第八の罪、その名は
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プロローグ:穢された告白
セントラル軍部地下——光の届かない薄暗い石造りのアジト。
定期報告を終えたエイミーは、緊張の糸が切れたように小さく息をついた。
大総統や「お父様」への形式的な報告を済ませ、立ち去ろうとした彼女の背中に、柱の影からぬっと姿を現した影が声をかける。
「……ふーん。相変わらず真面目に『監視役』やってるみたいじゃないか、エイミー」
粘りつくような嫌な声。緑色の長い髪を揺らし、嘲笑を浮かべたエンヴィーが、エイミーの華奢な肩に腕を回してきた。
「ねえ、どんな感じ? あの『鋼のガキ』は。相変わらずチョロくて扱いやすいわけ?」
冷たい蛇に首筋をなぞられているような寒気に、エイミーは身をすくめる。
だが、頭の中に浮かんだのは、暗闇ではなく——自分に不器用にマフラーを巻きつけてくれたエドの真っ直ぐな金色の瞳だった。
「……エドワードさんは……すごく、強くて……温かい人です」
「は?」
エンヴィーの眉が不機嫌そうに跳ね上がる。
エイミーは自分の胸の奥から湧き上がる温かい熱を隠しきれず、他意も企みもなく、ただ純粋な一人の少女として言葉を漏らした。
「私……鋼のエドワードさんが、好きなの」
それは、恋や愛という言葉すらよく知らない【臆病】な彼女が、初めて自分の心で手に入れた小さな「真実」だった。
——だが、次の瞬間。
ドンッ!!
「がはっ……!!」
激しい衝撃とともに、エイミーの身体が石壁に叩きつけられた。
視界が激しく揺れ、肋骨が悲鳴をあげる。見上げると、そこにはこれまで見たこともないほど醜悪に顔を歪めたエンヴィーが立ち尽くしていた。
その瞳に宿っていたのは、激しい殺意と——醜く歪んだ嫉妬だった。
「……おい……今、なんて言った……?」
「エ……エンヴィー……っ……!?」
「調子に乗んじゃねえぞ、落ちこぼれの化け物がっ!」
髪を掴み引きずり回され、冷たい石床に突伏させられる。
エイミーの細い手首が激しく押さえつけられ、服が荒々しく破り取られていく。
「嫌……っ! やめて……やめてエンヴィー……っ!!」
「好きになったぁ? 人間の真似事して恋愛ごっこか!? お前はただの出来損ないの肉の塊だろうが!! 誰が人間を好きになっていいと言った!? 誰が人間に愛されていいと言ったぁ!!」
恐怖に叫ぶエイミーの声を打ち消すように、エンヴィーの嘲笑と容赦のない暴力、そして屈辱が彼女の身体と心を蹂躙していく。
「お前は俺たちの道具だ……俺の所有物なんだよ!! 汚れきった化け物が、二度とそんな綺麗な顔してあいつの名前を呼べないようにしてやる……っ!!」
冷たい絶望の暗闇の中。
ズタズタに引き裂かれ、汚されていく身体の痛みに耐えながら、エイミーはただ固く目を閉じ、心の中で悲痛な叫びをあげていた。
(ごめんなさい……いやだ、こわい!……エドワードさん……っ!)
助けてと叫ぶことすら許されない。
自分が触れてはならなかった「太陽」の光。
その温もりを知ってしまった代償は、あまりにも残酷で、痛ましい傷となって彼女の魂に刻み込まれるのだった。
