第八の罪、その名は
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第二章:交錯する影と暴かれる真実
6. ラッシュバレーと命の芽吹き
セントラルでの滞在を終え、一行は新たな目的地のひとつである「オートメイルの聖地・ラッシュバレー」へ向かう列車の中にいた。
ヒューズ中佐の家で過ごした温かい夜の記憶と、ウィンリィがくれた「味方になってあげる」という言葉を胸に抱きながら、エイミーは向かい合わせの座席に座る三人を見つめていた。
(……温かい言葉、嬉しかったな)
◇
賑やかな機械音と活気にあふれた街、ラッシュバレー。
職人たちが技術を競い合う街の熱気に包まれる中、事件は突如として起きた。
技師のスリを働く少女パニーニャを追ってたどり着いた技師ドミニクの家で、彼の義理の娘が破水し、突然激しい陣痛に襲われたのだ。
「あぁぁっ……!! 産まれ、産まれる……っ!!」
「なっ……!? おい冗談だろ、こんな時に!!」
外は激しい大雨。街から医者を呼んでくる時間はない。
立ち尽くしてパニックになるエドとアルを余目に、ウィンリィが意を決して叫んだ。
「私が産ませる! エド、アル、お湯と綺麗なタオルを持ってきて!# エイミー#ちゃん、私を手伝って!!」
「えっ……!? わ、私……っ!?」
「お願い、エイミーちゃん! 私一人じゃ無理なの!」
経験などあるはずもない。だが、苦しむ妊婦の姿とウィンリィの強い眼差しに押され、エイミーは震える手で袖を捲り上げた。
「は、はいっ……! 私にできることなら何でもします……っ!」
◇
緊迫した室内。
激しい痛みに耐えて悲鳴をあげる母と、必死に声を掛け続けるウィンリィ。
エイミーは汗で濡れたリフィアの額を濡れタオルで何度も拭い、押し潰されそうなほど強く握りしめられた彼女の手を、両手でぎゅっと握り返し続けた。
「大丈夫です……っ! 頑張ってください……っ!!」
握りしめられた手から伝わってくるのは、尋常ではない激痛と、命を産み落とそうとする圧倒的な「生命の鼓動」だった。
(これが……人間が命を創り出す……『誕生』の瞬間……っ)
錬金術で無から錬成されるものではない。
賢者の石のように、誰かの命を奪って練り固めた紛い物でもない。
血を流し、痛みに耐え、命懸けで一つの新しい命をこの世界に呼び出そうとする、人間の凄まじい意志と愛。
「産まれたぁぁぁぁっっ!!」
おぎゃあぁぁぁっ! おぎゃあぁぁぁっ!!
雨音を打ち消すように、元気な赤ん坊の産声が部屋中に響き渡った。
「やった……! 産まれたよエド、アル! 元気な男の子だよっ!!」
安堵と感動で涙を流しながら笑うウィンリィ。
へたり込んだエドとアルも、赤ん坊の力強い産声を聞いて脱力し、顔を見合わせて嬉しそうに笑い合っていた。
生まれたての赤ん坊の小さな体温と、力強い鼓動。
抱きかかえたリフィアの顔には、痛みを忘れたような深い愛情と慈しみの笑顔が浮かんでいた。
その光景を前に、エイミーの目からボロボロと溢れ出す涙。
(すごい……なんて……なんて温かいんだろう……っ)
ホムンクルスとして作られ、「自分は呪われた化け物だ」と自分を否定し続けてきたエイミーにとって、人が命を慈しみ、命を生み出すという光景は、眩しすぎるほどの「光」だった。
「エイミーちゃん、見て! 元気な赤ちゃんだよ!」
ウィンリィがそっと差し出してくれた赤ん坊の小さな手に、エイミーは恐る恐る指先で触れた。
赤ん坊の小さな手が、ギューッとエイミーの指を握り返してくる。
「っ……!!」
言葉にならない感動が胸を突き上げる。
(私……こんなにも尊い命が存在する世界を守りたい……。エドワードさんたちが命懸けで取り戻そうとしている『人間の身体』の尊さを……二度と踏みにじりたくない……っ)
冷たい恐怖で固まっていたエイミーの心に、本当の意味で「命の重み」と「人を愛おしむ心」が芽生えた瞬間だった。
だが——ラッシュバレーでの感動的な生命の誕生の裏で、セントラルからあまりにも残酷な「訃報」が彼女たちのもとへ届く時間は、刻一刻と迫っていたのだった。
第二章:交錯する影と暴かれる真実
6. ラッシュバレーと命の芽吹き
セントラルでの滞在を終え、一行は新たな目的地のひとつである「オートメイルの聖地・ラッシュバレー」へ向かう列車の中にいた。
ヒューズ中佐の家で過ごした温かい夜の記憶と、ウィンリィがくれた「味方になってあげる」という言葉を胸に抱きながら、エイミーは向かい合わせの座席に座る三人を見つめていた。
(……温かい言葉、嬉しかったな)
◇
賑やかな機械音と活気にあふれた街、ラッシュバレー。
職人たちが技術を競い合う街の熱気に包まれる中、事件は突如として起きた。
技師のスリを働く少女パニーニャを追ってたどり着いた技師ドミニクの家で、彼の義理の娘が破水し、突然激しい陣痛に襲われたのだ。
「あぁぁっ……!! 産まれ、産まれる……っ!!」
「なっ……!? おい冗談だろ、こんな時に!!」
外は激しい大雨。街から医者を呼んでくる時間はない。
立ち尽くしてパニックになるエドとアルを余目に、ウィンリィが意を決して叫んだ。
「私が産ませる! エド、アル、お湯と綺麗なタオルを持ってきて!# エイミー#ちゃん、私を手伝って!!」
「えっ……!? わ、私……っ!?」
「お願い、エイミーちゃん! 私一人じゃ無理なの!」
経験などあるはずもない。だが、苦しむ妊婦の姿とウィンリィの強い眼差しに押され、エイミーは震える手で袖を捲り上げた。
「は、はいっ……! 私にできることなら何でもします……っ!」
◇
緊迫した室内。
激しい痛みに耐えて悲鳴をあげる母と、必死に声を掛け続けるウィンリィ。
エイミーは汗で濡れたリフィアの額を濡れタオルで何度も拭い、押し潰されそうなほど強く握りしめられた彼女の手を、両手でぎゅっと握り返し続けた。
「大丈夫です……っ! 頑張ってください……っ!!」
握りしめられた手から伝わってくるのは、尋常ではない激痛と、命を産み落とそうとする圧倒的な「生命の鼓動」だった。
(これが……人間が命を創り出す……『誕生』の瞬間……っ)
錬金術で無から錬成されるものではない。
賢者の石のように、誰かの命を奪って練り固めた紛い物でもない。
血を流し、痛みに耐え、命懸けで一つの新しい命をこの世界に呼び出そうとする、人間の凄まじい意志と愛。
「産まれたぁぁぁぁっっ!!」
おぎゃあぁぁぁっ! おぎゃあぁぁぁっ!!
雨音を打ち消すように、元気な赤ん坊の産声が部屋中に響き渡った。
「やった……! 産まれたよエド、アル! 元気な男の子だよっ!!」
安堵と感動で涙を流しながら笑うウィンリィ。
へたり込んだエドとアルも、赤ん坊の力強い産声を聞いて脱力し、顔を見合わせて嬉しそうに笑い合っていた。
生まれたての赤ん坊の小さな体温と、力強い鼓動。
抱きかかえたリフィアの顔には、痛みを忘れたような深い愛情と慈しみの笑顔が浮かんでいた。
その光景を前に、エイミーの目からボロボロと溢れ出す涙。
(すごい……なんて……なんて温かいんだろう……っ)
ホムンクルスとして作られ、「自分は呪われた化け物だ」と自分を否定し続けてきたエイミーにとって、人が命を慈しみ、命を生み出すという光景は、眩しすぎるほどの「光」だった。
「エイミーちゃん、見て! 元気な赤ちゃんだよ!」
ウィンリィがそっと差し出してくれた赤ん坊の小さな手に、エイミーは恐る恐る指先で触れた。
赤ん坊の小さな手が、ギューッとエイミーの指を握り返してくる。
「っ……!!」
言葉にならない感動が胸を突き上げる。
(私……こんなにも尊い命が存在する世界を守りたい……。エドワードさんたちが命懸けで取り戻そうとしている『人間の身体』の尊さを……二度と踏みにじりたくない……っ)
冷たい恐怖で固まっていたエイミーの心に、本当の意味で「命の重み」と「人を愛おしむ心」が芽生えた瞬間だった。
だが——ラッシュバレーでの感動的な生命の誕生の裏で、セントラルからあまりにも残酷な「訃報」が彼女たちのもとへ届く時間は、刻一刻と迫っていたのだった。
