その手を掴んで明日へ行く
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第五研究所の暗闇と、命の盾
深夜のセントラル市街。かつて事故で閉鎖されたとされる「第五研究所」の敷地内には、ねっとりと重い不穏な静寂が満ちていた。
「——くそっ! なんでこんな時に……ッ!」
エドワードは動かない右腕を強く噛み締め、悔しさに歯噛みした。
先の戦いで接合部に負担がかかっていた右腕のオートメールが、不気味に沈黙する廃研究所の地下深くで突如として不具合を起こし、完全に作動を停止してしまったのだ。
「あらあら……運がないわね、鋼のおちびさん」
暗闇の奥から現れたのは、美しくも禍々しい異形の存在——『ラスト』と『エンヴィー』。
その背後には、人魂のような赤い光を明滅させるホムンクルスたちの圧倒的な威圧感が漂っていた。
「エドワード君、後ろへ下がりなさい!」
咄嗟に彼を背中に庇い、一歩前へ躍り出たのはルイだった。
「ルイ、ダメだ! 相手はわけのわからない化け物だぞ! 右腕が動かなくたって俺が——」
「黙ってエドワード君! 右腕が動かない人間が前に出てどうするのッ!」
ルイはきっぱりと叫ぶと、素早く自らの腕に刻まれた錬成陣へと意識を集中させた。
アメジスト色の瞳が鋭く光り、全身から淡い赤紫色の錬成光が立ち上る。
「へぇ……自分の生命力を触媒に変換する錬金術か。だが、そんなもので私たちに対抗できると思っているのかしら?」
ラストの細く伸びた爪『最凶の矛』が、音もなく空を切り、エドワードの首元目掛けて襲いかかる。
「【脈動】——ッ!!」
ルイは躊躇することなく、自身の命と寿命を削り取る不可視の衝撃波を発動させた。
ドオンッ!! と地下空間が激しく揺れ、襲いかかるラストの爪を正面から弾き返す。
「ガハッ……! ぐ、あ……っ!」
強大な反動により、ルイの口から鮮血が吐き出された。顔からは瞬く間に血の気が引き、膝がガクガクと震える。
「ルイッ!! やめろ、それ以上使ったらあんたの命が……ッ!」
「いいから……下がりなさいと言っているでしょう……っ! 私が……あなたを護るのよ……っ!」
自らの命を削り、血を吐き散らしながらも、絶対にエドワードの前から退こうとしないルイ。
その悲壮なまでの「自傷的な救済」を目にして、エドワードの胸の中で激しい怒りと恐れが渦巻いていた。
