
雨音を突き破るような、エイミーの泣き叫ぶ声。
「エドワードさんは……凄いです……っ! ニーナちゃんのために怒って、命懸けでアルフォンスさんを守ろうとして……っ! 自分のことより、誰かのために泣けるエドワードさんは……全然無力なんかじゃありません……っ!!」
エンヴィーから「お前は化け物だ」「道具だ」と踏みにじられた恐怖が脳裏をよぎる。
それでも、自分に優しさをくれたこの少年を肯定したい。その一心で、エイミーは涙と雨でぐしゃぐしゃになった顔で言葉を紡ぐ。
「私……エドワードさんの手、すごく温かくて……大好きです……っ! だから……そんな風に自分を責めないでください……っ!!」
「エイミー……お前……」
雨の中、泥まみれになりながら一生懸命に自分を言葉で支えようとするエイミー。
その必死な瞳と、自分の手を包み込む温かい体温に、エドはハッと息を飲んだ。
よく見れば、エイミーの肩や首元には、どこでつくったのか分からない不自然な擦り傷や痣が痛々しく浮かび上がっている。自分のせいで怖い思いをさせ、怪我までさせてしまったというのに、彼女は自分を真っ直ぐに見つめている。
「……たく……お前は……っ」
エドはぶつける場所のない怒りを呑み込み、握り返されたエイミーの手をきつく握り返した。
「……悪かった。……ありがとうな、エイミー」
雨の中、二人は互いの体温を確かめ合うように寄り添う。
(私は……嘘つきだ……)
エドの温かい手を感じながら、エイミーの胸には激しい罪悪感が突き刺さる。
ニーナを死に追いやった錬金術の闇も、スカーを生み出した国の狂気も、すべて自分を生み出した「お父様」たちの計画の一部。
そして自分はその足元で彼らを監視している裏切り者なのだから。
(それでも……この手が温かいと思ってしまう私は……やっぱり汚い化け物なのかな……っ)
雨は止むことなく、傷ついた二人の身体を冷たく濡らし続けていた。
第二章:交錯する影と暴かれる真実
1. 雨と破滅のあとに
ニーナの死。
そして、その悲劇を嘲笑うかのように現れたイシュヴァール残党の男——スカー(傷男)との残酷な敗北。
土砂降りの雨が降り注ぐセントラルの路地裏で、オートメイルを粉砕されたエドワードは、冷たい泥の中に崩れ落ちていた。
「ちくしょう……ちくしょう……っ! ニーナ一人……救えねぇで……! 何が国家錬金術師だ……何が天才だっ……!!」
己の無力さに泥を叩きつけ、絶望の叫びをあげるエド。
その傍らで、エイミーは雨に打たれながら立ち尽くしていた。
実は、エイミーの身体も限界を迎えていた。
服の下——エンヴィーに暴行され、破られた私服の隙間から覗く皮膚には、生々しい紫色の痣と傷跡が痛々しく残っている。息をするたびに肋骨が軋み、冷たい雨が傷口を苛酷に濡らす。
(痛い……身体も……心も……)
スカーが現れた時、エイミーは恐怖で身体が動かなかった。
自分がホムンクルスとして戦う術を持たない『臆病』だからというだけではない。
「賢者の石の錬成」や「人の命を弄ぶ存在」としての自分たち(ホムンクルス)の罪深さを、スカーという存在を通じて突きつけられたからだ。
だが——泥に塗れて泣き叫ぶエドの姿を見た瞬間、エイミーの足は自然と動いていた。
「エドワードさん……っ!」
エイミーは泥の上に両膝をつき、雨で濡れたエドの背中に手を添えた。
痛む身体に構わず、震える手で彼を包み込もうとする。
「触るなっ……!!」
「っ……!」
エドが激しくその手を振り払った。
だが、それはエイミーを拒絶したのではなく、自分自身の無力さに対する激しい怒りと絶望ゆえのものだった。
「俺は……誰も救えねぇ……っ! クソみたいな錬金術で……ニーナも……アルの身体も……お前一人守るどころか……っ!!」
スカーの手がかかりそうになった時、何もできなかった自分への不甲斐なさ。
エドの胸の中は、怒りと悲しみで張り裂けそうになっていた。
エイミーは振り払われた自分の手を静かに見つめ、それからもう一度、今度は力強くエドの手を両手でギュッと握りしめた。
「……違います……っ!」
雨音を突き破るような、エイミーの泣き叫ぶ声。
「エドワードさんは……凄いです……っ! ニーナちゃんのために怒って、命懸けでアルフォンスさんを守ろうとして……っ! 自分のことより、誰かのために泣けるエドワードさんは……全然無力なんかじゃありません……っ!!」
エンヴィーから「お前は化け物だ」「道具だ」と踏みにじられた恐怖が脳裏をよぎる。
それでも、自分に優しさをくれたこの少年を肯定したい。その一心で、エイミーは涙と雨でぐしゃぐしゃになった顔で言葉を紡ぐ。
「私……エドワードさんの手、すごく温かくて……大好きです……っ! だから……そんな風に自分を責めないでください……っ!!」
「エイミー……お前……」
雨の中、泥まみれになりながら一生懸命に自分を言葉で支えようとするエイミー。
その必死な瞳と、自分の手を包み込む温かい体温に、エドはハッと息を飲んだ。
よく見れば、エイミーの肩や首元には、どこでつくったのか分からない不自然な擦り傷や痣が痛々しく浮かび上がっている。自分のせいで怖い思いをさせ、怪我までさせてしまったというのに、彼女は自分を真っ直ぐに見つめている。
「……たく……お前は……っ」
エドはぶつける場所のない怒りを呑み込み、握り返されたエイミーの手をきつく握り返した。
「……悪かった。……ありがとうな、エイミー」
雨の中、二人は互いの体温を確かめ合うように寄り添う。
(私は……嘘つきだ……)
エドの温かい手を感じながら、エイミーの胸には激しい罪悪感が突き刺さる。
ニーナを死に追いやった錬金術の闇も、スカーを生み出した国の狂気も、すべて自分を生み出した「お父様」たちの計画の一部。
そして自分はその足元で彼らを監視している裏切り者なのだから。
(それでも……この手が温かいと思ってしまう私は……やっぱり汚い化け物なのかな……っ)
雨は止むことなく、傷ついた二人の身体を冷たく濡らし続けていた。
