捧げた心臓の在処
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第5話:地獄の行軍と、失われた右腕
ウォール・ローゼ内での巨人発生の報せ、ウトガルド城での死闘、そしてライナーとベルトルドの裏切り――。
事態は怒濤の勢いで悪化し、調査兵団はさらなる地獄へと引きずり込まれていた。
憲兵団や駐屯兵団との合同部隊を率い、奪われたエレンを取り戻すため壁外へと緊急出撃したエルヴィンとあさき。
「団長! 前方に巨人の群れ! このまま突き進むのは危険です!」
「構わん、突撃せよ! エレンなくしてこの人類に未来はない!」
エルヴィンの決死の号令が響き渡る。
そのすぐ隣を駆けるあさきの顔には、もはや迷いはなかった。
ストヘス区の夜、深夜の執務室で流した涙。
大切な後輩たちの死を乗り越え、いま目の前で命を懸けて前進するエルヴィンの背中を守ること――それが、団長補佐であり、彼の第一の兵士であるあさきの全存在をかけた誓いであった。
「……絶対に、あなたを死なせはしない!」
だが、地獄の猛威は容赦なく彼らに襲いかかる。
群がる巨人の一頭が、突如として横あいから跳躍した。
巨体の陰から伸びた巨大な顎が、エルヴィンの右腕へと噛みつく!
「エルヴィン―――っ!?」
あさきの叫びが空を裂いた。
目の前で繰り広げられた、最悪の光景。肉がちぎれ、血が吹き飛び、エルヴィンの身体が宙へと引きずり上げられる。
「進めぇぇぇ!! エレンはすぐ立ち去り先だ!! 進めぇぇ!!」
右腕を喰われ、激痛に顔を歪めながらも、なお前進を命じるエルヴィンの凄絶な咆哮。
(嫌……! そんなの、嫌……っ!!)
あさきの脳裏に、かつて勘当され、雨の中で自分に温かい手を差し伸べてくれたエルヴィンの姿が過ぎった。あの日、自分を救ってくれたあの右腕が、目の前で失われようとしている。
胸の奥から湧き上がる、狂気にも似た感情。
あさきは馬の背を強く蹴ると、立体機動装置のワイヤーを巨人の眼球へ突き刺した。
限界を超えた旋回速度。風を切り、血煙の中を刃となって突き抜ける。
「―――その人に、触るなあああぁぁっ!!」
ズバァンッ!!
あさきの刃が、エルヴィンを咥えた巨人のうなじを正確かつ残酷に削ぎ落とした。
宙に舞うエルヴィンの身体。あさきはワイヤーを巻き取りながら滑空し、血まみれのエルヴィンを抱きとめるようにして地上へ着地した。
「はぁ、はぁ……っ! 団長!?団長!!」
あさきの手が、エルヴィンの右肩から吹き出す大量の鮮血で赤く染まっていく。
自分の上衣を素早く破り、右腕の根元を血が止まるまで力任せに縛り上げるあさき。手が震え、涙で視界が歪む。
「あさき……か……」
意識が霞むエルヴィンが、力なく目を開ける。
「だめ……息をして、エルヴィン! お願いだから……私を一人にしないで……っ!」
叫びながらも、あさきはエルヴィンを馬へ乗せ、己の身体で彼を固定した。
その時、後方で凄まじい光と叫び声が轟いた。
エレンの「座標(始祖の力)」の覚醒。巨人の群れが鎧の巨人へと群がり、地獄のような大混戦の末、調査兵団は奇跡的にエレンの奪還に成功する。
数日後。壁内への命からがらの帰還。
右腕を失い、死の淵をさまよっていたエルヴィンは、集中治療室のような兵舎の一室で静かに横たわっていた。
静まり返った室内。
ベッドの傍らには、一瞬たりともその場を離れず、不眠不休で看病を続けていたあさきの姿があった。
あさきは、包帯が痛々しく巻かれたエルヴィンの「右腕の欠損部分」を、両手でそっと包み込んでいた。
「……あさき」
低くかすれた声。エルヴィンがゆっくりと目を覚ました。
「団長……! 気がついたのね……っ」
あさきの瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ち、エルヴィンの手に落ちる。
「すまない……心配をかけたな」
「……バカ……っ」
あさきは唇を噛み締め、失われた右腕の袖口にそっと額を押し当てた。
「『進め』だなんて……自分の命と引き換えにしてまで、どうしてそこまで……っ。あの日、私を救ってくれた大切な手だったのに……っ!」
あさきの声は、溢れ出る感情で震えていた。
「……腕の一本くらい、安いものだ。エレンを取り戻せたのならね」
エルヴィンは残された左手をゆっくりと持ち上げると、泣きじゃくるあさきの頭を優しく撫でた。
「……だが、君を悲しませたのは私の不徳だ。……すまないあさき」
「いいえ……いいえ……! 生きていてくれただけでいい。あなたが生きているなら、私はどんな地獄だってついていくわ……っ!」
二人の間に流れる、言葉を超えた強い絆と愛憎。
その時、ドアの隙間から、二人の様子を静かに伺う影があった。
エレンだった。
エレンは、自分を救うためにエルヴィンが右腕を失い、そしてそのせいで大好きなあさきが血の滲むような思いで泣いている姿を、じっと見つめていた。
(俺のせいだ……。俺が弱かったから……あさきさんに、こんな泣き顔をさせている……)
エレンの握りしめた拳から、血が滲む。
あさきがエルヴィンに向ける絶対的な忠誠と愛。
そして、自分が強くなってあさきを守らなければならないという、暗い決意をするエレンだった。
第5話:地獄の行軍と、失われた右腕
ウォール・ローゼ内での巨人発生の報せ、ウトガルド城での死闘、そしてライナーとベルトルドの裏切り――。
事態は怒濤の勢いで悪化し、調査兵団はさらなる地獄へと引きずり込まれていた。
憲兵団や駐屯兵団との合同部隊を率い、奪われたエレンを取り戻すため壁外へと緊急出撃したエルヴィンとあさき。
「団長! 前方に巨人の群れ! このまま突き進むのは危険です!」
「構わん、突撃せよ! エレンなくしてこの人類に未来はない!」
エルヴィンの決死の号令が響き渡る。
そのすぐ隣を駆けるあさきの顔には、もはや迷いはなかった。
ストヘス区の夜、深夜の執務室で流した涙。
大切な後輩たちの死を乗り越え、いま目の前で命を懸けて前進するエルヴィンの背中を守ること――それが、団長補佐であり、彼の第一の兵士であるあさきの全存在をかけた誓いであった。
「……絶対に、あなたを死なせはしない!」
だが、地獄の猛威は容赦なく彼らに襲いかかる。
群がる巨人の一頭が、突如として横あいから跳躍した。
巨体の陰から伸びた巨大な顎が、エルヴィンの右腕へと噛みつく!
「エルヴィン―――っ!?」
あさきの叫びが空を裂いた。
目の前で繰り広げられた、最悪の光景。肉がちぎれ、血が吹き飛び、エルヴィンの身体が宙へと引きずり上げられる。
「進めぇぇぇ!! エレンはすぐ立ち去り先だ!! 進めぇぇ!!」
右腕を喰われ、激痛に顔を歪めながらも、なお前進を命じるエルヴィンの凄絶な咆哮。
(嫌……! そんなの、嫌……っ!!)
あさきの脳裏に、かつて勘当され、雨の中で自分に温かい手を差し伸べてくれたエルヴィンの姿が過ぎった。あの日、自分を救ってくれたあの右腕が、目の前で失われようとしている。
胸の奥から湧き上がる、狂気にも似た感情。
あさきは馬の背を強く蹴ると、立体機動装置のワイヤーを巨人の眼球へ突き刺した。
限界を超えた旋回速度。風を切り、血煙の中を刃となって突き抜ける。
「―――その人に、触るなあああぁぁっ!!」
ズバァンッ!!
あさきの刃が、エルヴィンを咥えた巨人のうなじを正確かつ残酷に削ぎ落とした。
宙に舞うエルヴィンの身体。あさきはワイヤーを巻き取りながら滑空し、血まみれのエルヴィンを抱きとめるようにして地上へ着地した。
「はぁ、はぁ……っ! 団長!?団長!!」
あさきの手が、エルヴィンの右肩から吹き出す大量の鮮血で赤く染まっていく。
自分の上衣を素早く破り、右腕の根元を血が止まるまで力任せに縛り上げるあさき。手が震え、涙で視界が歪む。
「あさき……か……」
意識が霞むエルヴィンが、力なく目を開ける。
「だめ……息をして、エルヴィン! お願いだから……私を一人にしないで……っ!」
叫びながらも、あさきはエルヴィンを馬へ乗せ、己の身体で彼を固定した。
その時、後方で凄まじい光と叫び声が轟いた。
エレンの「座標(始祖の力)」の覚醒。巨人の群れが鎧の巨人へと群がり、地獄のような大混戦の末、調査兵団は奇跡的にエレンの奪還に成功する。
数日後。壁内への命からがらの帰還。
右腕を失い、死の淵をさまよっていたエルヴィンは、集中治療室のような兵舎の一室で静かに横たわっていた。
静まり返った室内。
ベッドの傍らには、一瞬たりともその場を離れず、不眠不休で看病を続けていたあさきの姿があった。
あさきは、包帯が痛々しく巻かれたエルヴィンの「右腕の欠損部分」を、両手でそっと包み込んでいた。
「……あさき」
低くかすれた声。エルヴィンがゆっくりと目を覚ました。
「団長……! 気がついたのね……っ」
あさきの瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ち、エルヴィンの手に落ちる。
「すまない……心配をかけたな」
「……バカ……っ」
あさきは唇を噛み締め、失われた右腕の袖口にそっと額を押し当てた。
「『進め』だなんて……自分の命と引き換えにしてまで、どうしてそこまで……っ。あの日、私を救ってくれた大切な手だったのに……っ!」
あさきの声は、溢れ出る感情で震えていた。
「……腕の一本くらい、安いものだ。エレンを取り戻せたのならね」
エルヴィンは残された左手をゆっくりと持ち上げると、泣きじゃくるあさきの頭を優しく撫でた。
「……だが、君を悲しませたのは私の不徳だ。……すまないあさき」
「いいえ……いいえ……! 生きていてくれただけでいい。あなたが生きているなら、私はどんな地獄だってついていくわ……っ!」
二人の間に流れる、言葉を超えた強い絆と愛憎。
その時、ドアの隙間から、二人の様子を静かに伺う影があった。
エレンだった。
エレンは、自分を救うためにエルヴィンが右腕を失い、そしてそのせいで大好きなあさきが血の滲むような思いで泣いている姿を、じっと見つめていた。
(俺のせいだ……。俺が弱かったから……あさきさんに、こんな泣き顔をさせている……)
エレンの握りしめた拳から、血が滲む。
あさきがエルヴィンに向ける絶対的な忠誠と愛。
そして、自分が強くなってあさきを守らなければならないという、暗い決意をするエレンだった。
