第八の罪、その名は
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第二章:交錯する影と暴かれる真実
3. 黒い煙と消えた希望
リゼンブールでの数日間は、エイミーにとって夢のように穏やかで、同時に酷く胸が痛む時間だった。
ロックベル家で迎えてくれたピナコとウィンリィは、突然連れてこられた見知らぬ少女であるエイミーを、嫌な顔一つせず「エドたちの友達」として温かく迎え入れてくれた。
壊れたオートメイルを不眠不休で直すウィンリィの姿や、完成した腕を動かして無邪気に喜ぶエドの姿。
その温かい日常に触れれば触れるほど、エイミーの脳裏にはあの夜、駅の公衆電話でラストに漏らした言葉がリフレインした。
(私は……あの温もりを壊すようなことをしてしまった……っ)
◇
そして、オートメイルの修繕を終えてセントラルへ戻ってきた三人。
彼らを待っていたのは、あまりにも残酷な光景だった。
「……な、なんだよ……これ……」
セントラルに到着したエドたちが目にしたのは、無残に焼け落ち、黒い煙を燻らせる「国立中央図書館・第一分館」の姿だった。
「昨日、謎の不審火があってな……。第一分館は全焼、中の資料も全滅だ」
駆けつけたアームストロング少佐から告げられた事実に、エドとアルは言葉を失い、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。
「そんな……っ! マルコー博士の研究書が……っ!!」
頭を抱えて絶望するエドの横で、エイミーは青ざめた顔のまま、ガタガタと指先を震わせていた。
(私のせいだ……)
ラストに電話をして「研究書を手に入れられる前にどうにかしてくれ」と頼んだからだ。
自分が「賢者の石の真実」や「自分の正体」をエドに知られたくないという一心で密告したせいで、彼らの唯一の希望だった図書館が灰燼に帰してしまった。
「……大丈夫だよ、兄さん! まだマルコーさんがいる! もう一回行って直接話を聞こう!」
アルフォンスが必死にエドを励まし、気を取り直してマルコーの潜伏先である村へ連絡を取ろうとした、その時だった。
「……いや、それも無理そうだ」
暗い表情で戻ってきたアームストロング少佐が、重い口を開いた。
「先ほど現地から連絡が入った。……マルコー先生が、昨夜何者かによって連れ去られ、姿を消したそうだ」
「っ……!? なんだって……!?」
「診療所は荒らされ、先生の姿は影も形もないらしい……」
エドの絶望の叫びが、秋の冷たい風に掻き消されていく。
その瞬間、エイミーの視界がぐらりと大きく揺れた。
眩暈と強烈な吐き気が襲いかかり、息がうまく吸えなくなる。
(マルコー博士まで……っ!?)
あの電話だ。
ラストに「マルコー博士の居場所を見つけた」と余計なことまで報告してしまったから、ラストたちが動いて博士を拉致してしまったのだ。
自分の「嫌われたくない」「知られたくない」という浅はかで身勝手な【臆病】が、エドたちの希望を奪い、一人の善良な医師の命まで危機に晒してしまった。
(ごめんなさい……っ! ごめんなさい……っ!!)
心の中で血の涙を流しながら叫ぶエイミー。
だが、目の前で「くそっ……! ちくしょうっ……!!」と地面を殴りつけるエドに向かって、真実を告白することなどできるはずもなかった。
「……おい、エイミー……大丈夫か? 顔色すげぇ悪いぞ……」
膝をついて絶望していたはずのエドが、青ざめて今にも倒れそうなエイミーの変化に気づき、心配そうにその手を伸ばしてくる。
「っ……あ……っ」
差し出されたエドの手の温もりが、今のエイミーには刃物のように刺さった。
自分を心配してくれるその優しさに触れるたび、自分がどれほど汚らしく不誠実な存在であるかを痛感させられる。
「大丈夫……です……っ。ちょっと……クラッとしただけで……っ」
引きつった笑顔で誤魔化すエイミー。
(私は……取り返しのつかない罪を犯してしまった……)
希望を塞がれたエドたちが、奇跡的に「第一分館の蔵書をすべて暗記していた少女・シェスカ」と出会うのは、このすぐ後のことだった。
第二章:交錯する影と暴かれる真実
3. 黒い煙と消えた希望
リゼンブールでの数日間は、エイミーにとって夢のように穏やかで、同時に酷く胸が痛む時間だった。
ロックベル家で迎えてくれたピナコとウィンリィは、突然連れてこられた見知らぬ少女であるエイミーを、嫌な顔一つせず「エドたちの友達」として温かく迎え入れてくれた。
壊れたオートメイルを不眠不休で直すウィンリィの姿や、完成した腕を動かして無邪気に喜ぶエドの姿。
その温かい日常に触れれば触れるほど、エイミーの脳裏にはあの夜、駅の公衆電話でラストに漏らした言葉がリフレインした。
(私は……あの温もりを壊すようなことをしてしまった……っ)
◇
そして、オートメイルの修繕を終えてセントラルへ戻ってきた三人。
彼らを待っていたのは、あまりにも残酷な光景だった。
「……な、なんだよ……これ……」
セントラルに到着したエドたちが目にしたのは、無残に焼け落ち、黒い煙を燻らせる「国立中央図書館・第一分館」の姿だった。
「昨日、謎の不審火があってな……。第一分館は全焼、中の資料も全滅だ」
駆けつけたアームストロング少佐から告げられた事実に、エドとアルは言葉を失い、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。
「そんな……っ! マルコー博士の研究書が……っ!!」
頭を抱えて絶望するエドの横で、エイミーは青ざめた顔のまま、ガタガタと指先を震わせていた。
(私のせいだ……)
ラストに電話をして「研究書を手に入れられる前にどうにかしてくれ」と頼んだからだ。
自分が「賢者の石の真実」や「自分の正体」をエドに知られたくないという一心で密告したせいで、彼らの唯一の希望だった図書館が灰燼に帰してしまった。
「……大丈夫だよ、兄さん! まだマルコーさんがいる! もう一回行って直接話を聞こう!」
アルフォンスが必死にエドを励まし、気を取り直してマルコーの潜伏先である村へ連絡を取ろうとした、その時だった。
「……いや、それも無理そうだ」
暗い表情で戻ってきたアームストロング少佐が、重い口を開いた。
「先ほど現地から連絡が入った。……マルコー先生が、昨夜何者かによって連れ去られ、姿を消したそうだ」
「っ……!? なんだって……!?」
「診療所は荒らされ、先生の姿は影も形もないらしい……」
エドの絶望の叫びが、秋の冷たい風に掻き消されていく。
その瞬間、エイミーの視界がぐらりと大きく揺れた。
眩暈と強烈な吐き気が襲いかかり、息がうまく吸えなくなる。
(マルコー博士まで……っ!?)
あの電話だ。
ラストに「マルコー博士の居場所を見つけた」と余計なことまで報告してしまったから、ラストたちが動いて博士を拉致してしまったのだ。
自分の「嫌われたくない」「知られたくない」という浅はかで身勝手な【臆病】が、エドたちの希望を奪い、一人の善良な医師の命まで危機に晒してしまった。
(ごめんなさい……っ! ごめんなさい……っ!!)
心の中で血の涙を流しながら叫ぶエイミー。
だが、目の前で「くそっ……! ちくしょうっ……!!」と地面を殴りつけるエドに向かって、真実を告白することなどできるはずもなかった。
「……おい、エイミー……大丈夫か? 顔色すげぇ悪いぞ……」
膝をついて絶望していたはずのエドが、青ざめて今にも倒れそうなエイミーの変化に気づき、心配そうにその手を伸ばしてくる。
「っ……あ……っ」
差し出されたエドの手の温もりが、今のエイミーには刃物のように刺さった。
自分を心配してくれるその優しさに触れるたび、自分がどれほど汚らしく不誠実な存在であるかを痛感させられる。
「大丈夫……です……っ。ちょっと……クラッとしただけで……っ」
引きつった笑顔で誤魔化すエイミー。
(私は……取り返しのつかない罪を犯してしまった……)
希望を塞がれたエドたちが、奇跡的に「第一分館の蔵書をすべて暗記していた少女・シェスカ」と出会うのは、このすぐ後のことだった。
