凪に涙の波紋
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第3章:幾重の夜と愛の昇華
狭霧山で炭治郎と出会ってからしばらくして、お館様——産屋敷耀哉から、あさきと義勇に「度重なる共同任務」が下るようになった。
一度きりではない。二度、三度と、二人を指定した任務が続く。
お館様は全てをご存知なのだと、あさきは悟った。錆兎を失ったあの日から止まってしまった二人の時間と、義勇の深い孤独、そしてあさきの切ない想いを……。あえて二人を引き合わせ、時間を与えるためのお館様の優しい配慮だった。
「お館様から下された命だ。行くぞ、あさき」
最初は目を合わせることすら拒み、必要最低限の言葉しか発しなかった義勇。だが、何度も共に夜を明かし、背中を預け合って鬼を狩るうちに、二人の空気は少しずつ変わっていった。
ある夜の戦いでは、死角から襲いかかってきた異形の鬼から、義勇が身を呈してあさきをかき抱き、その刃を断ち切った。
「あさき——ッ!!」
壊れてしまうのではないかと思うほどの強い力での抱擁。服越しに伝わる義勇の早鐘のような心臓の鼓動。そして、鬼を斬り伏せた後、名残惜しそうに離れていく義勇の指先が酷く震えているのを、あさきは見逃さなかった。
(義勇……あなたは私を拒んでいたんじゃない。失うのが怖くて、たまらなかったのね……)
またある夜の移動中、寒さに震えるあさきに、義勇は何も言わず自分の羽織をそっと肩に掛けてくれた。あさきが驚いて見上げると、義勇は気まずそうに目を逸らし、「……冷える」と一言だけ呟いた。
幾度もの任務を重ねる中で、あさきは気づいていく。
冷酷に見える無表情の裏にある、不器用で、痛いほど優しい義勇の素顔に。
右手に光る指輪——錆兎への大切な初恋の記憶を抱きしめたまま、あさきの胸の中で何かが大きく静かに変化していった。
それは、傷ついた幼馴染を哀れむ気持ちやただの慈愛ではない。
言葉にできぬほどの孤独を背負いながら、それでも自分を守ろうと必死に手を伸ばしてくれる「冨岡義勇」という一人の男性を、愛おしく思い、生涯をかけて包み込みたいという、熱く確かな恋慕への昇華だった。
「ありがとう、義勇。いつも守ってくれて」
ある夜の任務終わり、朝焼けの中で微笑むあさきの言葉に、義勇は振り返らないまま、けれどどこか小さく頷いたように見えた。
(今度は私が、あなたの凍りついた心を溶かしてみせる)
お館様が繋いでくれた幾重もの夜を経て、あさきの心にはもう迷いも悲しみもなかった。
第3章:幾重の夜と愛の昇華
狭霧山で炭治郎と出会ってからしばらくして、お館様——産屋敷耀哉から、あさきと義勇に「度重なる共同任務」が下るようになった。
一度きりではない。二度、三度と、二人を指定した任務が続く。
お館様は全てをご存知なのだと、あさきは悟った。錆兎を失ったあの日から止まってしまった二人の時間と、義勇の深い孤独、そしてあさきの切ない想いを……。あえて二人を引き合わせ、時間を与えるためのお館様の優しい配慮だった。
「お館様から下された命だ。行くぞ、あさき」
最初は目を合わせることすら拒み、必要最低限の言葉しか発しなかった義勇。だが、何度も共に夜を明かし、背中を預け合って鬼を狩るうちに、二人の空気は少しずつ変わっていった。
ある夜の戦いでは、死角から襲いかかってきた異形の鬼から、義勇が身を呈してあさきをかき抱き、その刃を断ち切った。
「あさき——ッ!!」
壊れてしまうのではないかと思うほどの強い力での抱擁。服越しに伝わる義勇の早鐘のような心臓の鼓動。そして、鬼を斬り伏せた後、名残惜しそうに離れていく義勇の指先が酷く震えているのを、あさきは見逃さなかった。
(義勇……あなたは私を拒んでいたんじゃない。失うのが怖くて、たまらなかったのね……)
またある夜の移動中、寒さに震えるあさきに、義勇は何も言わず自分の羽織をそっと肩に掛けてくれた。あさきが驚いて見上げると、義勇は気まずそうに目を逸らし、「……冷える」と一言だけ呟いた。
幾度もの任務を重ねる中で、あさきは気づいていく。
冷酷に見える無表情の裏にある、不器用で、痛いほど優しい義勇の素顔に。
右手に光る指輪——錆兎への大切な初恋の記憶を抱きしめたまま、あさきの胸の中で何かが大きく静かに変化していった。
それは、傷ついた幼馴染を哀れむ気持ちやただの慈愛ではない。
言葉にできぬほどの孤独を背負いながら、それでも自分を守ろうと必死に手を伸ばしてくれる「冨岡義勇」という一人の男性を、愛おしく思い、生涯をかけて包み込みたいという、熱く確かな恋慕への昇華だった。
「ありがとう、義勇。いつも守ってくれて」
ある夜の任務終わり、朝焼けの中で微笑むあさきの言葉に、義勇は振り返らないまま、けれどどこか小さく頷いたように見えた。
(今度は私が、あなたの凍りついた心を溶かしてみせる)
お館様が繋いでくれた幾重もの夜を経て、あさきの心にはもう迷いも悲しみもなかった。
