その手を掴んで明日へ行く
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第一章 欠けた身体で愛を解く
第二話:ボロボロの帰郷と筋肉の抱擁
ガタゴトと揺れる蒸気機関車。
スカーとの激闘で胴体を失ったアルフォンスは、一人で座席に座ることすらできず、貨物車両の木箱の中に身を寄せ羊たちと共に揺られていた。そのため、客室の座席に腰掛けているのはエドワード、アームストロング少佐、そしてルイの三人だけである。
客車内の空気は、重く冷え切っていた。
右腕のオートメールを根元から粉砕され、右肩を包帯でガチガチに固定されたエドワードが、向かいの席に鋭い視線を向ける。
対するルイ・フライム少佐は、膝の上で古びた解剖学の書物を開き、静かにページをめくっていた。
「……おい」
「……何かしら、エドワード君」
ルイは視線を本に落としたまま、穏やかだがどこかわざとらしいほど丁寧な声で応じる。
「大佐から聞いたぞ。あんたの【脈動】とかいう錬金術……使うたびに自分の身体と寿命削ってんだってな」
「……東方司令部の大佐殿は、随分と口が軽いのね」
ルイは小さく息を吐くと、ゆっくりと本を閉じた。
そのアメジスト色の瞳には、相変わらず「10歳で止まった亡き弟」の切ない幻影が揺らめいている。自身の命を削って他人を救う自傷行為のような戦い方と、自分に向けられるその哀愁を帯びた眼差し。エドワードの苛立ちは限界に達していた。
「他人の傷や病気を治すために自分の命削るだぁ!? 冗談じゃねぇぞ! 命を大切にしろってんだ! そんな自傷行為みたいなのは間違ってる!」
右腕が使えないエドワードは、左手で勢いよく座席の肘掛けを叩く。
だが、ルイは眉一つ動かさず、薄く冷ややかな微笑を浮かべるだけだった。
「間違っている? 私の命よ。私がどう使おうと、私の自由だわ」
「なっ……!」
「私は自分の人生の使い道を自分で決めたの。あなたたちの言う理屈は理解できるけれど、これは私の問題よ。子供に口出しされる筋合いはないわ」
「子供扱いすんじゃねぇッ! あんたがそうやって自分を死に追いやるような真似してんのが許せねぇって言ってんだよ!」
「生意気ね。許せないからなんなの?あなたに私の過去や背負っているものの何が分かるのよ?」
「分からねぇから聞いてんだろうがッ!!」
噛み合わない問答。右腕の痛みに耐えながら食ってかかるエドワードと、冷ややかに突っぱねるルイの感情が激しく衝突し、客室の空気は破裂寸前まで膨れ上がる。
その時——。
「……うおおおおおん!! なんという……なんという健気で痛ましい覚悟なのだ貴公らはぁぁぁッ!!」
ドガァンッ!
突如として爆音のような雄叫びが轟き、客室全体がグラリと揺れた。
見れば、アームストロング少佐が暑苦しい顔面をぐっしゃぐしゃに濡らし、大粒の涙と鼻水を流しながら感極まっていた。
「少佐……!? ぶふっ!?」
次の瞬間、アームストロング少佐の巨大な丸太のような両腕が、エドワードとルイの身体をまとめて死角から豪快に抱え込んだ。
「若い身空で己の命を削り他者を救う少佐の気高き精神! そしてそれを案じ、己の痛みを忘れて激怒する鋼の錬金術師の熱き情愛! アームストロング家に代々伝わる熱血の抱擁にて、今ここに二人の絆を称えようぞッ!!」
メキメキメキッ!
「ぐえっ……! 少佐、やめ……骨が! 骨が折れるッ!!」
右腕を痛めているエドワードが絶叫する。
一方で、力任せに筋肉の壁へ挟み込まれたルイは——
「……っ、」
あまりの衝撃と暑苦しさに抵抗することすら諦めて遠い目をしたまま、完全に思考を停止させていた。
貨物室の木箱の中から「兄さんたちの叫び声が聞こえるけど大丈夫かな……」とアルフォンスが心配する中、殺伐としていた不毛な喧嘩は、少佐の規格外のパワーによって力ずくで強制終了させられたのだった。
第一章 欠けた身体で愛を解く
第二話:ボロボロの帰郷と筋肉の抱擁
ガタゴトと揺れる蒸気機関車。
スカーとの激闘で胴体を失ったアルフォンスは、一人で座席に座ることすらできず、貨物車両の木箱の中に身を寄せ羊たちと共に揺られていた。そのため、客室の座席に腰掛けているのはエドワード、アームストロング少佐、そしてルイの三人だけである。
客車内の空気は、重く冷え切っていた。
右腕のオートメールを根元から粉砕され、右肩を包帯でガチガチに固定されたエドワードが、向かいの席に鋭い視線を向ける。
対するルイ・フライム少佐は、膝の上で古びた解剖学の書物を開き、静かにページをめくっていた。
「……おい」
「……何かしら、エドワード君」
ルイは視線を本に落としたまま、穏やかだがどこかわざとらしいほど丁寧な声で応じる。
「大佐から聞いたぞ。あんたの【脈動】とかいう錬金術……使うたびに自分の身体と寿命削ってんだってな」
「……東方司令部の大佐殿は、随分と口が軽いのね」
ルイは小さく息を吐くと、ゆっくりと本を閉じた。
そのアメジスト色の瞳には、相変わらず「10歳で止まった亡き弟」の切ない幻影が揺らめいている。自身の命を削って他人を救う自傷行為のような戦い方と、自分に向けられるその哀愁を帯びた眼差し。エドワードの苛立ちは限界に達していた。
「他人の傷や病気を治すために自分の命削るだぁ!? 冗談じゃねぇぞ! 命を大切にしろってんだ! そんな自傷行為みたいなのは間違ってる!」
右腕が使えないエドワードは、左手で勢いよく座席の肘掛けを叩く。
だが、ルイは眉一つ動かさず、薄く冷ややかな微笑を浮かべるだけだった。
「間違っている? 私の命よ。私がどう使おうと、私の自由だわ」
「なっ……!」
「私は自分の人生の使い道を自分で決めたの。あなたたちの言う理屈は理解できるけれど、これは私の問題よ。子供に口出しされる筋合いはないわ」
「子供扱いすんじゃねぇッ! あんたがそうやって自分を死に追いやるような真似してんのが許せねぇって言ってんだよ!」
「生意気ね。許せないからなんなの?あなたに私の過去や背負っているものの何が分かるのよ?」
「分からねぇから聞いてんだろうがッ!!」
噛み合わない問答。右腕の痛みに耐えながら食ってかかるエドワードと、冷ややかに突っぱねるルイの感情が激しく衝突し、客室の空気は破裂寸前まで膨れ上がる。
その時——。
「……うおおおおおん!! なんという……なんという健気で痛ましい覚悟なのだ貴公らはぁぁぁッ!!」
ドガァンッ!
突如として爆音のような雄叫びが轟き、客室全体がグラリと揺れた。
見れば、アームストロング少佐が暑苦しい顔面をぐっしゃぐしゃに濡らし、大粒の涙と鼻水を流しながら感極まっていた。
「少佐……!? ぶふっ!?」
次の瞬間、アームストロング少佐の巨大な丸太のような両腕が、エドワードとルイの身体をまとめて死角から豪快に抱え込んだ。
「若い身空で己の命を削り他者を救う少佐の気高き精神! そしてそれを案じ、己の痛みを忘れて激怒する鋼の錬金術師の熱き情愛! アームストロング家に代々伝わる熱血の抱擁にて、今ここに二人の絆を称えようぞッ!!」
メキメキメキッ!
「ぐえっ……! 少佐、やめ……骨が! 骨が折れるッ!!」
右腕を痛めているエドワードが絶叫する。
一方で、力任せに筋肉の壁へ挟み込まれたルイは——
「……っ、」
あまりの衝撃と暑苦しさに抵抗することすら諦めて遠い目をしたまま、完全に思考を停止させていた。
貨物室の木箱の中から「兄さんたちの叫び声が聞こえるけど大丈夫かな……」とアルフォンスが心配する中、殺伐としていた不毛な喧嘩は、少佐の規格外のパワーによって力ずくで強制終了させられたのだった。
